経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

日本の反消費の非成長戦略

2021年05月16日 | 経済
 時代を超えて「消費率」は一定というのは、法則らしいものが乏しい経済学にあって、とても重要な発見だった。その裏には、投資を人為的に増やすのは困難という経済のメカニズムが隠されている。ところが、それがアベノミクスでは動いてしまい、2020年のコロナ禍では異様なほどの大きさとなった。どうして、そんなことになったのか。

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 成長を高めるためには投資を増やせば良いというのは、よくあるナイーブな発想で、今の政権でも、デジタルだの、脱炭素だのという形で取り組まれている。金融緩和、法人減税なんかも定番メニューだが、いろいろやっても、「消費率」が一定で、その残りの部分である「投資率」も一定というのなら、虚しい努力ということになる。

 これは、投資が増えると、所得が伸びて消費も加わり、比率は変わらないというメカニズムが働くからだ。逆に、消費が増えないと、企業にしてみれば、投資はしたが売上が立たず、投資を続けられなくなる。当たり前だが、成長するには、投資も消費も両方を増やさないと、経済は大きくならないということである。

 ところが、財政再建が大好きだと、投資促進の成長戦略をやりつつ、緊縮財政で消費を削るという矛盾したことをしてしまう。大概は、メカニズムが働いて失敗するのだが、例外となったのがアベノミクスであり、輸出で需要を確保したことで矛盾を解き、成長はすれども、消費はまったく増えずとなり、「消費率」が下がったのである。

 国民にしてみれば、生活が良くならないのに、何のための生産性向上の努力かということになる。それに、アベノミクスの間は、異次元緩和もあって円安が続いたが、貿易黒字の積み重ねには持続性がなく、いつ弾けて無に帰してもおかしくはない。復元性を持つメカニズムの恐るべき強力さを侮ってはならない。

 2020年の「消費率」は、前年の消費増税の抑圧で、更なる低下が予想された。ただし、輸出も下り坂にあったので、景気が悪化すれば、「消費率」が上昇する可能性もあった。実際は、コロナ禍によって、大きく下落した。勤労者世帯(2人以上)については、勤め先収入は横バイだったが、10万円給付金で特別収入が増え、前年比+4.0%を確保した。

 他方、消費支出は、食料は増えたものの、外出自粛で交通通信や教養娯楽が大きく減って、前年比-5.8%となった。結局、消費支出から食料を差し引いて実収入で除した「消費率」は、前年から-4.9%も下げる記録的な水準となった。おそらく、2021年は、特別収入が消えるため、「消費率」が揺り戻す形になるだろう。

(図) 


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 日経は、基礎収支25年度黒字化、危うい「堅持」としたが、本当に危ういのは、目標を堅持したがために急速な緊縮が進み、またも成長を阻害することである。緊縮で徹底的に反消費をしていては、投資促進をしても非成長戦略になるだけだ。緊縮の緩急は、その時々の景気の状況に応じて変えなければならない。状況を見ない硬直した財政は、却って再建を遠のかせ、誰のためにもならない。


(今日までの日経)
 投資家、適切な納税促す。緊急事態、北海道・岡山・広島も 変異型急増で転換。国内製造業3年ぶり増益。基礎収支25年度黒字化、危うい「堅持」。子ども政策、当事者目線で。


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