kenroのミニコミ

kenroが見た、読んだ、聞いた、感じた美術、映画、書籍、舞台、旅行先のことなどもろもろを書きなぐり。

愛の乾いた応援歌  メゾン・ド・ヒミコ

2005-09-18 | 映画
セクシュアル・マイノリティ映画(と私が勝手にカテゴライズしている)のいい作品を思い浮かべるとまず「苺とチョコレート」(93年 キューバ/メキシコ/スペイン)。実在の事件を取り上げた「ボーイズ・ドント・クライ」(99年 アメリカ)、少年の成長を描く「ぼくのバラ色の人生」(97年 ベルギー/フランス/イギリス)、イギリス寄宿舎ものの「モーリス」(87年 イギリス)など。アン・リーの「ウェデイング・バンケット」(93年 台湾/アメリカ)や実在の画家と作家の結ばれぬ恋を描いた「キャリントン」(95年 イギリス/フランス)も優れた作品だ。「ボーイズ」や「キャリントン」は悲劇的結末だがそのどれもがカラリとしているように思える。そう、乾いた感じ、が外国作品には多い。
乾いた感じ、という面では卑弥呼のカレを演じる春彦(オダギリジョー)のクールさが光っているからかもしれないが、ヒミコの住人はみんな湿気をまるきり抜いた笑いに包まれている。ゲイを描く時にキーワードにされる「孤独」と「連帯」は、セクシュアル・マイノリティに限らず人間誰しも向かい会わなければならない試練だ。しかし、ゲイはホモフォビア(同性愛嫌悪)とたたかわなければいけないし、ずっとたたかい続けるには笑いも必要だ。
高齢社会のこの国で老いた者たちが、自分らにふさわしい、支え合うホームをつくろうという試みは北欧やカナダを参考にした面もあり、女性だけのホームもできてはきている。しかし、ゲイはどうすればいいのか、家族にカムアウトしていなかった場合は特に。映画ではこれら老いたゲイの直面するさまざまな問題を挿入しつつ、ホモフォビアであった沙織(柴咲コウ)が住人と触れ合ううちに次第に心開いて行くという展開。が、ホテルの館主、卑弥呼(田中泯)は母と自分捨てた身勝手な父として赦せない。その卑弥呼も死の床につき、ホテルもどうなるのかという結末。
癌で逝く卑弥呼役に田中泯はぴったりくるのだが、なにせ迫力がありすぎる。しかし、病気とその深い思いを秘めた静かな立ち振る舞いは、地から湧き出るエネルギーを舞踏で表現する田中ならではのものと快哉。
「ジョゼと虎と魚たち」に続き、犬童一心と渡辺あやのコンビは絶品だ。アニメとタケシばかりが光の当たる中で、難しいテーマをさらりと描く技量に今後も期待している。
コメント
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