渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

戦闘兵士要請項目

2020年08月13日 | open


(探偵ドラマ『プロハンター』第19話)

特殊部隊や傭兵の選抜班には特殊訓練
がある。正規軍においては特に狙撃手
に課される特別訓練だ。
それは別名「キムのゲーム」と呼ばれる。
例えば、テーブルの上に乱雑にいろいろ
な物品が置かれているのを1分間観察する。
そして1分後にそれに覆いを被せ、何が
どのような状態であったかを全て指摘
するのだ。
瞬時的な観察力と識別力と記憶力を研ぎ
澄ます訓練だが、これは任務遂行者と
してのテストにも使われる。
要するに、識別能力が低い者は特殊作戦
の兵士としては全く使えないのだ。
兵として使えないどころか、識別能力
が著しく劣る者は人間社会の日常生活
でもかなり支障をきたすことだろう。

こうした能力が突出的に要求される特殊
な作戦実行者に求められるのは観察力
でも直感力でもない。
「脳内妄想を一切せず、予断と独善と独断
を完全に捨象して、全てありのままをつぶ
さに見る」という着実な行動力だ。
「俺がこう思うからこうなのだ」という埒
もない類は一切通用しない。
端的に言えば、信号が赤であれば赤である
と正確に認識する
ことなのである。

この『プロハンター』の泉じゅんの赤い
ドレスは上のシーンと下のシーンでは
着ている物が異なる。
ほんの数十秒後のシーンのカットだ。


スカート部の丈が異なることは誰でも
すぐに識別できるだろう。
だが、柄さえもが違うのである。
これは私はドラマ映像を観ていて瞬時
に判った。
最初のシーンではスカートの丈が長い

為、泉さんの美脚も太くあか抜けない
脚に見えてしまっている。

こうしたことは瞬間的に識別して見抜い
ていないと、兵である場合、実戦の戦闘
の修羅場では
生き残れないし、与えられ
た任務も遂行
できない。
下手に武技を身に着けた識別力のない兵
ほど人の世で不要なものはない。
結局は、暴力や武力を実行する蛮族たる
兵士さえも、重要なコア部分は人間として
の「知力」なのである。
見極めがまるでできない者が害悪を及ぼす
のは、兵ではなくとも一般社会でその
傾向が顕著であることは論を俟たない。

話はずれるが、軍隊は殺人専門部隊では
ない。
しかし、軍隊の中にあって、唯一殺人者
であることのみを目的とされたポジション
がある。
それは狙撃手だ。スナイパーのみは殺人
を目的とした専門職となる。
一発で目標に着弾させて、主たる目的は
沈黙させることだ。つまり殺人。
一般軍隊では、通常野戦の300mの会敵
で乱戦になった場合、自分が撃った弾に
あたって敵兵が死亡したのかどうかなど
は判らない。
また逆もありで、隣りで10秒前まで叫ん
でいた友軍兵士が沈黙したので見たら
被弾して死亡していたということなど
は腐るほどある。
これは一般的な会敵乱戦状況での事だ。
しかし、狙撃兵だけは異なる。
確実に殺人を遂行するのが任務だ。
人間の歴史の中で、狙撃兵のみは殺人を
目的とし、殺人のみのために存在する。
軍隊の軍事行動は政治的矛盾の高度な
武力解決方法に動員される暴力装置の
実行であり、殺人は目的としていない。
だが、スナイパーのみは殺人しか目的
がない。

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