kenroのミニコミ

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ロシア美術紀行3 ロシア美術館

2005-09-11 | 美術
サンクトペテルブルグ出発の最終日の午後に時間があったため行ってみたが、およそ半日で見られるような規模ではない。以前エルミタージュのロシア部門にあった作品を集めた同館はもともと旧ミハイロフ宮殿であったそうで、宮殿であるからとてつもない規模なのはあたりまえ。ロシア美術が日本で紹介されることはめったになく、ロシア正教特有のイコン画が多く、興味深い。イコンは偶像崇拝の象徴であり、教会を訪れる字の読めない信者が一目見て内容を理解するための表現力が要請され、自然聖母子などのわかりやすい表象が多い。しかし、15世紀以前の古代ロシア美術は、革命後ソ連時代の散逸や略奪もあり、かなりの数が集められたとは言え、その整理は十分ではない。だが、ここまで来ないと見られない貴重な作品ばかりで、ローマカソリックから放逸されたロシア正教のその美術的違いもよくわかり、どこかビザンチン様式の香りも感じられる。
ロシア美術館のコレクションは19世紀以降の近代美術のその圧倒的な数にある。18世紀後半以後ヨーロッパでロマン主義が栄えた時代には、ロシア美術にもその影が、19世紀の写実主義はロシアでも開化し、カンディンスキーやマレーヴィッチを生み出した20世紀は、シュルレアリズムはもちろん、セローフはどこかクリムトを思わせる象徴派、アルヒーボフはフォービズムとロシア美術も確実に変化を遂げてきたのがよくかわる。いかんせん、膨大な提示室群、すべてを見ることはできなかったが、特別展でちょうどシャガール展をしていた。
日本でもシャガール展はしょっちゅうしているが、どれもベラとの愛にスポットをあてたものや、素描、スケッチを並べたものばかりと物足りない気がしていたがここは違った。それもそのはず、モスクワのトレチャコフ美術館、パリのポンピドーセンター、あるいは個人蔵まで駆り集めた展示は圧巻であった。
シャガールの群青は遠くからでもすぐわかる。たいそうな人出であったけれども行ってみて価値あり。エルミタージュ以外でもサンクトペテルブルグではお勧めの美術館である。
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