経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

新たな経済見通しと1996,97年の落差

2013年07月30日 | 経済
 政府の経済見通しは、実質成長率が2013年度の2.8%から、消費増税の2014年度には1.0%に落ちるというものだ。予想どおり、強気だね。第一生命は2.9%から0.4%だし、ニッセイは2.6%から0.0%だから、随分、落差が少ない。消費増税はGDP比で1.5%も家計所得を抜くわけだから、所得が減ってもあまり消費は減らないと想定したのではないか。

 日経によれば、消費増税のほか、10兆円超の緊急経済対策の効果が弱まる影響と、年金支給額の引き下げも勘案したようだから、これは評価できる。しかし、これらの大きさは、GDP比で前者は1.0%、後者は0.2%くらいだから、下押し圧力は消費増税と合わせると2.7%にもなる。それなのに、政府の見通しは1.8%しか落ちない。筆者には、第一生命やニッセイの見通しが現実的に思えるが、いかがだろうか。

 ところで、前回の消費増税の際はどうだったか。成長率は、1996年度の2.7%が1997年度には0.1%へ落ちた。家計消費は1995年度2.3%、1996年度2.5%と推移していたが、1997年度には-1.0%へと急減した。寄与度では、1997年度の+1.3から1997年度の-0.6へと1.9も下がっている。推移を見れば、駆け込みと反動より、所得減の影響が大きいと言うべきだろう。

 実は、1996年は内需が強かった年であり、寄与度は成長率を上回る2.9もあった。家計消費1.3、住宅投資0.6、設備投資0.7といった具合である。外需については、輸出は増えていたものの、それ以上に輸入が伸び、寄与度は-0.3で、成長率を下げる方に働いた。これだけ内需が強くても、2%の消費増税には耐えられなかったのである。

 ちなみに、1997年度の景気失速は、アジア通貨危機のせいにする人がいるが、1997年の輸出は8.7%も伸びていて、外需の寄与度は+1.0もあった。もし、これがなければ、ゼロ成長どころか、1%のマイナス成長に転落していたはずだ。また、大型金融破綻の貸し渋りを景気失速の理由にする人もいるわけだが、1997年度の設備投資の寄与度は+0.8で、成長を押し上げている。設備投資が落ち込むのは1998年度になってからのことだ。

 結局、1996年度は、強い内需が成長を支えた年であり、しかも、前年に阪神大震災の復旧事業があった関係で、公共事業は成長の足を引っ張る側にあった。それに引きかえ、今年度は、内需が弱く、設備投資はこれから、公共事業に補ってもらい、外需に助けられる状況だ。そこへ前回の1.5倍の消費増税である。これがいかに冒険か分かろうというものだ。

(今日の日経)
 賃金水準65歳まで維持・ヤマト運輸。実質1%成長に減速、来年度、消費増税が前提・政府見通し。新興国減速が企業に影。リスクは海外経済・日銀総裁。国債保有、ほぼ半減・三井住友銀。少子化克服へ一般社会税。経済教室・国会至上主義・野中尚人。

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