私は地球で楽しく遊ぶために生きている

心はいつも鳥のように大空を飛び 空に吹く風のようにどこまでも自由に

さそり座の愛~占い刑事の推理第10章

2012-11-08 13:36:36 | ミステリー恋愛小説


再び燃える秋

藤木は、携帯電話をポケットから出すと、雪子の自宅へ電話をした。
呼び出し音が数回鳴った後、声が聞こえた。「坂崎です」雪子の声だ。
「藤木です。お話したいことがあります。今からお伺いしていいですか?」
少し躊躇するような声の後「はい」と言い雪子は電話を切った。
太陽荘の前を通る時に藤木は時計を見た。六時、雄太は居酒屋に出勤している時間だ。
雪子の家のチャイムを鳴らすと、待っていたようにすぐにドアが開いた。
リビングに案内されてソファに座る。柔らかなソファの感触が心地よい。
キッチンから飲み物を運んでくる。コーラだ。
高校の時に二人で喫茶店行くと必ずコーラを注文していた。
雪子は覚えていてくれたのだ。
藤木はコーラを一気に喉に流した。ヒリヒリと喉に軽い痛みが走る。
「元気だったか?」
「なんとか生きてきたわ」
「今日は、プライベートで来たんだ。どうしても聞きたいことがある。
昔のことを思い出すのはつらいと思うけど、二人の為に答えてほしい」
「何かしら?」雪子は不安げに顔を傾けた。
「あの時、僕達が駅で引き離された後はどこにいたんだ」
「あなたと別れてから母方の故郷に行ったの」「お腹の子供はどうしたんだ」
「出産したけど、死んでしまった」
「死んだ?」
「ええ、生まれてすぐに死んでしまった」
「誰が死んだと言ったの?」
「祖母よ、生命力の弱い子供だから生まれてすぐに死んだと聞かされたわ」
「それが生きていたんだ。生きていたんだよ!」
「生きている?嘘よ。信じられない。祖母は死産だとはっきりいった」
「雪子の将来のことを考えて、死産だと伝えたんだよ」
雪子の体が小刻みに震えた。藤木が肩に手を抱き寄せる。
この後の事実を知ったら雪子はどうなるのか。実の子供が隣に住んでいる
田代雄太だと事実を知ったら、雪子の衝撃を思うとつらい。
しかし打ち明けなければならない。真実を知ってしまった自分が告白しなければ。
藤木は雪子の顔を凝視した。
藤木を不安げに見つめる雪子に藤木はゆっくりと言葉を発した。
「生まれてすぐに引き取られたという人に偶然に会えた。僕達の子供は生きていたんだ」
雪子は顔を覆い嗚咽した。
藤木はその手をほどき、瞼にやさしく接吻をした。
そして首から胸へと流れるように愛撫した。
それを追うように唇も首から乳房へと這う。藤木の繊細な指先と唇は雪子の全身を愛撫していく。
緩やかな快感の波から、何度も高鳴るうねりの中で雪子はかつて愛し合った日々を思い出す。
絨毯の上で二人の体がしなるように、重なりあう。
雪子は切なさと哀しい色の声で泣きながら果てた。
濡れた頬を指先で拭う藤木の瞳も潤んでいる。
懐かしい肌、愛おしい唇、乳房。そして・・・
この女をもう離したくない。
藤木は人生で一番愛した女の体を抱きしめながら強く思った。
やっと自分の元へ帰ってきた惚れた女を二度と離したくない。
「雪子、僕たちの息子に会いに行こう」
「えっ、居場所を知っているの?」
「うん、知っている」
居酒屋に行き、雪子に真実を告白しよう。
目の前にいる自分達の子供が田代雄太であることを告白しよう。
二人は、玄関に向かった。その時、チャイムが鳴った。
ドアを開けると、目の前に麻生が立っていた。
「麻生何故君が・・・」
「先輩、どこかお出かけですか?」
「ちょっとね」
「その前に僕の話を聞いていただけますか?」
その真っ直ぐに見つめる瞳で藤木はすべてを悟った。
この男は何かを掴んだ。決定的な何かを。
雪子が犯人だという事実を。
藤木は。直感した。

続く・・・


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