渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

タップ交換の仕方

2022年06月20日 | open
 

ブルータップ10トン締めの撞き味
がぼやけて来たのでタップ交換を
します。
 
カッターの刃(オルファ黒刃)でカット。
絶対にペンチなどでむしり取ったり
してはダメです。海外動画等にあり
ますが、乱暴すぎる。強引は駄目。
シャフトを回しながらまな板の上で
スライスカットして行きます。
まな板は私は蒲鉾板を多用。




ストンと落ちます。


今回は、細かい小技ノウハウも
紹介します。
ここからは刃物による切りに入り
ますので、ジョイントカラー保護
の為にもジョイントプロテクター
を着けます。これは必着。


シャフトの下を床若しくは椅子
やベンチ等に着けてシャフトを
安定させます。
まず、最初のタップをワンカット。


ぎりぎりの所を攻めてカットして
行くのですが、これは慣れが必要。


押し切りとシャフトの回し切りを
して綺麗に削いで行くのですが、
刃先で先角に切り込みを入れない
事が大切で、最大の注意を払い、
ここは集中してやります。


ここからは次の「切り」までは
最大限注意でなくともよい。
カッターの刃を立てて水平出し
をします。
この際、指で先角を挟むように
して、その間を指に当たるまで
丁寧にワイパーのように前後の
動きで削ります。シャフトを時々
回して360度全方向から削る。


刃を立ててシャフトを回転させる
削りも併用しますが、回転削りは
中心部が外周と円周が異なるので
削り残しの山になりやすい。
なので、前述のワイパー運動は
必須事項なんです。
これのダブルによって完璧な平面
が出せます。
極論すれば回転削りは無くても
いい。


カッターの背の真っ直ぐな線を
当てて光の漏れ等を360度から
観察してして目視で平面を確認
します。
カッターの平地を当てるのは❌。
そこは反ります。計器の役目は
果たさない。


この平面出しこそタップ交換の
命です。旋盤と同じ精度で平面を
出す。




タップ加工に入ります。
タップを選んで平面出しをする。


接着面の平面出しは、指の3点
支持でのワイパー削り。


手首は机の上に固定したほうが
安定します。

これも先角と同じく平面度をカッ
ターの刃で目視確認します。
ここもとても重要。
ペーパーこすりだけでは絶対に
平面は出ません。これは絶対に。
物理的にそうなります。外周が
過切削になる。ほんの僅かです
が。それは平面とはいえません。
時短の為にはペーパーは有効です
が、完全平面を出す為にはカッタ
ーの刃立てワイパー削りと併用す
るのが良いでしょう。

接着剤漏れの時の為にテープを
巻きますが、これは正確な作業
ができるなら巻かなくともよい。


接着剤は私は吸い込みを考慮し
て先角側に塗ります。今はシアノ
を使用していますが、シアノの
接着原則の点着けは無視します。
タップの場合はタップ残存水分
が反応するので、全面塗りによ
る接着方法が適しています。

ここで、他の人がやっていない
大切なワンポイント。
シャフトは床やテーブルの上に
ジョイントプロテクター部を押し
つけて垂直に立て、タップは接着
した瞬間に親指で強く真下に押圧
します。
そして、この時「プチッ」という
空気が抜ける音が必ずしますので、
それが聴こえれば接着の密着は
成功。聴こえなければ、絶対に
目に見えない隙間が発生していま
す。それはやり直し。
あと、いくら瞬間接着剤でも、
瞬息ではないので、しばらくは
親指で押圧し続けます。
といっても分くらい。
瞬間接着剤でも6時間置くなどと
言う人もいますが、CAの事研究
不足過ぎます。
その論でいくと、医療手術にCA
などは使用できません。

タップ接着は一発勝負です。
位置はきちんとセンターに出す事。
13ミリ径の先角に対して13ミリの
タップ接着はダメです。
14ミリを選ぶ事。必ずサイドカット
による成形と整形が必要だからです。


接着が完了したら側面をザク切り
で落として行きます。
この時、絶対にカッターの刃が
先角に当たらないように気をつ
けて作業します。


ザク切りを終えると、このように
前広がりの形になります。


これを桂剥きにして行く。
これにも要点があって、まず、
カッターの刃はこすり平面出しに
使用したのではない新品を使う事。
ここの作業は切れ味こそが命です。
人差し指の甲に先角を当てて安定
させます。刃の角度はこれくらい。
斜めによる平衡分力を利用して日
本刀の切れる原理と同じ効果を与
えて行きます。シャフトは回し、
切り手は動かさない。
要するに手動式鉛筆削りの構造を
作ってやるのです。刃はできるだ
け寝かしてから切り始める。
 
切り進むと、刃の立て具合等を
コンマミリ単位で調整しながら
完全平面を出して行きます。
絶対に刃先を切れ込みさせ過ぎ
ないように注意する。
この桂剥きがタップ交換の最大の
難所で、タップ交換は綺麗にでき
る人でも、友人にはこの桂剥きだ
けは私に依頼して来る人も何人も
いました。
彼らも出来る事は出来るのですが、
私の仕上がりの完成度を求めて依
頼して来ていました。
快く引き受けてやっていましたの
で、最初からの作業請け合いの分
も含めて、気がつけば千本近い
タップ交換作業をやって来たとい
う訳です。
 
カッターの刃による桂剥き終了。


こんな感じです。






ここからは、先輩から教えて貰った
事と私独自の工夫で考案したやり
方です。
平ヤスリによる叩き出しと削り出し。

私はニコルソンより切れるという
広島県呉市の金属ヤスリを使って
います。刀工康宏も日本刀の整形
に使用しているメーカーのヤスリ。
革製品の削りにも手際よい削りに
リニアに反応してくれます。

まず、シャフトの先角部分を握っ
て宙に浮かせます。床には絶対に
着けてはならない。


そしてヤスリで叩く。
これは撞き締めを最初から強制的
に行なう為です。即戦力タップを
作る為。
まず真上から何度も。
そして斜めに傾けてトップの円周
を何度も。
真上からでも円周からでも、数回
の叩き締めにより、良質なシャフ
トはまるで金属棒のようなキンキン
音を発します。
ただしこの叩き締めはハイテク
シャフトではやれません。
ハイテクシャフトは先角が激薄で
脆いからです。

叩き締めは先輩たちは数度のみ
でしたが、私は経験則からかなり
の数を叩き締めます。叩き締め
だけでタップのトップが丸く成形
される程に叩く。全て上方向から
の打撃で。
シャフトはキンキンいって、まる
で鋼を鍛造している時のような音
で反応します。

これは叩き締めのみでトップのRを
成型したケースの画像。タップは
ウォーターバッファロー。


ここからヤスリによる削りに入り
ます。
これは、平ヤスリを押し、シャフ
トは回します。シャフトは上から
見たら右回し。
ゆっくりと一差し一差しを確実に
削ります。ゆっくりですがリズム
と右手と左手の同調が大切。
ここは再び最大集中が必要。
撮影の為に左手は離してますが、
先角ガードの為に、左手の位置
はご研究ください。
私は先角の先端近く、かなり
タップ近くを持ちま
す。キュー先
に不正歳差運動をさせない為です。
 
削り終えたらこんな感じ。




カッターの刃とヤスリのみでここ
までの形に仕上げます。
誰でもできます。要は慣れ。
あとは、側面を微量のみ濡らして
ティッシュで摩擦磨きするのみ
です。お好みでタップトリマーの
シェーパーで軽く天辺を整える
のもあり。


側面をティッシュで磨くだけで
こう。


私はテスト撞きは自宅特設テスト
コースにて(笑
 
ブルータップではボンボンいって
いた音
が、撞くとキーンキーンと
いう音
になりました。
完全成功。全て完了。
ケースには、タップ先保護の為に
チョークを塗ってから納めます。
削り剥きした革を素の状態で例え
ケースの中だろうと曝すのは、革
には良くありません。
チョークを軽く塗っておくのが
正確です。
これは、古くからビリヤード界
では云われて来た方法です。
 
以上、手作業によるタップ交換に
ついてでした。
本当はもっと細かいノウハウが
あるのですが、今回はここまで。
 
 

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