経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の心

漸進主義で行く先に

2013年04月20日 | 経済
 政治家とは成したいことを抱いて権力を目指すものだが、権力を手にしたとき、なすべきことは、むしろ畑違いであることが多い。安倍首相は、前回の政権で「小さな政府」路線を引き継いだが、景気の回復から波及に向かう時期に、それは明らかに合っていなかった。置き去りにされた人たちが格差に敏感になっているときに、ホワイトカラーエグゼンプションを持ち出したりしていたのだから。

 保守色が強いと思っていた安倍首相が、看板になる成長戦略の第一弾で、女性活用、保育拡大を持ってくるとは、正直、意外だった。日経の大林さんが求めるような「痛みの伴う規制緩和」だったら、さもありなんというところだろう。ビジネスフレンドリーをうたいながら、女性活用だけでなく、賃上げや就活繰り下げなど、連合が言ってもおかしくないことまで、経団連に求めてきている。

 選挙対策と言えば、それまでだが、いま必要とされていること、国民が切実に望んでいることに、正面から取り組むのは悪くない。それが自らの政治信条と必ずしも一致していないとしたら、なおさらだ。やはり政治とは、どれだけ現実的かで評価される。改善のために、できることをいくつ積み上げられるかだ。保守の良さは、伝統的価値観より、漸進主義にあると考える。

………
 さて、保育について数字を確認しておこう。安倍首相は2年で20万人増やすとするが、2012年4月現在で保育所定員は224万人であるから、1割近く増やすことになる。年に10万人は待機児童数の4倍だ。ここ2年は4万人程度の定員増であったから、2倍以上のスピードである。自民党政権下では1万人台に過ぎず、待機児童数より少なかったりしたのだから、政策転換があったと評価できる。

 必要な財源は、朝日によれば、定員40万人増で、国と地方合わせて総額6000~7000億円とされ、今年度は補正予算で積んだ「安心子ども基金」から賄い、来年度は消費増税の一部を充てるという。野田政権では、消費増税に伴って、どれだけ増やすかの計画を明らかにしようとしなかったから、財政当局に対して、政治的な指導力が発揮されたと見てよかろう。少子化対策として、幼児教育無償化より意味のある使い途である。

 保育所定員20万人増は、圧倒的に不足する0~2歳児に充てられるから、保育士の雇用増は3万人以上になるのではないか。この点でも女性活用にもなるし、若者雇用の拡大にもなる。雇用が増せば、低所得ゆえに税収増は大して望めないかもしれないが、社会保険料は着実に伸び、広い意味で政府に還ってくる。実質的な財政負担は、見た目よりは少なくて済むだろう。

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 今回の成長戦略であるが、需要を拡大するという意味では、保育所定員増が最大項目ではないか。直接には年に1500億円、波及効果を考えても、その倍くらいだろう。他の項目の再生医療の規制緩和とか、国際的な医療協力に、どの程度の需要が見込めるのか、カウントしがたい。したがって、第一弾の成長戦略が成長率を引き上げるのに、大して効果があるとは思われない。しかし、それで良いのである。

 経済成長というのは、設備投資によって実現し、設備投資は需要に従ってなされる。つまり、ほとんどの設備投資は、日常の平凡な需要が決めているのであって、産業政策が創り出そうとする先端的分野の需要はごく一部なのだ。経済運営としては、産業政策の妍を競うより、財政需要をキープできずに抜いてしまうといった、稚拙な運営を避けることが遥かに大事である。 

 国民は社会保障のためなら消費増税もやむなしと思っているが、今回、明らかにされたのは、待機児童を一掃するのでも、毎年1500億円ぐらいずつ増やしていけば十分だということだ。また、毎年の年金・医療の財政上の自然増は1.1兆円くらいである。つまり、毎年、消費税を1%上げるだけで、2.5兆円の財源はできるのだから、お釣が来る。それをなぜ、1年後に一気に3%も上げて、経済に需要ショックを与えなければならないのだろう。

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 4/17のダイヤモンドO.L.で、山崎元さんが「参院選では消費税増税延期という切り札も」という評論を書いておられた。こうした議論が世間に広まってきたかと思うと感慨深い。本コラムが、そうなると指摘したのは、今年元旦の特別版だった。まあ、願いも虚しく、経済財政諮問会議は、税収の検証などの需要管理の任を果たすことなく、予想どおり財政審議会化してしまったがね。

 選挙に勝つという目的でも一向に構わない。政治とは現実なのだから、目の前の一害を取り除いていけば良い。安倍首相は「基本的に消費増税はするが、それで税収が減っては本末転倒だ」としている。これを裏から読めば、「税収増が見込める範囲でしか、消費増税はしない」となる。あの「聖域なき関税化に反対」と同じ理屈だ。行き着く先は、今日報じられているTPP交渉参加と同じだと思いたい。

(今日の日経)
 成長戦略、医療・女性軸に、児童保育2年で20万人、首相が第1弾。TPP閣僚会合で交渉参加きょう合意。就活「3年3月」を経済界受け入れ。痛み伴う矢を・大林尚。生保協会長・外債買い増し選択肢。シェールガス価格上昇。ワタミは弁当宅配を主力に。
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1 コメント

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Unknown (!!)
2013-04-22 23:05:47
プロを排除しても常連は勝てないよ!
努力もしないで文句言ってるだけって何なの?

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