経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の心

緊縮速報・財政再建トラトラトラ

2018年07月01日 | 経済(主なもの)
 6/22に公表された1-3月期の日銀・資金循環によると、財政収支の大幅な好転が見られ、基礎的財政収支の赤字ゼロ目標に、2020年度第4四半期にも到達し得るという劇的な結果であった。「ワレ奇襲ニ成功セリ、トラトラトラ」と打電したくなるほどの緊縮である。こんなことをやられては、好調だったGDPが1-3月期に失速し、マイナス成長となったことも、たまたまではないと思えてくる。 

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 日経の経済論壇では、財政再建先送りに警鐘が鳴らされているようだが、筆者は、まじめに日本の財政を心配しているので、常に最新状況をチェックしている。そこで、資金循環の資金過不足を4期移動平均で見ると、GDP比-2.8%と9年ぶりの水準に達し、改善のトレンドが年間0.6%弱のペースへ復帰していることが分かる。これを延長すると、2020年第4四半期には-1.0%まで届く。利払費を算入しない基礎収支ならゼロになるレベルだ。

 世間では、再建目標が2025年度に先送りされたとする批判ばかりである。しかし、トレンドで見ると、2021年度で達成する可能性さえ出てきている。それも、10%消費増税なしにだ。こうなると、何のために消費増税をして、需要ショックによる景気失速の危険を犯さなければならないのか分からなくなってくる。目的は財政再建であって、消費増税ではないはずで、手段を目的化してはいけない。

 他方、税収に目を転じると、日経によれば、2017年度の国の税収は、前年度比+3.3兆円の58.8兆円に急増したようだ。『中長期の経済財政に関する試算』の出発点が上がるので、自然体なら、2027年度に目標に到達するとされていたものが、2024年度には届く形となろう。もちろん、自然体に歳出改革を施せば、更に2年早い2022年度には目標に至る。2025年度に目標を置くなら、消費増税は無用でしかない。

 ちなみに、2017年度は、法人税が+16.2%の12.0兆円と、証券各社の企業業績見通しの経常利益増加率をやや上回る伸びとなり、所得税は+7.3%と名目成長率を大きく超え、消費税は+1.6%と民間消費の増加率並み、その他の税は+1.0%と物価上昇率より高めだった。そして、2018年度の国の税収について、これら基準となる増加率を基に計算すると、60.7兆円と見込まれる。法人税がリーマン前と比べて2兆円少ないにもかかわらず、過去最高の1990年度の60.1兆円を超えることは確実だ。

(図)



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 日銀はネット通販が物価を押し下げているとするレポートを出したが、物価の鈍さは、消費量そのものにあると思える。帰属家賃を除く家計消費は、実質で237.6兆円でしかなく、2年半も前の2015年7-9月期の消費増税後のピーク時と変わらず、消費増税前より4.5兆円も少ない。これだけ消費が乏しければ、需給には緩みがあると見るべきで、物価が上がらないのも当たり前でしかなく、それ以外の理由を探す方が却って不自然だろう。 

 その消費を支える雇用者報酬は、2015年7-9月期に実質で253.6兆円だったものが、現在は267.7兆円と14兆円増えてはいる。しかし、この間、中央政府+地方政府の資金過不足は、7.3兆円も改善しており、これだけデフレ圧力をかかれば、消費が弱いことにもうなづける。やたらな円安で輸入物価を高騰させるといった不幸でも招かない限り、金融緩和での物価目標と緊縮財政は矛盾する。

 アベノミクスは、国民の生活を豊かにはせず、国民をより多く働かせ、輸出を中心に経済を拡大し、財政収支を大きく改善させた。金融緩和に緊縮財政を組み合わせればこうなる。財政収支をGDP比で0.6%弱ずつ改善してきたことは、ある意味、消費税を毎年1%上げていたのと同じである。10%消費増税とは、これへの上乗せとなる。生活の向上と財政の改善がトレードオフにあることを認識した上で、サジ加減を論ずべきであろう。

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 今年の『骨太の方針』では、2040年度に社会保障給付費が70兆円増えて190兆円になるという、ビックリするような数字が示されたが、これは名目値であり、実質なら過去10年間に経験した増加ペースと変わらない程度でしかない。これについては、上智大の中里透先生がニッセイ基礎研に『190兆円の社会保障費をどうとらえるか』(6/25)というレポートを寄せておられる。先々の負担を過大に心配させ、緊縮への焦りをあおるようなことは禁物だ。

 むしろ、焦るべきは、中里先生も指摘するように、少子化に伴う現役世代の縮小によって、医療介護などのサービスに供給制約が生じることだ。問題はカネではなく実物にある。非正規への育児休業給付の実現などで出生率を改善し、次世代への人的投資を拡大しなければならない。帳尻合わせの緊縮で人的投資をケチれば、カネはあっても買うサービスがないという無残な未来になる。緊縮の緒戦の勝利は、人口激減の敗戦へとつながっている。


(今日までの日経)
 基幹3税全て増加 17年度決算3.3兆円多く、税外収入も6500億円増。経済論壇・財政再建先送りに警鐘。制約なき官邸主導・中北浩爾。ローソン、ネット宅配撤退。フリーランスに人事総務部。上場企業 実質無借金、6割に迫る。日本の製造業 為替の壁破る。債権市場、波静かなる理由。

※7/31 本コラムの「生活を豊かにせず」は、GDPの実質の家計消費(除く帰属家賃)の低迷(5年間で+1%程)を文学的に表現したものです。
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1 コメント

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Unknown (あいうえお)
2018-07-30 08:01:59
>アベノミクスは、国民の生活を豊かにはせず

100点満点には程遠いですが、不本意な形での非正規就労率や子供の貧困率などは下がってるので、持たざる者にとって以前よりはマシになってると思うのですがどうでしょうか。

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