風景画は現地で描くのが基本ではないでしょうか?
ムラカミ様からこんなメールをいただきました。
“ 風景画は現地で描くのが基本ではないでしょうか。
風とか、においとか、刻々変わる光とかをを五感で感じながら制作することを
セザンヌや印象派の画家から学びました。
私の姿勢は古いのでしょうか ”
今回はその質問をもとに、トレース水彩画について考えていこうと思います。
まず「風景画の基本」とありましたが、絵の世界こそ全くの自由な世界・何をやってもいい世界で、そもそも正しい絵の描き方という概念そのものが存在しない世界だと思います。
もし絵に基本や規範があるとすれば、ダヴッンチも、モネも、セザンヌも、ピカソも、(その当時の)規範を破り、邪道を歩んだ人物であり、だからこそ歴史に残る新しい世界を開拓できたのだと思います。
だから現地におもむき、風やにおい、光を五感に感じながら絵を描くのもひとつの方法ですし、トレース水彩画のように写真をトレースして描くのもひとつの方法で、どちらが正しいなんてないのです。
とはいうものの、どちらがより上手な絵が描けるでしょうか?
上手な絵が描きたい!と強く思うなら、トレース水彩画のほうが一歩も二歩も優れています。
優れている点.1 初心者でも完璧なデッサンがカンタンに描けるからです
絵を描く上での最大の難所は、デッサンが難しいことは衆目の一致するところですが、トレース水彩画は写真をトレースするわけですから、初心者の方でも、正確なデッサンを描くことが出来ます。
それ以外でも上手に描くためのたくさんの技法がありますが、ここでは省略します。
優れている点.2 圧倒的なカメラの普及で、より質の高い絵の素材が見つけられるからです
従来の絵では、絵を描くための場所の確保が限られていることから、描く風景も限定されてきました。
それに比較し、トレース水彩画は写真を素に描くわけですが、カメラの進化と普及はものすごく、フィルムからデジタルに変わり、カメラだけでなく、ケイタイやスマホなどでもカメラ機能が付いたことで、日々の生活の中に深く写真が取り入れられました。
風景画は絵のテーマこそ出来栄えを大きく左右する画法ですから、圧倒的なカメラの普及で、それだけトレース水彩画は有利な画法となりました。
優れている点.3 絵は感動を描くメディアですから、その感動を具現化するには、1枚の写真を前にすれば、イメージ化しやすいからです
現地におもむき、五感に感じながら絵を描くのは、臨場感=感動を絵にインプットするためのようですが、感動しながら絵を描けば、感動的な絵が描けるとは限りません。
むしろ感動的な絵を描くには、(写真を前にして)ひたすら「考える」ことがポイントで、具体的にはその風景から何を感動し、その感動を生かすためにどのようにしたいかを冷静に分析し、イメージを再構築することにあります。
私は1枚の写真と、その時の(感動した)印象をもとに、どのような絵にするか、じっくり時間をかけながらあれこれ考えイメージを創り上げていく、その設計の行程は実際の絵を描く行程以上に重要な作業だと確信しています。
たとえば上の屋根の絵も、しっかり写真を素に設計したのですが、ここをクリックしてご覧ください。
優れている点.4 トレース水彩画は、プロが隠し続けてきた画法だからです。
このトレース水彩画は私が開発した画法です。
と、思っていたのですが、開発後にわかったことですが、表現のプロの人たちが同様な画法を以前から取り入れて、仕事に生かしていることを知りました。
だからプロは上手だったのです。
プロとは、画家だけでなく、マンガ家・イラストレーターたちですが、私とプロたちとは考え方に大きな違いがありました。
それは私が洗いざらいその画法をオープンにしたのに対し、プロたちは頑なに描き方を隠し続けてきたことにあり、現在も隠し続けています。
逆から言えば、トレース水彩画はプロも隠しておきたいほどの革新的な画法なのです。
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