フラットコーテッドレトリバーのナイトの組織球腫。まだ、切除後の縫いあとが白く見えるが、再発の兆候は今のところ無い。
動物病院の先生が親切にも標本を取り寄せてくれた。HE染色標本2枚。
もともと皮膚病理は苦手な方であるが(苦手ばかり・・・)、これが犬の皮膚病変となるともうチンプンカンプンだ。
人間の皮膚と微妙に、というか大きく異なる。
まず、毛が多いのにおどろく。そして、真皮に膠原線維が多い。
犬が舌を出しているのは、皮膚に汗腺がないためで、舌で体温調節をしている。
というのは、小学生でも知っている話だが、実際、ナイトの皮膚の標本を見ると驚く。
やっぱり汗腺らしい汗腺が無い。なんだが、ちいさな腺管様構造があるのだが、これが一体何のための器官なのかよくわからない。皮膚病理(もちろんヒトの)の本と見比べても、似て非なるものとはまさにこのこと。
なんだか、ヒトに比べて末梢神経が少ないように思うのだが・・・気のせいか、正しいのか。
この写真は病変部と正常部の境界部のもので、左半分に腫瘍性病変がある。
細胞が多いということは、核が多いということで、青く染められる核が多い部分は病理の標本では青く見える。膠原線維内に細胞がびまん性に浸潤しているように見える。
そして、病変部のアップ。
組織球腫というだけのことはあり、組織球様の細胞が多数認められる。
リンパ球も多く認められるが、好中球は少し。好酸球は認められない。
で、その組織球、微妙なくびれとか、ヒトでみるような特徴はあるのだが、ヒトでみる組織球よりふたまわりくらい小さいのだ。
皮膚の構造から何から、生物種によってずいぶんと違う。
粋がって自分で診るだなんて言っていたのは、大間違い。
危うく、わからずじまいになっていたところだった。
餅は餅屋。
診断を付けて下さった動物病理の先生に、感謝。
(私のことではなく)病理の先生の有り難さをしみじみと感じた。