私は地球で楽しく遊ぶために生きている

心はいつも鳥のように大空を飛び 空に吹く風のようにどこまでも自由に

善人の背中 ~6~   

2017-11-15 10:54:54 | ミステリー恋愛小説
私は期待していました。いつかはキオがプロポーズしてくれるだろうと。
人生のすべてがキオ一色になっていた私にとって
キオにそっくりな赤ちゃんを生むことがすべてでした。
信じていました。何度も言いますが、惚れたら負けなのです。
惚れてしまった段階で私はキオに完敗だったのです。
心も体も生活もキオの色に塗り替えられていたことに気付くのが
あまりに遅すぎました。
キオは私の長所でもあり短所の大らかさと鈍感を瞬時に見抜いたのです。
私はキオの意のままの女になりました。
そして少しずつ私は自分の言葉を失っていきました。
私の中にどくどくと流れるように入っていたのは、キオの観念と価値観でした。
慎重すぎる避妊、気ままに求めるセックス、自由な時間に会いに来る
交際を何の疑いも感じませんでした。

ある日の昼休みの事でした。
「キオ君社長の娘とつきあっているらしいわ」
と同僚が言ったのです。
信じられませんでした。信じたくありませんでした。
私だけに向いていたと思っていたキオが裏切るはずがない、
しかし、他の女子社員も
「社長の娘じゃ私達はかなわないわ」と投げやりに言います。
事実だろうか?変わりなく寛ぐキオが私を裏切るわけがない。
しかし、会社ではキオと社長令嬢とのことで持ちきりです。
後でわかったことですが、上司の親戚との見合いは
社長の娘だったのです。
知らなかったのは私だけのようでした。
男性達は「要領のいい奴にはかなわない」とひがみを含んだ口調で言います。
もしかしたら、ほんとのことかもしれない。
私の愛は少しずつ執着へと向かっていったのです。
その日、私は、会社の向かい側でキオが出てくるのを待っていました。
会社から出てきたキオを確認すると私は後を追いました。
私はキオを尾行したのです。



続く・・・