60~90年代名作漫画(昭和漫画主体・ごくタマに新しい漫画)の紹介と感想。懐古・郷愁。自史。映画・小説・ポピュラー音楽。
Kenの漫画読み日記。
●漫画・・ 「黄色い手袋X」
だらしなく昼寝をしていて、ふと目が覚め、ぼんやりと何事か思っていて、思いが、もう二、三ヶ月もTVのニュース番組やワイドショーで騒がれ続けている、秋田県藤里町の児童殺害事件の事に行き当たり、この二、三日で容疑者が供述し出した新事実に、自分の気持ちが囚われると、僕のような人間でも、やりきれないような気持ちで胸が痛くなりました。無論、自分一人では到底、生きて行くことの出来ない、非力な児童が、頼らざるを得ない、自分が最も信頼を寄せる母親に、手を掛けられて正に死ぬ程苦しい目に合わされている時、幼い少女がいったいどんな気持ちだっただろうか?と考えると、僕は何だか涙があふれて来ました。殺人犯の被告は、実の幼い娘を橋の欄干越しに投げ落としたと供述していますが、僕には、その時もう既に被害者はこと切れていた様にしか思えません。TVのニュース番組でも、そのような意味合いの解説をするコメンテーターの意見も多い。事の最初から嘘ばかりで、嘘に嘘を重ね続けた言動の殺人犯の被告は、逮捕前後からは、その場しのぎの嘘で、真実から逃げよう逃げようとしているように見える。今の被告の頭にある事は、どうしてでも極刑からは逃げようという事だけではないのか。二人もの幼児を殺めながら、しかも一人は実子でありながら、未だに如何に刑を軽い方に持って行くかばかりなのではないのか、という気がします。
18日の午後からの秋田署の会見では、既に米山豪憲君殺害で逮捕されている畠山鈴香被告は、大きな泣き声を上げながら、実子彩香ちゃん殺害について自供し、警察は連続児童殺害犯として再逮捕するそうです。今のところ、川に魚を見せる為に橋まで連れて行き、帰るのを嫌がりダダをこね始めたので、橋から突き落としたと、殺人の衝動性をアッピールする供述をしているようです。でもどーも、いろいろな見地から、計画性殺人の可能性も強そうではあります。マスコミもそういうニュアンスを含ませたコメントを多く入れて報道しているし、警察も今現在の被告の供述を全面的に信じて結論付けている訳ではないようです。同じ殺人でも、衝動性か計画性かで罪の重さは変わって来る。まだまだこの捜査は続いて行くようです。それにしても恐ろしいものですね。隣の殺人鬼。9歳、、彩香ちゃんは、近隣の証言から、母親から児童虐待やネグレクトを受けていたようです。そんな正に鬼のような母親を信頼して庇っていた、優しい女の子綾香ちゃんが不憫でなりません。
ちょっと昔の話になりますけど、深夜のタクシーに乗ったときに、運転手さんが話していたこと、深夜時間帯によく水商売の女性を帰宅に乗せるが、幼い子供を託児所に預けてそれを引き取り、家路に着く仕事帰りのホステスさんも多い。運転手さんは感心して言ってました。ホステスしながら一生懸命、子供を育てている。女の人のたくましさはすごい、と。女の人のその強さには男は適わない、と。その時僕も、そうですねえ、と同意しました。それを思い出しました。エロオヤジの身包み剥いでケツの毛までも毟り取っても、子供を豊かに育てようとする、女の人のパワーはすごい。僕は本当に女の人の子供を守る力は、並大抵のパワーではない、と思い続けていました。その思いが根底から覆される事件ですね。自分の身内が死んだ時、事故ではなく事件であれば、上限が1千万以上もある何がしかの給付金の制度もあるそうですね。被告はそれを知っていて、まとまった金欲しさの犯行ではないのか?という説も出ているようです。信じられませんね。鬼子母神でも、他所の子供をさらっては喰らい、していたけど、我が子を誘拐されると狂ったように動転し、自分の子供を返してくれるなら以後、他所の子はさらわないと誓ったという。この被告の行状は、鬼子母神よりもどのくらい劣るか解りません。しかも、一度事故死に決まった綾香ちゃんの死を、警察の目を殺人に向けさせる為に、豪憲君を殺害した可能性の疑いまである。殺人鬼といっても、鬼でも、よしてくれ、俺達でもそんなひどい事はしないと、辛亥に思われそうです。
動物でも、鳥でも魚でも、自然界では親は子を本当に一生懸命育てます。親は子を守る為には自己犠牲的に動きますよね。身を捨ててでも、子を育ててる。美しいなあ、って思います。9歳、彩香ちゃんはまだ幼児ですよ。お母さんを信じて一生懸命です。被告も、こんな優しい娘だったら、将来、自分の力になったでしょうに。精神面、物量面で支えや力になってたかも知れません。9歳の彩香ちゃんも、7歳の豪憲君もどんな素晴らしい将来が用意されていたことか。どんなふうに人生を感動して生きて行ったか。幼児が死ぬという事は悔やまれることが大きいものです。しかし、このところの悲惨な事件を考えると、子供は10代後半や20代前半で親兄弟をバットや金槌で叩き殺し、寝ている間に家ごと火を付け焼き殺し、今回のようにまさかの事件で、幼少時の子供は母親に殺される。やりきれませんね。育児ノイローゼなどや、病的な理由の幼児虐待もあるようですけど、この畠山被告に限っては病的な兆候は全然、見受けられなく思える。しかし、病的な理由の幼児虐待に関しても、とにかく児童虐待というものは全て、自治体や周囲、世間が、何とか対策を万全に考えなければいけない大きな問題ですよね。
さて、漫画ですけど、上記文中で、比喩的に、鬼子母神の話を出しましたが、僕が多分、生まれて初めてこの鬼子母神の話を知ったのは、子供時代の少年雑誌「ぼくら」1966年5月号の、巻頭カラー掲載、「黄色い手袋X」での短編第1作「こころの宝の巻」の中で、でしょう。「黄色い手袋X」は本編は、週刊少年マガジンに1966年連載された、覆面ヒーロー漫画です。漫画作画が桑田次郎、原作は日本仮面ヒーローの元祖、「月光仮面」や「七色仮面」の生みの親である、川内康範さんです。川内康範先生は古くから正統派ヒーローもの物語を多く創作されて来た作家であり、多くの歌謡曲の作詞も手掛けられている有名な作詞家でもあります。もうかなりな御歳になられるでしょうがいまだ健在のことと思います。仮面ヒーローものの新しいものというと、「レインボーマン」などがありますね。新しいといっても、今から考えれば随分昔の超人ヒーロー物語ですけど。日本TV黎明期の子供向け国産ヒーロー物語を創作し続けた、昭和30年代後半から40年代に活躍された一時代の雄ですよね。
66年の雑誌「ぼくら」に連載された「黄色い手袋X」は、5月号の「こころの宝の巻」を皮切りに、例月号1作短編読みきり(第四話『電気人間の巻』は中篇で、このお話は4回続きました)で、全5話が連載されました。少年マガジン連載版の本編「黄色い手袋X」長編作は、今までに何度もコミックス単行本化されて来ていますが、この短編作品はこの度初めて、漫画ショップより「外伝」としてまとめられて初単行本化されました。ここに「こころの宝の巻」以下全短編作が収録されています。ヒーロー「黄色い手袋X」は、宇宙人やサイボーグやロボットではなく、あくまで人間の覆面ヒーローで、月光仮面の正統派ヒーロー性を踏襲した、悪人でも殺さない、正義の味方です。武器は、伸縮自在で金属警棒にもムチにもなる、電撃能力のあるステッキ1本です。当時子供だった僕は、「ぼくら」でも「少年マガジン」でも正義の覆面ヒーロー黄色い手袋Xの活躍にワクワクしたものです。
この短編「こころの宝の巻」のお話の中でも、出て来る悪党は、男でしたが、我が子を溺愛しています。読んでから実に40年くらい経っている訳ですし、面目無や、この度出た単行本を未だ読んでいないので再読を果たしておらず、詳細をよく憶えておりません。ただ鬼子母神のエピソードが物語中に効果的に使われていたのは憶えています。さすがは学校の勉強なぞ全くしなく、少年時代を漫画ばかりで過ごしていただけの事はあります。我ながらこんな事は40年くらい経とうが、よく憶えている。男だろが悪党でも、我が子は溺愛する。それを全く、この度の事件ときたら‥、いやはや何とも、生物界では許し難い事‥。しかし、昔々の我が国の貧しい農村では、年頃になった娘が色町に売られて行くなぞがあり、東南アジアの一部地域の貧しい農民達にも同じ事があっているようで、人間の営みにはいつも人身売買の悲しい歴史が横たわっていたし、自力で生きる力を持たぬ弱い人たちが、悲惨な目に合う事は、出来るなら避けて欲しいと望むばかりですね。
(※『こころの宝の巻』の中の、鬼子母神のエピソードは、仏陀が鬼子母神の末子を隠して鬼子母神を戒める、という解説になっています。)
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コメント、ありがとうございます。
だいたい、漫画ショップの復刻版、全部が値段1890円ですよね。本屋に注文して何冊か、買ったけど、高価ですよねえ。
園田光慶ものとか、まだ欲しいのいっぱいあるけど、何せ私も貧乏人なもので‥。
十二、三年くらい前だったら無理してでもいっぱい買っちゃいそうですけどね。
でも、漫画ファン様は、僕からすれば、朝丘光志ものとかのお宝もの、いっぱい持ってて羨ましいです。
僕は桑田次郎の描くスーパーヒーロー達が昔から大好きなので、黄色い手袋も懐かしく、思い返すと何だかすごく嬉しい気分になります。
それにしても復刻版、高いですよねえ。仕方ないかもしんないけど。
親父が頑固で、小学校時代決してまんが雑誌を読ませてもらえない家でしたので、一年先輩の家でこっそり読ませてもらっていた記憶が蘇ってきました。Xの持つ棒がどんどん延びて悪者を追い詰めるシーンがあったのを覚えていますが、当然単行本が買える状況じゃなかったので、持っていませんが、ここで見て急に思い出した次第です。桑田次郎さんは好きでした。特に出てくる女性が、なんか洒落てる感じで…。
僕は子供時代は漫画漬け状態で、その中でも桑田次郎さんのシャープな線で描かれるSF漫画のヒーローには、熱狂しまくりでした。
子供心に、エイトマンのサチコさんとかには憧れたものです。
エイトマンの原作の平井和正さんの奥様がサチコさんというなまえだという話を聞いた覚えがあるんですが‥。