渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

研ぎ易さ ~刃物の良し悪し~

2021年07月07日 | open



サッと刃が付く。
刃物の切れ味は大きくは二つの要因に
よる。

一つは刃の高硬度。
次にブレードの断面形状だ。

しかし、私は思うに、いくら硬度が高く
切れ味が鋭くとも、研ぎにくい刃物は
「良くない刃物」なのではと感じる。
特にアウトドアナイフなどは、戸外での
簡易な研ぎやタッチアップでサッと刃が
立つような靭性粘度と適度な硬度が非常
に重要で、上級者が入念に研がないと
刃が付かないような刃物は宜しくない。
つまり、日本刀の鋼や一般炭素鋼のような
高硬度に焼き入れされた鋼材の刃物は野外
刃物向きではないのではないか、という
一つの問題意識が私にはある。

それは炭素鋼の刃物の切れ味は素晴らしい。
だが、刃物というものはあくまで道具で
あるので、状況に応じ、適宜適所で適切
に使用する事が一番刃物を活かすことで
もあるのではという問題意識が私には
働くのである。
さして高硬度ではなくとも、せめてロック
ウエルで57も出ていれば刃物としては十分
だ。

ただし、炭素鋼であっても、木を切るのみ

であるならば、北欧ナイフのプーッコに
関しては世界最高の性能を有している。
プーッコもピンキリで、1万円以内から
7万円超の物まである。予算に応じて選択
するようなナイフになってしまった。日本
では。あくまで日本では。ブームで金額
変わるから。
元々はプーッコという優れた北欧ナイフは
道具であるのでそんなに何万円もするよう
なナイフではない。高額になったのには
別な日本の商業的な理由がある。

激安アウトドアナイフのデュラテックなの
だが、サッと任意の刃が付く。狙い通りの
思うような刃先をすぐに実現できる。
こういう質性の刃物は、使う側からすると
大きなプラス要因となる。


ただし、このデュラテックはフラットグラ

インドであるので切れ込み力が強すぎる
ため、薪割りには不向きだ。どんどん切れ
込んで行って、「割断する」という楔作用
が低いのだ。薪割りに適したナイフは鎬が
低い位置に存在するスカンジやセイバーが
まず第一で、次にハマグリ刃となる。
これは体感とか関係なく、物理現象として
そういうものなので、なんぴとたりとも
否定のしようがない。
日本刀などがとてつもない切断力、割断力
を発揮するのは、鎬という物の存在により
楔作用が発生して人体を「断ち切る」から
である。それゆえ日本の刀剣は「たち」と
いう言語が一番最初にヤマトの倭人によって
付与された。タチはのちに横刀という文字
が与えられ、さらに大刀と書いてタチと
なり、さらに太刀と書いてタチと読ませる
ように変遷した。
切断力は割断力を伴うか否かでかなり性格
が変化してくるのが刃物の特性だ。

刃物は、ブレードの冶金学的質性のみでの
選択肢は不十分であり、造形後の物理的な
作用がどうであるのか、それが使用金属の
特性とどのように有機的な結合をしている
のかを見ないと、その刃物の複合的な評価
は下せない。


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