【「ベニバナクサギ」「ヒマラヤクサギ」などの別名も】
シソ科の落葉低木で、中国南部からヒマラヤ地方、インド北部にかけて分布する。クサギやゲンペイカズラ(ゲンペイクサギ)などと同じクサギ(臭木)属で、葉をもむと独特な異臭を放つ。中国名は「臭牡丹」。ボタンといえば中国では古くから「花の王」として愛された。そのボタンのように見事な大きな花を付けるから、こう呼ばれているのだろうか。
7~8月頃、枝先に径が10~20cmもあるくす玉のような集散花序を付ける。つぼみの頃は濃い紅紫色だが、小さな5弁花が開くと薄紅色に変化し、遠目にはピンクのアジサイのようにも見える。花姿から「ベニバナクサギ」「タマクサギ」「クスダマクサギ」といった異名を持ち、原産地から「ヒマラヤクサギ」とも呼ばれる。
花は葉と違って甘い香りを発する。それに引かれてクロアゲハなどが集まってきては盛んに蜜を吸う。ボタンクサギは繁殖力が強いことでも知られる。〝吸枝〟と呼ばれる地下茎を横に広げ、株元から離れた所で出芽して増えていく。このため一部地域では野生化している。神奈川県川崎市の県立東高根森林公園ではいつの間にか自生し、今では株が増えて群生しているそうだ。8月いっぱいが見頃という。
ボタンクサギは葉や根に殺菌力があり生薬としても利用される。腫れ物や高血圧、下痢などに効果があるという。中国から日本に渡ってきた時期は不明。ただ英国の植物学者、ロバート・フォーチュン(1812~80)が19世紀中頃、広く紹介したともいわれる。フォーチュンはチャノキの苗を中国からインドに大量に移植したことで有名。日本を訪れたこともあり「幕末日本探訪記―江戸と北京」という著書も残している。