CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】文士と骨董 やきもの随筆

2018-05-16 21:31:14 | 読書感想文とか読み物レビウー
文士と骨董 やきもの随筆  著:森 孝一

様々な文人のやきものに関する随筆を集めた本でした
オムニバスでもないが、明治から昭和にかけての文人たちが、
なんだかんだ、骨董に一家言という話で、
それこれで対立するものもあったりして
非常に興味深いというか、こういう人たちが
どこか、やばい感じのバーなんかで喧嘩してたんだろうなと
文人のなんとかという話として聞くそれこれを
思い起こさせたりしたのであります

ポイントというほどでもないですが、
やはりという感じで、民藝運動というのに反感というか
とりわけ気持ち悪いという派も当然あった様子で
その憤懣も書かれていたりして
大変面白いのでありました、このあたりはまた
別の本で勉強してみようと思うのであります

青山二郎、小林秀雄、白洲正子といった、
いかにもな昭和の荒くれ文人のほかにも、
立原白秋、井伏鱒二なんかに加えて、秦秀雄という人が
とんでもないくわせものだったようで、
このあたりの人たちそれぞれの、骨董に関する話は
もっと読んでみたいと思わされるものばかりでありました
特に、秦秀雄という人が酷い、
いかにも骨董偏屈爺という感じなんだが、
昔はこういう人が多かったんだろうなと思わされるところであります
美味しんぼの初期海原雄山は、このあたりにも
素地があるように思われてならんのでありました
魯山人が駆け出しに見えてしまうやっかいな骨董の物の怪がいっぱいいるのであります

どれもこれも、美とは何かについて
文細やかに描写といえばいいか、語っているのが楽しく、
自分の好きな盃や徳利の話なんかに加えて、
伊万里、唐津、李朝白磁、鶏龍山なんていうステキな陶磁器それぞれの名前が出てきて
わくわくさせられたのでありました
しかし時代なのか、こういった文人の中に
中国趣味があまりなくて、一世を風靡した李朝陶磁器に関するものが多く
考えさせられたのでありました
中国磁器ブームはもう少し後ということなんだろうか、
個人的に好きな、宋代の白磁、青磁の話が出てこないのが
大変残念であったけども、
どれをもってよいとするかについて、
自然であること、新しく創られたものも初期までで、
手馴れてくると作為が出てきて駄目だというのも
随分極端な話だが、なんとなくわかるようでもあって
なかなか興味深いのでありました

結局、美という、よくわからんものについて
自分の確信があって、それがどうなっているか、
自分さえよければいいのか、他人を貶めるほどか、
このあたりの攻撃性については、人間心理の何かでないかと感じたりしながら
ただただ、好きな陶磁器を眺めていたいという気持ちについては
最近になって、ようやっとわかりはじめてきた
そんな風にも思うのでありました
久しぶりに自分の盃を弄ぼうという気持ちになった
いい一冊であります
よきかなよきかな

【読書】静かな爆弾

2018-05-15 21:13:54 | 読書感想文とか読み物レビウー
静かな爆弾  作:吉田 修一

面白い小説だった
読んで情景が浮かぶし、主人公の心の動揺や、考え方も
物凄く伝わってきて、一つ別の人生を体験したみたいで
とても楽しい読書となりました

物語そのものは、さして楽しいものではない
むしろ、辛いかもしれないと思えるそれなんだが、
ここに描かれた恋愛と呼ぶのもまた違う、
側に居て欲しいという気持ちが、まざまざと浮かんできて
心を捕まえられたようになったのでありました

耳が聞こえない彼女と出会い、
なぜだか付き合うとは違う、不思議な関係となる
主人公はジャーナリストでもあり、紛争地帯に挑んでは帰ると
非常に険しい仕事をしている、仕事が立て込んでいるときに
逆立つ怒りをかつては、言葉で元彼女たちにぶつけては
関係を壊してきたのだが、耳が聞こえない彼女にはそれができない
そこで、筆談という方法をとり、
その筆談という手法がまた、新しい思考といえばいいのか
自分が、つい口で言ってしまうことの軽薄さに思い至るというのが
非常にドラマチックで、自分にも感じられるものがあって
面白いのでありました

その他も、耳が聞こえない人との付き合いといえばいいか、
その共同作業から通して見える風景、関係なんかが
物凄くよく伝わってきて、この描写力に圧倒されてしまったのでありました
自分が、いかに傲岸というでもないが、
想像力なく生きているかが伝わるかのようで、なんというか
反省でもあるが、凄く新しい発見を得たようでもあり興奮するのでありました

言葉が伝わるとはどういうことかと、
それを問いかける内容なんだが、ひとつもそんな説教臭さはなく
自身に問いかけているかのようでもあるし、
生き方で、それを示しているようでもあるというのが
まぁ、ともかく凄い見事な小説だと感動してしまったのでありました
凄く考えさせられるし、それでも面白い
いい本を読んだと快哉であります

【読書】炎の牛肉教室!

2018-05-14 21:10:22 | 読書感想文とか読み物レビウー
炎の牛肉教室!  著:山本 謙治

牛肉の情報ぎっしりの一冊でありました
読み終えて、無性に牛肉が食べたくなる
そんな気分になったのでありますけども、
別に牛肉料理なんかが出てくるのではなくて、
黒毛和牛偏重の世の中に一石を投じるかのごとく、
褐色牛など、日本固有種や、そもそも肉のランク付けの実態なんかについて
詳細に解説されていて面白い本でありました

実際に牛を自分で飼ってみて、
それを食肉にして、流通に載せるところまでレポートもあり
大変興味深いのでありました
飼ってみるといっても、プロに任せて
オーナーになったという感じなんだが
それでもなかなか凄いことだと感じ入ったのであります
特に、牛肉を作るという経済性について
あれこれと考察されているのはためになりまして、
肉牛農家になるのは大変だなと
そのあたりを知るのにも十分の内容であります

その他、牛肉の種類、部位ではなく品種の違いについて
かなり詳細にレポートがまとめられていまして、
全体的には香りに関する部分が多く、
肉の香りの違いというのが、そんなにあるものかと
読んでいて不思議に思うほど出てきて楽しいのでありました
というか、お腹すいた

海外での肉の扱いなんかもためになりまして、
フランスやアメリカ、オーストラリアの牛肉が
やや誇張はあるにせよ、なんぼでも食べられるほど
味が強く、赤身がさっぱりしているというのも
また、食欲をそそるというか、食べたいなぁと思わされるところでありました

このほかにも、熟成肉の正しいものだとか、
A5と呼ばれるランクの秘密というか、
その判断基準なんかも出てきたりして
きわめてためになったのでありました
A5というのも、また、仕方なく生まれたランクであるのか、
本当にうまいものというのは
やっぱり、自分の舌で確かめて、判断したものでないといけないなと
思い知らされたのでありました
たまに脂の少ない赤い肉をたらふく食べたいとか思うことがあるけど
牛肉とはそういう楽しみ方をするものだよなと
考えたりするのであった

ともかく、料理が出てくるわけでもないが
無性に牛肉を欲するようになる素晴らしい一冊でありました

西郷どん  流人 菊池源吾

2018-05-13 20:46:46 | NHK大河ドラマ感想
NHK大河ドラマ「西郷どん」
視聴完了であります
新章スタートといったところか、奄美大島でのそれこれで、
NHK沖縄とか、奄美大島とか好きだよなと
ちょっと感じたのでありました、テンペストとかもそうだが、
なんか、ドラマにしたいという魅力があるのだろうか、
そういう意味では、東京の大島とかの方を
なんか取り上げて欲しいんだけどなぁ

と、しょーもないことはさておき、
さらさらと、左内が殺された話が伝わってきて
なかなか衝撃を受けるところ
前回の捕縛から、どれほどだったのかわかりませんが、
よく考えてみると、あの事件と地続きだったといえばいいか、
月照との逃避行はそこから始まってたんだなと
思い出したのであります
まったく、月照の話というか姿も何も出てこないのに
驚いた次第でありましたけども、その陰でもないが、
ひきずって自暴自棄になっている吉之助の様子は
なかなかステキでありました
やつれるべきである状況なんだが、太った人がやつれた姿って
体作ろうとしても難しかろうなとか
いらんことを思ったりしたのでありました

さて、大島での自暴自棄加減はなかなか大変でありましたが
以前にブラタモリで見た、砂糖作れ地獄がありあり伝わってきて
あの番組見ておいてよかったと思うところ
ソテツ食べるんだよなぁと考えると、なんといえばいいか、
その酷さ、悲惨さというのがよくよくわかるものであります
今でこそ、笑顔で番組になってたが
本当に酷いことだと思うのである

ユタが出てきてというあたりが、あのあたり一帯には共通のものなんだなと
テンペストを思い出したりしつつ、綺麗な海に感動したのでありました
しかし、字幕が出てたんだが、ちょっと油断すると
西郷さんのほうが何喋ってるかわからないことが多かったりして
ずっと字幕いるんじゃないかと
思わなくもないところ、とりあえず歴史とさほどに関係ある話でもなかったので
ドラマを楽しむという一回で
次回からどうなっていくか、とっとと帰らないと西郷さんの歴史なんて
まだまだこれから山盛りだぞと思うところなんだが
楽しみに過ごしていくのであります

しかし、桜田門も、この様子だとしれっと済んでしまう感じなのかしらね

【読書】面白くて眠れなくなる社会学

2018-05-12 16:42:28 | 読書感想文とか読み物レビウー
面白くて眠れなくなる社会学  著:橋爪 大三郎

社会学とはなんぞやということを
懇切丁寧に解説してくれた本でした
社会学入門と呼んでもいいのかもしれない
どうも、対象年齢がやや低いところを想定されていたようで、
語りかけ口調の文章に、若干抵抗というか
しっくりこないところを感じたのでありますが
それでも、社会学というものが広範で面白いものだと
かなり知ることができて興味深かったのであります

哲学や宗教、地理、歴史といったことも
大きなくくりでは社会学に属してくるといった感じで、
人間が生活を営んでいればこそ
社会が形成されて、そこで起きることや
考えられることなんかが学問となるという感じでありました
お金の成り立ちや、国の成り立ち、
憲法なんかも扱って、それらがどういうところから発生して
どう使われているか、根本的なところを解き明かしていくというか
考えを深めていくといった内容なので、
今更ながら、そう考えてみると難しいなと思うところばかりで
面白いのでありました
職業とはそもそもしんどいことで、それだからこそお金が発生すると
至極当たり前のお話であったり、
やや結論ありきで語りすぎな部分もあって
納得できないところもあるのだけども、
そういったところをすり合わせていく学問だと思えば
なるほどなと感じるのであります

肩肘張らずに、ふわっと読んで、
興味を持ったからといって、さらに深めていこうとまでは
現在の私には思いも寄らなかったのでありますが
ともかく、社会学というのはこういうものかと
知ることができた一冊であります

年末台南高雄旅行 16 鄭成功廟と再發號肉粽

2018-05-11 21:21:58 | 年末台南高雄旅行(2017)
ここからも、前回とほぼ同じルートをうろうろするだけなのであるが
まぁ、楽しく食い倒れを続けていくのである


だいぶ日も暮れてきて雰囲気が出てきた林百貨店
見るだけで、今回は中に入らずスルー



前回も立ち寄りましたが、鄭成功廟に詣で
今回は鄭成功に関する知識をたらふく仕入れていたので
前回と、意気込みというか、気持ちが違うと
まったく同じところを訪れたにも関わらず
なんというか、感慨深い思いを抱きつつ見たのであります
その割に前回撮ったのと同じような写真ばかりで
なんだかなという感じなのだけども


この写真が鄭成功廟だったか、天壇だったか覚えがない

多分これは天壇

天壇については、もっと大きな塔みたいなものがあるはずだと
ずっと探していたのでありますが、どうもそれは中国の天壇のほうで
台南のそれは、そこまで大きな建造物はないと思われる
医者の神様にとりあえずありがたやと手をあわせて
ぶらぶらと歩いたのでありました


そして、前回も訪れた再發號へ

肉粽が大変有名なお店なのは前回でも知っていた通り
さっき食べたばっかりじゃないかと
父親はげんなりするものの、名物は食べるべきだと強引に食べさせることに
もっとも、二人で一個が十分であろうと
特製を頼んで仲良く食べるのである


メニューの通り、ほかにもあれこれあるけど
いつか、粽以外を食べる日がくるのだろうか


特製肉粽 150元
あわびが絶品であるのだけども、それは父親に食べられてしまったので
椎茸をもくもくと食べたりして、これはこれで旨いと
大変満足したのでありました
台湾のお店では、というか、日本以外ではそれが普通だと思うのだけども
飲み物、お水すら出てこないのでのどが渇いたという父親のために
謎のジュースを頼む


たぶん酸梅湯だと思われる、謎の黒いジュースはお茶だったように思うのだが
どちらも驚くほど甘い、甘いなんてもんじゃない、むしろ苦いと思うくらい甘い
台湾人はどうしてこんなに甘い飲み物が好きなんだ
むしろのどが渇いてしまうという悪循環にげんなりしたのだが
どちらも20元だったと思います
台湾は食事中に口をさっぱりさせるということがないのだろうかと
思ったりしたんだが、この甘いものでさっぱりさせるということなんだろうかしら
わからんが、ともかく、あれこれ補給できたので
急ぎうろうろ歩きを再開するのであった

ターナー展 風景の詩

2018-05-10 21:03:01 | 陶磁器を探す旅と名物
京都文化博物館なる場所でやっていました、
ターナーというイギリスの画家に関する絵画展であります
絵画、それも洋画なんてまったく知らない分野でありましたが
知り合いから無料チケットを貰ったという
ゲスな感じで見てきたのでありますが
いや、驚いた、凄い人気なんでありますね
先日のゴッホ展といい、絵画への興味が様々な人で高い様子で
今回のこれも、相当の賑わいの中見てきたのであります

まるで写真のような美しい風景画を描く画家のようで、
海や山の風景なんかが、相当の写実性を持って再現されていました
正直写真じゃないかと思ったのもいくつかあったんだが、
独特のといえばいいか、いかにも絵画ならではの省略が
かっこいいというか、ステキな絵だなと
素直に感動するものばかりで驚いたのであります

画家として、生前から大成していた人物のようで、
さらには自分の作品を版画にして、幅広く楽しんでもらうように
版画工を育成したり、そういうプロデュースもしていたんだそうで
実業家としても立派だったのではないかと思われるところ、
小説や、詩の挿絵なんかも手がけていて
その作品がこれまた、創造的で素晴らしいと感じたのであります

かなり細やかな水彩画が多かったのでありますが、
印象に残ったのは、チケットやポスターになっていた絵ではなく、
むしろ抽象画みたいな作品で、
ある種このターナーらしくないものだったかもしれないそれでありました
と、どんな作品だったか、作品名を探そうとしたんだが
ホームページとかに目録がないんだなこれが、
ともかく、画面下が薄ぼんやりと黄色く塗られていて、
どうも、海岸べりみたいな雰囲気で、ともかく全体的に淡い、
一見すると、ただ絵の具を薄く延ばしただけじゃないかと思うような
不思議極まりないそれであります
写実性から随分遠のいたように感じたんだが、
なんか、海岸っぽいなと思うと、そう認識できそうなぎりぎりの感じが、
その作品を見るまでに、写実的なそれこれを見たことも手伝って、
自分の中で想像できるみたいな作品で、
そんな意図はないのだろうけども、興味深い体験だったと思うのであります

まぁ、何せ、抜群に上手かったんだそうで、
17歳くらいで、既にとんでもない写実性の高さの作品を発表していたり、
取り入れている技法もかなり熟練熟達しているんだそうで、
職人といえばいいか、技についても天才肌の画家だったようでありました
また、彼の風景画が、当時旅行をする人の心を沸き立たせていたようで、
そう考えると、日本における浮世絵、東海道シリーズとかに通ずるものでもあるのかなと
ちょっと感じたりしたのであります
この絵をもって、どんなところか想像し、行けないまでも楽しんだことが
当時の人の間にあったのかもしれない

なかなかに感動しつつ、楽しく見終えて、
洋画家の名前を一人覚えた、そんな春なのであります

【読書】はぶらし

2018-05-09 21:12:15 | 読書感想文とか読み物レビウー
はぶらし  作:近藤 史恵

うつうつとしているのに、続きが気になって仕方なくて
あっという間に読まされてしまった
最後は、爽快でもなければ、すかっともしないんだが
この疑心暗鬼というか、自分の中の見栄といっても差し支えないような
相手への思いやりというか、他人とのかかわりにおいて
どこに線を引くかという重大なジャッジについて、
一喜一憂して、嘆息みまいまくると
そんな小説でありまして、ああ、わかる、わかるわー
なんて思ったりしたんだが、よく思われたいというのと、
助けてあげようということ、そして、その気まぐれが招く結果と
因果によっての辟易というのが、
いかにも人間判断だなと思わされたりして
深く納得というか、あれこれ、考えさせられたのでありました

出てくる人が、みんなそれなりにいいところもあり、
悪いところもあるというのが味噌でありまして、
実際、人間社会はこういうものだよなと、
ある面ではいいところのある人が、そうでもなかったり、
敵の敵が味方かと思うと、敵の敵を見たら、
むしろ敵だと思ってたのが、可愛らしく見えてきたりだとか
様々な行き違いや、相手との情報不均衡によるギャップというか
ともかく、ひどく人間社会で生きるのは疲れるなと
その一点を物凄く的確に描いていたように思う小説でありました

控えめに強欲といえばいいのか、
自分を中心に誰でも考えてしまった際に、
相手に対して苛立ちを覚える、その苛立ちの根源がどこにあるか
相手の気持ちになったとき、その苛立ちは正解か不正解かと
そんなことを考えさせられたりして、
うつ病を発祥しそうな、考えすぎでもない、考えたくなる
人間関係がいっぱいに描かれていて、楽しくないけど面白く読んだのでありました

ここまで、と決めることが既にエゴでもあるようだし、
助けられないなら最初から助けるなというのも
ひとつあるように思ったりもするんだが、棚上げ論でもあるなと
気まぐれに助けることの迷惑というか、
それに伴うろくでもない結果、未来というのは
しっかりと予測して、断るときはちゃんと断らないといけませんねと
その場かぎりの言い逃れでもない、帳尻あわせはろくなことにならないと
反省を促されるようでもありました

ともかく、全然楽しくない話題だし、
読んでいてストレスがたまるような物語なんだが
それでもなんだか、気になって読んでしまって
なんだかんだ、面白かったと思えてしまう
魅力ある文章を楽しんだのでありました

【読書】伝わっているか?

2018-05-08 20:53:44 | 読書感想文とか読み物レビウー
伝わっているか?  著:小西 利行

コピーライターによる、伝えることにこだわった一冊でありました
謎のイルカが、伝えるということについて教えてくれる
そういう寸劇から学ぶというスタイルの本でありまして、
読んでいけば、コミュニケーション術というよりは、
仕事の仕方ともいえるような、
結局、物の考え方というのは抽象化するではないが、
大枠になっていくにつれ、
どれにでも汎用的に使えるものとなるのだなと
コミュニケーションとして考えるならこれ、というのを
示してくれた一冊のように感じるのでありました

なるほどなと読んで、実際に伝わったと
読んでいて自分で感じたりするのでありますが、
手垢がついたといっても差し支えない
基本の部分、限定したり、違いをはっきりさせたり、
情報を突き詰めたりといったことで、
伝えたいことが何かを明確にし、それを正しく伝えるため、
伝えるというよりは、そうして欲しいという願望をかなえるため
どうしたらいいかを考える訓練をしてくれる
そういった内容だったのであります

なぜなに分析的な話が、どうして役に立つかを
わかりやすいメソッドで見せてくれるので
やろうという気分にもなるし、
肩肘はらずに考えることができるなと感心できたり
楽しく読み終えたのでありました

結局のところ、わかった、という気分が味わえるのは
凡百の本と変わらないわけで、これによって
本当にやるかどうかが大事、だけどそれは
この本のせいではないというのは
いつもいつも、ずっとずっと、わかっているけども
越えられていない自分の問題なのでありますが、
今回のそれが、そうならないように
何かについて、考える癖をつけてみようと
真面目に考えたのでありましたとさ

相手の気持ちになるというのは
なかなか難しいことなんだけども、諦めずに
本当に考えて、独りよがりにならないようにするということの
大切さといえばいいか、その難しさというのが
わかったように思えただけで
よい本だったとしたいところであります

人と話をするのは本当に難しいなと
人間嫌いが加速しそうであるが、
がんばって生きようと思うのでありました
こんだけ考えないといけないと思うほど、面倒くさいと思ってしまうが
しないと、より面倒臭くなるんだな
人生というのはとかく厄介だと、改めて思い出したのでありました
なんだかな

【読書】大王朝の興亡 隋・唐―宋・元 (中国人物伝 第III巻)

2018-05-07 21:09:45 | 読書感想文とか読み物レビウー
大王朝の興亡 隋・唐―宋・元 (中国人物伝 第III巻)  著:井波 律子

現在ライフワークにしている、中国史の勉強の一環として読みました
興味を持っている、唐から宋にかけての
傑物や文化人などを紹介して、時代を考察というか
教えてくれる一冊でありました

政治家といえばいいのか、時代を築いた人をピックアップしつつ、
もう一方で文化人にもしっかりと光を当てているのがポイントで
おそらくは、そちらが主体だったのではないかと思うくらい
文人への解説に力が入っていまして
紹介される作品ともども、わかりやすく学ぶことができる一冊でありました

ちゃんと勉強してこなかったなと
深く反省させられたのが、この文人シリーズでありまして、
白居易だとか、李白だとか、杜甫だとか
唐代随一のそれこれについて、
その生涯をコンパクトに紹介されて
なるほどなとしみじみ感心したのであります

さまざまに紹介されていた中で
記憶に残ったというか、そもそも
どうしても知りたいと思っていた人物として
徽宗と米芾がいるのでありますけども、
このいずれもしっかりと教えてもらえて
感激ひとしおというか、やっぱり宋という時代は
すごい時代だったのだと
文化に関しての素晴らしさを感動とともに知ることができて
大満足だったのでありました

特に米芾に関しては、いくつかエピソードも知っていたし
面白い、そして怪しい男であったとうろ覚えだったところ
硯マニアだったり、石マニアだったりするという
また、どうでもよいような、そうでもないような
実にすばらしい知識が補完されて、ものすごくよかったのであります
米芾は天才であったろうし、知る分には最高にすごい人だなと思うんだが
絶対に、こうはなれないしなりたくないし、友達にもいらないと
そんな風に思えてならないのでありました
人間臭いところで、潔癖症だったというのも
結構衝撃的でありました
面白い、なんと、人間臭い男なんだろうか

そして、当然のようにして則天武后についても
しっかりと記されていたので
李世民から、則天武后、そして太宗にとつながっていくあたりの
唐という時代の面白さも堪能できたし
なんというか、とても面白く、楽しい一冊でありました
何よりも宋代の勉強になったのが一番であります

非常にわかりやすく面白かったので
これより以前の巻も読みたいと思えるほど
素晴らしい一冊だったと思うのでありました
時間をみて、このシリーズはおっかけたいと思ったのである

西郷どん  西郷入水

2018-05-06 20:45:00 | NHK大河ドラマ感想
NHK大河ドラマ「西郷どん」
視聴完了であります
逃げ切れない西郷、そして、島津のあれこれ
久光の苦悩が透けて見えて、非常によかったと
思うのでありました
それなりにがんばろうとしたことが認められない
これは、なんというか不幸にもとれるが
そういわざるを得ない親心もわかるようでもあり、
あれはエゴイズムというよりも、その人の考えというか、
その限界という言い方は嫌いなんだが、
あの当時の答えのひとつだろうとも感じたりしたのでありました
独善的とも見えるが、あの決断をできるからこその
殿様ともいえるなぁなんて、かっこよく感じるのでありました

大久保のやり方も、これまた
ひとつであるよなと思ったりしつつ、
相手の立場というか、立ち位置がこれほどはっきりと違うというのが
不幸を呼ぶというのが、時代というか歴史だなと
改めて思い知らされたりするのであります
月照との入水は、そうなると予見できたかどうか、
それは、京都での、江戸での、西郷の働きというか
その本当がわかっていないと伝わらないだろうなと
大久保を責めることはできない事件であるだろうと
ドラマ上は思えたりもしたのでありました

つかの間の平穏からのというのが
今回の見せ所だったので、
それ以上何も出てこないのでありますが、
さらっと、篤姫の孤独も深まっていくし
なんとも悲しいことばかりというか、島津のある一部にとって
非常に暗い時代であったろうと
感じるに十分な回でありました、桜田門はいつだ

【読書】官能と少女

2018-05-05 21:21:42 | 読書感想文とか読み物レビウー
官能と少女 作:宮木 あや子

前半は耽美とすら感じられる内容でありましたが、
後半になるに従い、酷く重たい、精神的なグロテスクさみたいなのを感じる
なんとも後味の悪い小説でありました
タイトルの通り、官能に力が入っていて、
相応のそういうシーン描写もあるのだけども、
なんといえばいいか、アブノーマルな感じがして
他人に読んだと伝えにくい内容であったと思うのであります

小児性愛というには、やや少女が成長しているのかもしれないと
思ったりもするわけでありますが、
この少女たちが、性的なトラウマを植え付けられるに至った
酷い生活や、境遇なんかが、ちらちらと見え隠れするというのが
衝撃的なところでありまして、
実際、こうやって体を売っていく少女もいたりいなかったりするんだろうかしらと
なんとも、暗澹たる気分になったのでありますけども
それらを愛する男たちが、純粋であったならば、
あるいは、あってほしいといったような願いにも似た
これまた、願いだとすれば悲惨なことが描かれていて
酷く重たい気分にさせられるのでありました

序盤における、少女と大人の女という組み合わせの話が、
内面描写が秀逸なのと、男性的なそれがないということへの
安心といえばいいか、それもまたインモラルかつ、アブノーマルだと
思えたりもするのだけども
興味深い内容でありまして、この恋愛と情愛が
性欲からくるものか、何か別の衝動なのかというあたり
制御できていないようにも思えるところが
読みどころといえばいいか、ああ、文学というか文章だと
感嘆したのでありまして
小説を楽しめたのでありますところ

あとは、精神を病んでしまうような内容が多くて、
こういう困った精神の女の子というのは
確かに、思い返してみると一定数集団の中にいたような
いなかったようなと思われる節もあったりして、
これもまた、虚構と現実と
ないまぜに読まされるようで興味深かったのでありました

かなり面白かったとか、声を大にしていえるようなテーマでもないので
難しいところでありますけども、
読み終えて、うやむやしたものを抱えさせられるという点において
文章を、小説を読んだという楽しみを味わえたと思うのでありました

年末台南高雄旅行 15 台南孔子廟と度小月本店

2018-05-04 21:38:55 | 年末台南高雄旅行(2017)
タクシー拾うのに難儀したものの、無事安平地区を脱出できて
大渋滞の中移動を開始、乗る時間帯を考えないと
タクシー移動でも、えらい時間がかかってしまうのだなと痛感であります
前回みたいに、南側からぐるっと廻っていったほうが早いのかもしれない
と、あれこれ反省しつつ、タクシーで親父が居眠りする時間ができたので
とりあえずよしとして、到着したのは前回入れなかった孔子廟


今回はチケット購入して入場 25元と大変お安い

なんとなく知ってはいたものの、
孔子廟って、そんなに見るところないよなーと感じつつ、
さりとて、台南の孔子廟といえば、台湾における開祖だったんじゃないかと
鄭成功が思うところがあって建てたとか、そういうあやふやな記憶を頼りに
ありがたがって参拝したのであります


どこの孔子廟も、このシンプルな廟でありますね


神像の類はまったくなくて、このように額編が山盛り置いてある

祀ってある孔子

それなりに人は入っているものの、あんまり見るところないのでありまして、
当時使われていたであろう部屋に、調度品の複製など展示がありまして、
なるほどなぁと思ったりしながら、ぐるっと見て廻ったのです
外では、前回同様、お年寄りがカラオケを楽しんでいて
うちの親父が、いきなり揃って唄いだして驚いたのですが、
どうも、増井山の歌だったんだそうで、時代人だよなぁと
このあたりは脱帽だったのであります
台湾の昭和歌謡への思いは、いつまで続くのであろうかありがたい


そして、孔子廟といえばというほどのリス
可愛らしいと思いがちだが、最近はでかい鼠にしか見えなくなってきた
まぁ、似たようなもんなんだけどもな

少し歩いてから、もはや何飯なのかもわかりませんが
台南に来たら食べておくべきだろうと、度小月を目指します

見えた

前回は、旗艦店だったか、本店ではなかったようで
こっちが本店との由、本当にそうかはよくわかってないが
ともかく、綺麗なお店を発見したので、そちらで腹ごしらえをしていくことにする


海老巻き(蝦捲)

ピータン(皮蛋) 

このどっちもが凄い旨かった、
特に蝦捲が、安平の屋台で食ったのとは段違いの旨さ
やっぱり、旨いものはよい店で食うべきなのだなと
反省というか、驚きを覚えるほどの違いだったのでありました
海老の濃厚な香りと、香ばしい衣があいまって、熱いけど旨い
とてつもなく旨いのである

そして、あんまり食べなれていなかったピータンもかなり美味しくて
独特の味噌とあいまって、非常に日本人好みの味付けでありました
ピータンそのものよりも、この自家製と思われる味噌の味がよいのであります
これだけでご飯食べられるなと思うほど
物凄い満足感を得つつ、度小月名物の


蓋が可愛らしい

開けてご対面の擔仔麵(ダンツーメン)

これの旨さは前回別店ながら、食べて感激したとおりで
やっぱり旨い、濃厚な出汁とにんにく、ほどよい量のすべてが素晴らしいと
大変満足したのでありました、値段をそれぞれ控えるのを忘れていましたが
ピータン、海老巻、擔仔麵を2杯でしめて370元でありました
これでも相当に安いと思うんだがどうかしら
ちなみに、前回の旗艦店と違ってチャージはとられなかったので
こっちのほうがよい店なのかもしれないと思うところ

ともあれ、台南における重要なミッション
うまいものを食べるを、完全にクリアしたと思えるほど
非常に満足な食事だったのでありました
食べすぎなので、またも腹ごなしのためぶらぶら歩いて移動します

【読書】世界史の10人

2018-05-03 21:48:26 | 読書感想文とか読み物レビウー
世界史の10人  著:出口 治明

ユーラシア大陸を中心にした、世界史と呼ばれる一連のそれで
傑出した、あるいは、大きな成果を残したと考えられる10人について、
その姿と業績を綴った本でありました
著者が保険会社の会長さんだそうで、
どういう本なんだと思っていたら、相当に詳しい、
実際にあってるのかは、自分に知識がないからわからんが
最新といっていいのか、新しい説も取り上げながら
様々な統治者たちのことを語った本でありました

世界史というと、どうしても西洋史に偏ってしまうのでありますけど、
この本では、中国から中央アジアにかけてが
相当割いてありまして非常に面白い、
特に個人的に勉強をしたかった、唐から宋にかけてが詳しくて
さらには、興味を持っている則天武后について1人にあげていたので
まぁ楽しいというか、非常に興味深い一冊となったのでありました

個人的には中国史部分が大変勉強になりまして、
則天武后と王安石という二人の鋭い政治、手法というのが
なるほど立派であったのだろうと感心しきりであったのが
とても楽しいのでありました
それを継いでの元という一大帝国の興亡についても
興味深い内容ばかりで面白かった
バイバルスというイスラムの英雄についても割いていまして
これは、なんか別の本で読んだことあったなと
うっすらと思い出したのでありますけども
その人が、どのような立場で、どう英雄となったかが
解りやすくて面白かったのであります

そして、当然のようにヨーロッパ史にも入っていくんだが
このあたりは、誰それの甥やら息子やら、孫やら親戚やらと
ともかく、入り組んだそれこれが語られていて
多分あってるんだろうが、もうさっぱり覚えられない
何を言っているんだと思うほどでありましたけども
エリザベス一世の凄さというのも学べたようでありまして
とても面白いのでありました

かなりずっしりと重い本でありましたが、
読みやすい、面白い歴史本だったと感じるのであります

【映画】レッド・スパロー

2018-05-02 21:23:50 | ドラマ映画テレビ感想
久しぶりの映画であります
エログロ指定が入っていたので、
ちょっとどきどきしながら見たのですが、
なかなか刺激的ながらも、
まぁ、見られないこともないという範囲で
だけども、緊張感は素晴らしいものでありました
スパイ映画っていうのは、なんというか、
この緊張感を味わうために見るんだろうかね
ちょっと疲れた

どこから仕組まれていたのか、
そもそもどうだったのか、
考えてみると、不可解な部分というか、
全部の謎が解かれたわけではないようにも思える
そういう内容でありまして
発端では、バレリーナが相棒のミスで足を折ってしまう
だけど、そのミスは仕組まれたものであったようだと
そんなことを教えてくれた叔父様が、
実はロシアの情報機関の偉い人で、
その仕事を無理やり手伝わされた挙句、
とんでもないことに巻き込まれていくとかなんとか

そういうお話で、途中途中で、
相当に危険な目に遭いながら
結局、名うてのスパイというよりも
おっかなびっくり、危なくて仕方ないという感じだけど
失敗なのか、成功なのか、
わざとか、真剣かまるでわからないままに
でも、なぜだか情報を手玉にとりながら生きていけると
そういう女の物語でありました
見終わって思ったのは
平山夢明のダイナーみたいな世界だ
そういう感じであります
やってることは大分違う、いや、似てるような気もするが、
ぎりぎりの選択をして、
この映画では、その選択が間違っていたようにも思うが
ぎりぎりで生き残るので、やっぱり正解だったんだろうかとか
実に不思議なのでありました

誰に惚れていたのか、誰が彫れていたのか
男の心を手玉にとるスパローという色仕掛けもあるスパイのはずだが、
そういうことを期待させておいて、
ほぼそういうことがないというのが、
或る意味リアルというか、安売りしないからこそ
翻弄されるといったらいいか、
でも、そういう小ずるさみたいなのはまったく感じられず、
本能のままに、断ってというか、誘い方も下手だし
すぐにバレるし、でもそれわざとだったんだろうか
いや、そんなことできるような女じゃなかったぞとか
あれこれ思ったり感じたりしながら
時折さしはさまれる、残虐シーンが相当にえぐいなと思ったりもしたのだけど
おおむね、面白く見終えたのでありました

最終的には、なるほどというオチで
さらに、そうきたかというオチまで用意されていて、
それによって、誰を手玉にとっていたのか
どういう目的を想定して生きていたのか
それがわかったようでもあって
面白い映画だったと、長いのにずっと見入ってしまったのでありました

最後のシーンの恐ろしさというか
そういうものかという、何か得体の知れない不気味さが
非常に心地よい、とても面白い映画でありましたとさ
エロ目的で見るものではない
ちょっとはあるけど、さほどの話ではない