経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

スタグフレーションの影

2010年10月20日 | 経済
 通常、利上げをすると自国通貨高になるものだが、突然の中国の利上げに対して、マーケットの反応はドル買いだった。中国の景気減速の見方からだが、これほど先行きに警戒感があったとは。現実の経済は、ときどき教科書とは逆の動きをする。

 リーマンショック以降、中国は世界経済のけん引役になってきたが、限界も見えてきたということであろう。在庫回復に伴う輸出増は一服し、国内の耐久財購入の刺激策も一巡した。金融緩和に伴う不動産投資は過熱気味になっている。メインシナリオは、これまでの勢いは弱まるという程度だろうが、「潮時」を探しているというところだろう。

 米国は元高ドル安を求め、対中輸出の拡大と輸入減少による国内生産の拡大を望んでいるが、中国の景気が減速すると、仮に元高が実現しても、対中輸出が伸びるとは限らない。元高の効果は輸入防圧にとどまるから、それだけなら、為替以外の手段もあり得るわけで、米国の政策に変化が出るかもしれない。

 それにしても、インフレ懸念があるなら、元高ドル安による輸入物価の低下で対応すれば良いものを、中国の経済政策には不自然さが拭えない。輸出減による産業への打撃を心配しているのだろうが、輸出減によって資本流入を減らすことは、金融引き締めにも効果的であるように思う。

 中国の不動産投資はバブルになっているので、金融引き締めによって弾けてしまうおそれもある。中国の場合、金融不安を防ぐことは可能だろうが、不動産投資の積み上がりから言って、大きな内需の項目を失うことは間違いない。そうなれば、資本流入で食糧などの必需品のインフレは収まらないのに、不況にもなるという「スタグフレーション」になりかねない。

 日本の高度成長の終わりは、円高を阻止しようとして、列島改造ブームでバブルを作り、インフレに慌てて引き締めをしたために、しばらくスタグフレーションに苦しむことになった。どうしても、こういうことを連想してしまう。 

 欧州と米国の経済の停滞のあと、中国も減速するとなると、インドやASEANなど内需主導で成長している国だけが残ることになる。日本自身も内需を拡大しながら、こうした国々との双方向の貿易を拡大して、新たな戦略的互恵関係を築いていくことが重要だろう。

(今日の日経)
 中国0.25%利上げインフレ懸念で引き締め。外相TPP参加に強い意欲。同盟強化CSISの9提言。景気足踏みに下方修正、10月月例。地方議員年金廃止へ、負担1.3兆円。中国利上げでドル買い。北京コンセンサス・Sハルパー。英、原潜退役先送り。買い物弱者向けスーパー。東エレク、中国で生産。大機・ケインズと茶会政治と二番底。経済教室・二院制の国際比較・岩崎美紀子。

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