日々の泡盛(フランス編)

フランス在住、40代サラリーマンのどうってことない日常。

ペソアとリスボン(2)

2007-03-25 19:52:18 | 海外(フランス、スペイン以外)
その女中部屋こそ、重層的で、変幻自在で、おびただしい数の
彼が考え出した変名にあふれた作品をこっそり生産していた場所だ。
アルベルト・カエイロ、リカルド・レイス、アルバロ・デ・カンポス、
ベルナルド・ソアレス。すべてペソアの作品の『著者』だ。
これらのペンネームで、ペソアは孤独や哀愁にあふれた
詩や散文を作り出した。

《私は何者でもない、何者でも。私の魂は暗黒の大渦潮(maelstrom),
虚空の周りにある深遠な目眩、無の淵にある果てしない大洋の満ち引きである》
ペソアは『不穏の書』の中でそう記している、彼の本名を面白く
説明しながら。「ペソア」とはポルトガル語で「誰か、ある人」(quelqu'un)
という意味であると同時に、「誰でもない」(personne)という意味も持つ。

ペソアのリスボンガイドはガイドを超えるガイドである。リスボンへの
抒情詩であるとともに、ポルトガルにささげられた凱歌である。
作者はリスボンの偉大な歴史を、豊富な文化遺産を、そして文化、経済の
繁栄を褒め称える。

《海からリスボンを訪れる旅行者にとってこの街は、遠くから、
まるで夢の一シーンのように現れ、空のまばゆい青さを背景に浮かび上がる。
無数のドーム、モニュメント、古い城砦がどこまでも連なる低い家々の間に
張り出している、すばらしいリスボンの滞在を予感させるように》



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