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経済政策と社会保障を考えるコラム


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10-12月期GDP1次・投資率と消費率で見る経済構造

2023年02月19日 | 経済
 GDPに占める投資の割合が高いほど、基本的に成長率は高くなる。したがって、成長率を高めたければ、より多くの投資をしてもらい、「投資率」を高めるというのが本来の成長戦略である。そんな経済構造の根本がどうなっているかというと、2022年は、がっくり落ちてしまった。「投資率」の残りは「消費率」なので、「消費率」が大きく上がったということでもある。何が起こったのか。

………
 2022年の名目GDPでの投資率は28.8%と前年から-2.3%の低下となり、その分、消費率は77.2%へ上昇した。投資率の水準は、一気にアベノミクス前に近いところまで落ちた。投資率を下げて消費率を上げると、成長率が低くなる経済構造になるので、ちょっと残念な結果ということになる。消費の不振をかこち、数々の成長戦略を展開している状況からは、意外に見えるかもしない。

 ただし、今回は特殊な事情がある。投資率の中身の一つである純輸出のGDP比率が前年の-0.5%から今年の-3.9%へと-3.4%も下がったためだ。これは、資源高に伴うもので、2015年には、逆のことが起こっている。これ以外の投資率の構成項目については、いわば主役である設備投資のGDP比率は17.0%へ+0.7%の上昇であり、住宅投資は3.8%で横ばい、公共投資は5.2%で-0.2%の低下だった。

 設備投資については、名目の実額の伸びを見ると前年比+5.9%であり、同じく民間消費が+5.0%であるから、伸び率も高く、消費を上回っているので、名目成長率が前年の+1.9%から2022年は+1.3%に下がったとはいえ、まずまずの回復ぶりである。他方、消費率については、純輸出が凹んだ関係で、設備投資の上昇とともに、民間消費のGDP比率が55.5%で+1.9%の上昇、政府消費が21.8%で+0.4%の上昇となっている。

(図)


………
 投資率・消費率の長期的な推移を見ると、1974年までの高度成長期と1997年までの中度成長期では、輸出が起動させ、設備投資が伸び、消費に波及して、成長が加速するという構図だった。それが1998年からのゼロ成長期になると、輸出が起動させ、設備投資が伸びても、消費への波及を遮り、成長が低迷する図式になった。投資率の向上とは、投資も消費も共に伸びる中、投資がやや上回ることで現れるものである。

 アベノミクスでは、投資率が上り坂にトレンド転換する大きなチャンスがあったが、消費増税で潰えてしまった。設備投資率そのものは、1990年代後半や2000年代半ばの水準にまで、十分なほど高まっていたのに、更なる設備投資増ばかり考えて、消費を疎かにし、GDP全体を成長させられなかった。2022年は、特殊な事情とは言え、設備投資率は、バブル崩壊後の最高になった。成長戦略の要は、消費戦略であることを再確認したいところだ。


(今日までの日経)
 中国「エネ消費」再起動。名目GDP、ドイツが肉薄。出生率3迫る「奇跡のまち」。円、一時135円台に下落。高年収の高度外国人材、1年で永住権。世界の半導体装置 減速。中国経済、進む「国進民退」。日本企業の増益率、2%に縮小。賃金上昇・安価な新技術カギ・岡崎哲二。訪日客進む消費回復 年2兆円上積みも。車生産停滞、景気回復に水。東京23区、子育て支援競う。冷延鋼板、32ヵ月ぶり下落。


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