kenroのミニコミ

kenroが見た、読んだ、聞いた、感じた美術、映画、書籍、舞台、旅行先のことなどもろもろを書きなぐり。

2014夏北フランスの旅3

2014-08-30 | 美術
海外の美術館を訪れた時、2種類の満足感がある。一つはルーブルなど巨大、見たい作品がいっぱいあると分かっているときなどに感じる入館時のワクワク感。もう一つは、鑑賞している最中、あるいはした後に「ここに来てよかったなあ」と思う満足感だ。ルーブル本館が前者ならルーブル・ランスが後者だ。ランスと言っても筆者も間違えていたが、大聖堂のあるLeimsではなくて、ベルギーやイギリスへの中継都市リールから1時間ほどの小さな街である。そうLensは、ルーブルの別館ができなければ誰も訪れない。しかし、今や観光客がどっと訪れる。駅からシャトルバスもあるし、歩いても20分ほどの立地も人気だが、建物やそれを取り巻く環境に関心が高まっている。ポンピドゥーメスが日本人の坂茂作なら、こちらはここ数年あちこちで建築賞をとっている日本人ユニットSANAA(妹島和世、西沢立衛とその仲間たち)の手になる作品だからだ。
四角い箱を5つ組み合わせたような外観は「帽子」のポンピドゥーメスに比べるとなんとも地味である。しかし、その四角の中が楽しい。中央に鎮座する棟はエントランス、オーディトラム、ライブラリー、カフェなどとなっていて、これから鑑賞する人の水先案内人となっている。入館すると常設展へも企画展へも同じように反対方向に誘導される。多くの人がそうするように筆者もまず常設展に足を運んだが、展示の仕方がユニークだ。紀元前3500年のエジプト美術に始まり、どんどん時代をおりて行く。一つの部屋にファラオの彫像、ミイラから地中海の壷、ポンペイのモザイク、ローマ彫刻、初期キリスト教美術、ルネサンス、バロックへと人類が進化するかのように私たちの美術も進化しているかのようだ。今回の常設展はおもにエジプトから西洋美術への伝播という流れのようだったが、もちろんイスラム美術や、東洋美術も同じような道筋を企画することもできるだろう。パリのルーブル本館に収まりきらない作品を厳選して、分館としたともいうが、展示品は少なくてもこのような大胆な見せ方は、床に座って説明を聞いていた子どもたちも含めて、美術は世界や歴史とつながっていることを実感させてくれると私たちに再認識させてくれるだろう。
さて、美術館に来ての後者の満足感をここでは感じたのだ。企画展のテーマは「近代の戦争」。戦争はどう描かれ、どう喧伝され、またどう批判されてきたか。ダヴィッドはナポレオンの勇姿を架空の構図で描き、ナポレオンに愛でられたが、それは戦争の指導者が実物を無視しても立派に見せるための自己顕示欲と自己愛の象徴であった。近代戦争と言ってもナポレオン戦争は、帝国の領土を拡張するための皇帝の野望を表したすぎず、20世紀の植民地争奪戦ではまだない。しかし、前線の兵士と踏み荒らされた土地に住まう人々の悲惨さは18世紀でも変わりない。厳冬の地ロシアで斃れて行く兵士らも絵画となっている。ゴヤの「1808年5月3日、プリンシペ・ピオの丘での銃殺」はあまりも有名だ。(以下 続く)
(ルーブルランスの常設展風景)
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