地にしみる歴史の陰翳

2014-01-07 | 読書
【本の紹介】
●きまぐれ歴史散歩/池内紀著/中公新書/2013年9月25日発行/798円(税込み)
 ドイツ文学の泰斗による旅行エッセイ集。通常の観光ガイドものとは違う。日本全国二十六カ所、日本人の脳裏に焼き付く過去をもつ土地が取り上げられている。読み進むうちに歴史に思いを馳せ、人間の諸相に沈思することになる。壇ノ浦の戦いにみる伝統派の平家とゲリラ型の源氏、捕らえられた姫たちの夜、会津の白虎隊自刃の経緯、知覧から死に向かう特攻隊が見た青い空、播磨で生まれた柳田国男が接した家庭悲劇、足尾銅山の盛衰・・・その地に宿る陰翳は旅人の胸にも写る。