goo

美しいフランスの田園風景と、その地方のおいしい料理の写真を撮るように依頼され、最初に訪問したのはこの国の味覚の宝庫とも言うべき14の地域だった。これらの豊富な料理を作り出した人びとの努力に報いるため、その後数年にわたって撮影に訪れたのは、あたかもそこで食事をしているような気分にひたれる写真を撮りたかったからである。われわれのよき悪い思い出――とりわけ旅の思い出がそうなのだが――は食べ物と結びついていることが多いので、五感のすべてに訴える、視覚的な映像を通して鑑賞してしていただきたいと願ってのである。 フランス人は、食事は人生の主たる楽しみの一つだ考えている。確かにフランスに滞在したことのある人なら誰でも、食物を育て、市場に出し、料理する際の配慮と心づかい、しきたりと手続きに強い印象を受けたはずだ。 フランス料理の魅力の一つは、地域ごとのおびただしい多様性にある。それぞれの地域の元独特の個性は、気候、土壌、外部からの影響、それにその地方の好みによるところ大である。例を挙げれば、栄養たっぷりの『子羊の骨付きもも肉ブルターニュ風』gigot à la bretonneや、粗挽きのそば粉の『ガレット』galettesはブルターニュの岩の多い海岸近くで味わえるだろう。洗練された牛鞍下肉entrecôte、『きのこの煮込みボルドー風』 cèpes à la bordelaise、それに上等のワインは豊穣なボルドーの土壌が生んだものだ。ノルマンディでは、『舌平目のノルマンディ風』sole à la normzndや『りんごのタルト』tarte aux pommesが、ノルマンディ特産の材料を使って作られ、シードルと一緒に出される。ブルゴーニュは素晴らしい、そして豊富な庶民的な料理がいき渡っている地方だが、『牛肉のブルゴーニュ風ワイン煮』boeuf à la bourguignonneや『若鶏の赤ワイン煮』coq au vinのような有名の料理には、ワインがよく使われている。田舎風であれ、都会風であれ、上流階級風であれ、その土地で手に入るものを巧みに生かすところに、フランス料理法の真髄がある。 この企画では幸いにも良き協力者を得ることができた。この上なく忍耐強く、しかも果断な料理研究家、ジャクリーヌ・ソルニエとともに仕事ができたことは幸運だった。ソルニエ夫人は秘伝の料理法の多く――中には始めて文字にされたものもある――を、地方の農家のおかみさんや小さな村の宿やカフェ・レストランの主人からうまく聞きだしてくれた。そして、フランスの地方料理の中で最も特色あるものの正当な料理法を豊富に集め、編集してくれたのである。 また本書はヨーロッパの食べものに関する、とりわけ博識な著述家何人かの手をわずらわしている。エイドリアン・ベイリー、アラベラ・ボクサー、キャロライン・コンラン、アラン・ダビッドソン、ナサリー・ハンブロ、ダグラス・ジョンソン、ジル・ノーマン、リチャード・オルニー、アン・ウイランといった人びとである。そのおかげでフランスの地方料理の案内書として役立つものになった。 私がこの本を献げたいと思うのは、フランスの偉大な料理人となった人びとの母親であると同時に、この国の無名な農場主や野菜つくりの農夫、漁師たちのすべてである。私が以前よりも美味を理解する写真家となれたのは、それらの人びとのおかげだから――。R.F

goo | コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

line