経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

熊本地震からの1週間

2016年04月24日 | 経済
 この1週間は、熊本地震の発生を受け、大きな政治決断が相次いだ。TPPが先送りとなり、衆参ダブル選挙はナシと決まった。加えて、今日の日経によれば、今国会で補正予算も編成されるようだ。これには少々驚いた。予備費で対応できるだろうという原稿を用意していたくらいである。あとは消費増税をどうするかになる。

………
 改めて、被災地の皆様には、心よりお見舞い申し上げる。筆者も些少ながら募金に応じ、うちの若手も支援に向かった。被災された方々にとって、その痛みや辛さは、全体の被害規模に関わらないものであるが、周囲の者は、今後を考えるために、全体状況を冷静に理解しておくことも必要だろう。

 今回の地震による被災をニュースで見ていると、いやおうなく東日本大震災を連想してしまうが、警察庁の発表によれば、家屋の被害は、全壊1500棟、半壊1400棟である。調査に連れて被害が広がるおそれはあるものの、東日本の際の全壊12万2000棟、半壊27万9000棟とは開きがある。阪神淡路大震災の場合は、10万5000棟と、14万4000棟だった。

 熊本地震に近いのは、2004年の新潟県中越地震で、全壊3200棟、半壊1万3800棟であった。このときには、災害対策費1.4兆円を含む補正予算が編成され、このうち中越地震向けは3000億円とされている。こうした例から、今年度予算の予備費が3500億円あるため、補正予算を組むにしても、秋の臨時国会と思っていた。

 昨日、日経が「首相周辺では予備費で十分対応できるとの声も」としていことからすると、政府として震災対策に取り組む姿勢を明確に示す意味もあって、急遽、補正予算を組むことにしたのではないか。幸か不幸か、TPPの審議はなくなったようなので、残り少ない国会日程の中でも、こうした対応が可能なのだろう。

 補正予算の規模がどの程度になるかは、正直、よく分からない。建物の被害だけだと、全壊を4000万円、半壊を2000万円で計算して、900億円規模である。4000万円は、平均的な住宅取得費用だ。仮に、10万人の避難者支援に、1人20万円が必要になるとしても、200億円程である。あとは、事業所やインフラの被害がどの程度かであり、昨日の日経によれば、政府の被害総額の試算は5月の連休明けに出るようだ。

 財源については、筆者の試算では、2015年度予算は、補正後から1.4兆円程度上ぶれる見通しなので、これで賄える範囲を超えないと考えている。補正予算を組むということで、すわ財政悪化と短絡的に連想しないようにしてもらいたい。毎年、決算剰余金を組み込んで行っている補正を一部前倒しで行うに過ぎない。

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 さて、3月の貿易統計が公表され、ニッセイ基礎研の斎藤太郎さんの試算ではGDPへの寄与度が0.2になるようだ。1-3月期GDPは、やはり、低いながらもプラスを確保しそうである。熊本地震の影響は4-6月期になるが、阪神でも中越でも、その期限りであった。もし、長引くようなら、それは震災で失速したのではなく、それまでの失敗で、景気そのものが弱まっているということであろう。


(今日の日経)
 電子部品4年ぶり受注減・1-3月期。熊本地震の復旧へ補正、今国会成立で調整。追加緩和に揺れる判断。
 ※名コラムニストの伊奈久喜さんが亡くなった。寂しい限りだね。
コメント
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