く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<ムジークフェストなら②> ストラビンスキー「兵士の物語」(安東伸元編)

2014年06月19日 | 音楽

【語りと7人による演奏、兵士と悪魔の軽妙な演技】

 「ムジークフェストなら」5日目の18日、奈良市のなら100年会館でストラビンスキー作曲の音楽劇「兵士の物語」が上演された。「大和座狂言事務所」を主宰する狂言師、安東伸元の演出によるもので、バイオリニスト若林暢(のぶ)が音楽監督を務めた。約1時間半の休憩なしの公演だったが、兵士役の狂言師の所作と悪魔役のドイツ人の軽妙な演技が見事なまでに好対照を見せ、和と洋のコラボによる総合芸術を堪能させてくれた。

 

 「兵士の物語」はロシアの民話を題材として作られたもので、100年あまり前の1918年に発表された。その前年はロシア革命。この音楽劇はそんな社会的経済的な混乱の中で生まれた。そうした時代背景による影響もあったのだろう、楽器はバイオリン、コントラバス、ファゴット、クラリネット、トランペット、トロンボーン、そして打楽器と小規模な7人編成になっている。

 物語は帰省中の兵士に悪魔が付きまとい、悪魔の魔法の本と兵士のバイオリンを交換するところから始まる。「大金儲けができる」という本を手にした兵士は巨万の富を得るが、心は充たされない。兵士はトランプの賭けでわざと負けて有り金全部を悪魔に渡す代わりに、バイオリンを取り戻す。その後、王女と結婚し幸せな日々を過ごすが、母と一緒ならもっと幸せになれるはずと考える。そして2人は悪魔の警告を無視し母のいる村に向かう。だが、国境を越えたところで悪魔が出現し、兵士は再び悪魔の手の中に――。

 自ら導入部の能舞と朗読を担当した安東伸元が音楽の合間に「二兎を追う者は一兎をも得ず」「幸福は1つあればいい。2つあればないのと同じ」と教訓めいた語りを挿入する。悪魔を演じたのはドイツ人の尺八演奏家ウベ・ワルター(1953年生まれ)。茅葺きの里として知られる京都府南丹市美山町在住で、時々関西弁を交えながら自由奔放な演技を披露して、会場の笑いを誘った。とりわけ最後の「悪魔の勝利の行進曲」に合わせた軽やかな踊りは、とても還暦とは思えない若々しさ。アンコールでもこの踊りを再度見せてくれた。兵士役を演じた安東元(あんどうげん)の張りのある発声と所作も見事だった。瞬き1つせずにまっすぐ正面を見据えて演じる姿に見入ってしまった。


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