こんな気持ちでいられたら・・・一病理医の日々と生き方考え方

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山中教授のノーベル賞受賞で思うこと その1 発想、国力

2012年10月09日 | 病理のこと、医療のこと、仕事のこと
iPS細胞の山中伸弥教授が今年のノーベル医学生理学賞を受賞された。
日本人として大変誇らしいことで、わずか一学年下の不肖コロ健、ここにいたるまでに山中先生がされてきたことに思いを馳せると、ただただ頭の下がるばかりである。

さて、今回の受賞を契機に思ったことが3つある。
1つは、発想、2つめは、国力、3つめは、これからの医療の方向性。

私は20年近く前に、ヒトの細胞がどのように成長(分化)していくかということを研究して学位を取った。そのときの私も、それ以来ヒトの成長を研究をするほとんどの学者も、未熟な細胞をなんとか手に入れ、それを成長させるという研究手法をとっていた。
ところが、その未熟な細胞というのは本当に手に入りにくい、というか突き詰めていえば“ヒト”もしくは“ヒトのもと”である受精卵を使うしかなかったわけである。ヒトになるものを根拠なく選別して使うわけにはいかない。それを山中先生は、使えるものがないなら作ってしまえとばかりに、大胆な発想の転換により、成長した体の一部から遺伝子をリセットすることで、未熟な細胞をつくってしまった。その、いったん、成長したものを元に戻すという発想自体が、すごい。この発想そのものがノーベル賞を受賞するに値するものなのだと、つくづく思う。

2つ目は国力。
山中先生は会見で、「名目上、私に贈られたことになっているが、日の丸のご支援がなければ、こんな賞は受賞できなかった。大きな支援をいただき研究を発展させることができました。まさに日本という国が受賞した賞だと感じています。」と述べられている。今回のiPS細胞の研究は日本人が日本の研究費で、日本で行った日の丸研究である。文部科学省、厚生労働省をはじめとして日本の科学技術行政に関わる役所はこれまで以上に日本人の能力を信じて、科学分野への予算、特に人件費を割いていって欲しいと思う。日本の科学技術力がまだ周辺各国に比べて高いうちにさらに水を開けなくてはならないところだ。日本には科学技術しか残っていないのだから、少々の失敗には目をつぶってほしいし、事業仕分けでこの分野への予算を削減することだけはやめて欲しい。
なぜなら、日本近海の海洋資源の開発、宇宙開発、すべてが科学技術なくしてはなし得ないものだからである。

そして、3つめはiPS細胞というものの出現による医療の方向性についてである。
このことについては、明日、考えてみたい。

つづく。

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