経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

アベノミクス・景気後退期にある可能性

2019年02月03日 | 経済(主なもの)
 災害のあった前期の反動増で高めに出るはずだった10-12月期GDPは、落ち込みを埋めることもできそうにない厳しい状況にある。そうすると、次の1-3月期次第では、景気のピークは前々期の4-6月期だったことになってしまい、今は、既に景気後退期にあるという位置づけとなる。1-3月期の成長が年率1.6%を超えて来れば、景気拡大は続いていることになるにせよ、簡単ではない。そして、景気維持の最後の砦は、消費になるが、10月には増税で着実に潰す予定だ。この国は、一体、何を目指しているのだろう。

………
 12月の鉱工業指数は、出荷が前月比+0.3となり、10-12月期の前期比は+1.9と、わずかながら、前期の減を埋め切れなかった。図でも分かるように、昨年春頃のピークを超えられずにいる。今後についても、生産予測を見る限り、良くて横バイで、低下する可能性が高い。特に痛いのは、設備投資の動向を示す資本財(除く輸送機械)が勢いを失っていることだ。長く続いた在庫の低下も止まり、上昇の兆しさえうかがえる。

 また、設備投資に先行する機械受注は、7-9月期まで増勢を保ってきたが、10-12月期は、6四半期ぶりにマイナスを記録しそうである。自律的成長は、設備投資が伸び、消費が追い、設備投資が応じる循環で進む。いったん、設備投資の伸びが止まっても、消費が持つうちは、再開の希望があるが、消費が崩れてしまえば、それも失われる。今年は、その消費を緊縮で抑制している上に、直接、増税で圧する予定であることがいかにも拙い。

 消費については、主要指標の公表はこれからだが、12月の商業動態を踏まえると、10-12月期は、前期比+0.8程の高いものになりそうだ。消費だけは、前期の減を大きく超える形である。内容的にも、景気上昇期に伸びる自動車や衣服等が好調だ。ただし、石油や生鮮の物価低下の後押しもあってのことで、今後は、1月の消費者態度指数が前月比-0.8と、3か月連続の低下になるなど不安がある。その中でも雇用環境の低下は著しい。

 実際、12月の職業紹介では、新規求人の前年同月比増加数が、災害の9月以来、3か月ぶりに、再びマイナスをつけた。労働力調査では、10-12月期の雇用者数は、前期比+5万人とどまり、増勢は明らかに下がっている。気になるのは、女性の雇用者数が、夏以降、頭打ちになっており、11,12月には低下していることだ。消費者態度や景気ウォッチャーが厳しさを増しているのには、実体的な理由がある。

(図)



………
 10-12月期のGDPについては、本コラムは、実質で前期比+0.3ほど、年率1.1%成長くらいと予想する。これはコンセンサスに近いのではないかと思う。消費が大きく伸び、設備投資も高い。ただし、災害後の回復生産で稼いだ分が多くを占め、むしろ、勢いは弱まっている。外需は、輸出が回復を見せたものの、それ以上に輸入が嵩み、大きめのマイナス寄与になりそうで、成長率を大きく下げる要因となる。加えて、公共投資は、大きく足を引っ張った前期に続き、マイナスは6期連続になると見られ、緊縮の成果がしっかり出る見通しだ。

 問題は、次の1-3月期である。反動増、物価安、ボーナス増など、消費を高めた一時的要因が抜け、地力が問われるわけだが、雇用環境の停滞を踏まえると、なかなか厳しい。輸出や設備投資でも、反動増要因の剥落があるため、多くは期待しがたい。住宅については、持家と分譲に消費増税前の駆け込みが出始めても、貸家は、融資が締まって、着工の底入れもできていない状況にある。

 おそらく、2019年度予算が成立する頃には、経済の厳しい実態が次第に明らかになって、「これで本当に消費増税なんてできるのか」となろう。そもそも、2018暦年の家計消費(除く帰属家賃)は、2013暦年の増税前水準を回復できない。他方、財政赤字については、2013暦年にGDP比-7.7%もあった一般政府の資金過不足の赤字は、2018暦年には-2.0%を切るところまで大幅に改善している。

 それにもかかわらず、まだ消費を犠牲に、緊縮を続ける様相だ。もっとも、こんなことをしている意識は、まったくあるまい。政治的な予算数字しか見ず、最新の統計データは無視されているからである。苦心の統計データも活かさねば意味がない。大隈重信が言うように「施政の結果を鑑照せざれば、利弊を知るに由なし」だ。財政整理の中で、統計の重要性を痛感し、整備に努めた故事は、未だ今日的である。


(今日までの日経)
 高齢者向け賃貸住宅 安いほど要介護者流入。日常的に医療ケア必要な子 10年で2倍。女性就業率5割超す。FRB、追加利上げ休止 資産縮小早期終了。

※ 総務省によれば、厚生労働省の統計職員数は、2009年から2018年の10年で46人減となっている。国家公務員の年収は約670万円だから、この間に節約できた人件費は、ざっと1.5億円程だろう。もし、毎勤統計のたった1人のプログラム担当者を二重にし、母数復元のミスを防いでいたら、労働保険の追加給付に必要な195億円の事務費は不要だった。少しの人件費を惜しんで巨大なリスクを犯す、やってはいけない合理化の典型だろう。


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