kenroのミニコミ

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世界一ゴージャスな舞台 ABTのドン・キホーテに納得

2011-08-01 | 舞台
賭け値なしで面白かった。情熱の国スペインの単純明快なストーリーがよかったのかもしれない。とことん狂言回しに徹するドン・キホーテと従者サンチョ・パンサ。ドン・キホーテはあこがれの対象を探し求め、村娘キトリにその姿を追い求めるが、キトリには許嫁バジルが、キトリの父親はより有利な結婚をと貴族ガマーシュをあてがおうとするが…。
全編明るく陽気さに満ち溢れていて、古典バレエにお決まりの悲恋、悲劇が全然ない。キトリが恋するバジルも他の女性に気を向けるなどだらしなく、キトリとの愛が成就しないと分かると自殺のまねごとをするなど茶目っ気たっぷりで、そのユルさをキトリはじめ、キトリのバジルとの付き合いを許さない父ロレンツォやガマーシュさえも受け入れているようなこれまたユルさが感じられて楽である。
ユルい、ユルい物語のどこが魅力的か。それは、ABTの誇る大柄、ベテランダンサーらの大技の連続があるからである。バジルを演じるホセ・マヌエル・カレーニョはABTの顔そのものでキトリ演じるパロマ・ヘレーラともども中南米出身の華やかさの頂点のような存在。大柄なヘレーラを片手でリフトしたり、片足を垂直にあげたまま回転する(名称を知らない)大技、パロマも回転につぐ回転などまさに超絶技巧の数々。大仰、大技大好きにはたまらない演出で、そこにしっとりしたダンスなど微塵もない。分かりやすく、幸せなダンスを飾るのは、女性ダンサーが男性をはさんだ(?)状態で宙に浮くフィッシュ・ダイブで決まりである。
アメリカ、NYを代表するカンパニーの一つABTは双璧のニューヨーク・シティ・バレエ(NYCB)が古典をほとんどしないのに対し、幅広い演目をこなす。だからドン・キホーテのような原作は古典を拾いながら、いわば古めかしくない演目も上演し、それをこなすスター人がいるということだろう。風車にぶらさがって落ちるキホーテや、彼にきれいな地元の女性の情報を集めるパンサなどドタバタの中にも、次のもっと大胆なパ・ドゥ・ドゥを期待させる演出は最後まで飽きさせない。それを支えるのが件のプリンシパルたち。
あのような明るく、なんの外連味もないパフォーマンスには大柄、大仰、大づくりのダンサーが似合うに違いない。同じ大柄でもロシアやドイツに代表されるヨーロッパのカンパニーとは一味もふた味も違ったまさにゴージャスなABTの楽しい一夜であった。

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