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経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

伸びる税収・ボーっと緊縮してんじゃねえよ!

2018年09月09日 | 経済
 これは、消費増税が不要になるほどの大きな税収上ブレになるね。今週、相次いで公表された7月税収実績、4-6月期法人企業統計、9月企業業績見通しを眺めた率直な見方だ。政治的には、消費増税は既定路線で、議論の対象ですらないらしい。財政再建が大事なら、税収の動向くらい気にすべきだろう。そこから見えるのは、路線墨守の無意味さだ。消費増税には見過ごせないリスクがあるにもかかわらず、この国は、数字も確かめずに、「空気」で決めてしまうのだろうなあ。

………
 国の税収は、7月が所得税の最大納付月であり、消費税の納付も始まる。7月分までの累計額は年間の1/6弱を占めるので、当年度の税収を予測できるようになる。2018年度のそれは、既に前年度を6500億円も上回った。最終的には、前年度決算比+4.3%で2.5兆円上回る61.3兆円になると予想される。過去最高の税収はバブル期の1990年度の60.1兆円だったから、軽く超えて28年ぶりの新記録達成となろう。予想の方法は、シンプルかつ堅実なもので、所得税は名目成長率、法人税は企業業績見通しの経常利益増加率、消費税は消費増加率、その他税は物価上昇率で伸ばし、7月分までの実績を反映しただけだ。この方法だと、所得税は少し控えめに出る。ちなみに、政府予算の税収は、決算比+0.5%の59.1兆円でしかない。

 そして、これをベースに、同じ方法で2019年度の税収を予想すると+4.3%の63.4兆円となる。さらに、単純に、弾力性1の名目成長率(2.8%)で伸ばして、2020年度の税収を計算すると65.2兆円である。これに対して、政府の税収の予想は、消費増税を前提として、2020年度は66.0兆円になるとしている。つまり、消費増税をせずとも、目標の税収に、あと0.8兆円まで迫るということだ。予想は控えめだから、その差は更に縮むだろう。裏返せば、たった0.8兆円多く得るために、前回、消費を3兆円減らし、3年も低迷させた消費増税のリスクを、再び犯すのかという話になる。

 消費増税をやめたとしても、予定していた税収と大して変わらない額が上ブレで得られるわけだから、財政再建の計画上は何の問題もない。こうなると、消費増税のための消費増税としか言いようがなくなる。もしや、消費を圧迫してデフレを呼び戻し、異様な金融緩和を続けて、資産価格を高く保ち、米国への超低利の資金供給を途切らせないためというわけでもあるまい。おそらく、そんなウラの事情もなく、ボーっと緊縮しているだけと思われる。もはや、消費増税は条件反射の「念仏」と化していて、戦略的に財政を再建する思考そのものが失われている。

(図)



………
 4-6月期の法人企業統計では、営業利益(除く金融保険)が前期比5.8%増の18.1兆円と急増した。バブル期のピークが12.8兆円、リーマンショック前のピークが14.8兆円であり、これらを大きく上回る。他方、設備投資(除くソフト)は、前期比+6.9%の11.6兆円と、未だリーマン前の13.2兆円には及ばないものの、勢いを増している。特に、製造業は、リーマン前の9割近い水準となった。4-6月期GDP1次速報では、設備投資のGDP比率が16.3%と、既にリーマン前の水準を上回っており、2次では上方修正されるだろう。

 今後の企業収益については、野村、日興の9月企業業績見通しを見ると、2018年度の経常利益の増加率は、+9.9%と+9.7%であり、2019年度が+9.0%と+7.6%となっている。2017年度の+15.3%と+15.0%という2桁増ではないにせよ、引き続き、好調に推移するものとなっている。また、2017年度法人税の増加率は16.1%であったことを踏まえれば、今年と来年についても、企業業績見通しに準じて伸びると見込まれる。企業も、財政も、大いに潤っているわけで、消費増税の後遺症に苦しむ家計消費とは対照的だ。

 その家計消費に関しては、金曜公表の7月指標は、まずまずの内容だった。家計消費(除く帰属家賃)は、消費増税直後の極端な落ち込みから3四半期後の2015年1-3月期に237兆円台になったものの、これ以降は停滞を続け、そこから脱したのは、実に9四半期後、公共事業の追加で緊縮が一時的に緩んだ2017年4-6月期のことだった。その後、再び後退し、直近の2018年4-6月期になって、ようやく戻したところである。7月は、これに連なる形となり、統計局・CTIマクロが実質で前月比+0.1、日銀・消費活動指数が同+0.4であった。それぞれ前期より+0.4、+0.3高い水準である。災害続きであるが、何とか順調に行ってほしいと思う。

………
 今度の消費増税は、軽減税率もあるから大丈夫と言われたりするが、どうやら、穴埋めに増税が検討されているようで、これでは何のための軽減なのか分からない。しかも、消費に影響の少ない金融所得課税ではないようだ。企業は最高益を更新しているが、2017年度の法人税収は12.0兆円と、リーマン前の14.9兆円に遠く及ばない。民主党政権が決めた1兆円の純減税を実行に移したことが大きな要因である。企業や財政の余裕ぶりは目に入らず、脆弱な消費を痛めつけるようなものばかり出てくる。3年の時を経て、なんとか立ち直った消費だが、税収の上ブレなど誰も気にせず、ボーっと緊縮するうちに、1年後には再び消費増税で潰される運命にある。


(今日までの日経)
 米雇用統計、8月は20万人増 月内利上げ濃厚に。北海道停電ほぼ解消へ。待機児童4年ぶり減。猛暑消費、賞与増が支え 7月家計調査。北海道地震、広域停電で被害広がる 最大震度7。関空再開、滑走路1本で まず国内線、全面復旧は遠く。自民税調会長「軽減税率に0.6兆円必要」 金融所得課税に慎重。

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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2018-11-11 19:52:53
社会保障関係費以外について、財務省は消費税増税分の予算増をそのままのフレームで飲み込む査定をかけているんでしょうね。
つまり役所の買い物についてはその行き先が税収に戻るにもかかわらず、予算増をしないで2%の緊縮をかけているわけで、こんなマヌケなシーリングはいい加減にしてほしいものです。
Unknown (Unknown)
2018-09-10 12:59:15
チコちゃん(笑

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