KEIJYU's Second Short Story

圭樹の妄想にお付き合いいただきありがとうございます。

My Boy Vol.5

2018-04-27 23:17:00 | K.Black

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*****

「……ねぇ、けいじくん?」

「……あぁ」

 ベッドの海。いまだ夢の途中。手を伸ばすと、そこにはあったかくて柔らかい肌。やっぱ、若いおねえちゃんはいいなぁ。このピチピチもちもち感な、たまんねぇ。

「けいじくん? ねぇ、起きて」

「……あぁ、もうちょっと、このまま」
 
 俺の肩を揺する手を引き寄せ、その小さな身体を無理やり抱き寄せた。あったけぇ。あぁ、気持ちいい。朝からやっちまおうかな。

「ねぇ、起きて。なんか食べたい、ボク」

 俺はお前を食いたいよ。あぁ……

 ってボク? あれ、なんか顔が小さい? 足が絡まない? あれ?? 小さすぎねぇ?

 バチッ。

「わぁっ! なんだ、つかさか!」

「けいじくん、起きて。ボク、お腹すいたよ」

「あ、あぁ。ちょ、ちょっと待ってろ」

 ヤバいヤバい。あー、びっくりした!
 
 つかさの頭をくしゃっと撫で、裸にパンツのまま、キッチンに向かう。つかさと暮らし始めてから、おねえちゃんと全然遊んでないもんな。たまってんな、俺。はぁぁ。

 って、あれ!?

「っつーか、つかさ、今何時!? 今日から幼稚園じゃね?」

「んーとね、しちじさんじゅっぷん?」

「やべぇじゃん! 急げ!」

 簡単に作ったトースト、サラダ、牛乳をつかさの前に置き、俺はプロテインをイッキ飲み。

「いただきますっ」

 つかさはきちんと手を合わせて、朝食をもぐもぐ食べている。

 白いワイシャツに袖を通し、ボタンを閉める。昨日、用意しておいた黒いスーツ。ズボンをはき、顎をあげ、ネクタイを締める。色味を抑えたグレーに同色の刺繍でアクセントをつけている。結び目を整え、最後に上着をバサッと羽織り、これで決まり!

「けいじくん、今日はかっこいいー」

 食べ終わったつかさが、食器を片付けてこちらにやって来た。

「おう! いつもだ、こら!」

 笑いながらつかさに答える。

 幼稚園児の定番、スモッグに黄色い帽子、カバン、つかさの準備も万端だ。

「よし、気合いいれて行くか!」

「うんっ!」

 ピンポーン。

 ちょうど鳴った玄関のインターホン。画面を見ると、いつもの見知った顔だった。

――俺があの日につかさの事を相談したら、次の日には生活に必要なものを揃え、児童相談所からの引き取りから幼稚園入園の手続きまで全て済ませた女、佳那。

「かなちゃん!」

 つかさが嬉しそうに玄関にかけていく。

「つかさくんー、おはよう。わぁ、かわいい」

 ドアを開けた佳那が、つかさに向かって両手を伸ばした。こいつには、俺が留守の際につかさの世話を頼むために、合鍵を渡していた。それでも勝手には入らず、律儀にインターホンを鳴らすのが、こいつらしい。

 それにしてもなぁ。

「くくっ、佳那ちゃんって」

「何よ、なんか文句あるの?」

「お前、由宇より年上だろうよ。佳那ちゃんって。ひひっ。なに、無理やりちゃんづけで呼ばせてんだよ。佳那ちゃんって。ひひひひっ」

「いいでしょ、つかさくんがそう呼んでくれるんだから。ね、つかさくん」

「うん! ボク、かなちゃん、大好き!」

「もう、つかさく~ん、私も大好きよぉ。パパとはえらい違いよねぇ」

 佳那がこちらを睨み付けたあと、満面の笑みでつかさを抱き締めた。そして、つかさは佳那の胸に顔を埋めてニコニコしている。こ、こいつ、思ったよりやり手だ。誰に似たんだ、ったく。

「ねぇ、啓司、本当に行くの? 騒ぎになるわよ。私が行くわよ」

 心配そうに、眉間に皺を寄せてこちらを見る佳那。言いたいことはわかる。けどなぁ……。

「お前、それぶっさいく! ひーひひひっ 」

「は? うっさい! 人がせっかく心配してるのに!」

「ひひひっ、ごめんごめん。行く行く、俺が行く。だって、幼稚園の先生、若いんでしょ?」

「はー? あのねぇ」

「うそうそ、分かってるって。つかさの保護者として、ちゃんと挨拶したいんだってば」

 佳那のため息ひとつ。

「……先生に手を出すんじゃないわよ」

 睨みつける顔がこえぇよ。

「そんなこと、するわけ、ねぇじゃん! ねぇ、つかさ」

 つかさに助けを求めたが、きょとんとした顔が返ってきた。まぁ、分かるわけねーか。こちらを見上げるつかさの頭に、ポンと手を置く。

「つかさ、こいつの言うことは気にすんな。さぁ行くぞ。気合い入れろ!」
 
「うん! かなちゃん、いってきますー!」

 つかさが、佳那の手を握ってぶんぶんと振った。

「はい、いってらっしゃい。お友だち、たくさんできるといいね」

 佳那が、元気良い声と笑顔で送り出す。つかさをな。

 俺たち二人は玄関で靴を履き、手をつないで、同時に顔を見合わせた。

「よしっ、つかさ、行くぞ」

「はい!」

「せーのっ」

「「はじめのーだいいーっぽ!」」

――これが、俺とつかさで作った、二人の合言葉。 

*****

「……なんなんだ、これ」

 つかさの幼稚園デビュー。ちょうちょ組の教室。若くてかわいい千春先生、一緒にお遊戯しているつかさ、後ろで見ている俺。つかさもすぐに千春先生に馴染んだようで、ニコニコ笑顔で、先生と繋いだ両手をリズムよく左右に振り回している。

そして、千春先生の甘ったるい「つかさくぅん」が、教室の空気をピンク色に変える。はっきり言ってかわいい。千春ちゃんね。これはラッキー。毎日の送り迎えが楽しみだ。佳那には来させないことにしよう。

 だけど、だけどな……



「おじさん、げーのーじん?」「うそっ、しらないよ、こんなおじさん!」「えぐなんとかなんでしょー?」「らーいじーん、ってやってよやってー」「うたってみろよー」「ネスは?ネスはどこ?」

……俺の足元に群がるガキどもめ。

「ちょっと、みんな、お遊戯しましょ」

 おろおろする千春先生。構わず、俺に次々と話しかけるガキ数匹。

「えー、さんさんめじゃないのー?」「おじさん、がんちゃん、つれてきてよー」「ランニングマンやろーよ!」「せーの、ふーふーっ!」

………………


「うっせー! 黙れ!!!!」


 教室の空気が凍りつき、足に絡み付いていたガキたちが固まった。何人かは泣きそうな目をしている。千春先生は、そんなおびえたガキたちを見て、こちらを睨みつけた。

 ヤバイ、やっちまった……

 後悔してももう遅い。これからつかさの通う幼稚園なのに。これで、つかさが仲間はずれにされるかな、やべぇ。

 そんなことが高速回転寿司のように頭を駆け巡っていたとき。


 こちらをじっと見ていたつかさが、てくてくと歩いてきた。

 俺に群がっていた園児たちが、脇に避けて道を作る。モーゼか?モーゼなのか?
(ところでモーゼってなんだよ?)

「けいじくん、」

 つかさが俺のズボンをつんつんと引っ張った。見上げるつかさと目が合う。

「そんな大きな声だしたらダメでしょ。先生とお友だちがビックリしてるよ?」

 優しいながら凛とした声……そこに由宇がいた。

「お友だちにはやさしくしてください」

「あ、あぁ」

 つかさが右手を上にあげ、背伸びをする。俺は、無意識にその手に向かって頭を下げた。

「けいじくんはやさしい子」

 にっこりとしたつかさが、ようやく手が届いた俺の頭をよしよしと撫でる。

「あ、あぁ」

「いい子いい子」

 まだ俺の頭を撫でるつかさ。俺を目を閉じる。



――『啓司くんは本当は優しい人』由宇の柔らかい声。背伸びをして俺の頭を撫でる、由宇のあたたかい手。由宇に守られていた、あのくすぐったい時間――
 


「おしっ!」

 前歯を出してへらーっと笑ってみる。

「みんなで踊ってみるか? おっさんが教えてやるよ!」

 場の空気が変わった。そして、

「……おっさんじゃないよ、けいじくんだよ」

 ポニーテールの女の子がそういうと、俺に抱きついてきた。

「おっ?」

「けいじくん、すきっ」

 ポニーテールちゃんが俺の腰付近に顔を埋める。まだまだ俺もイケるな、ふっ。

「おぅ。じゃ、やるか!」

上着を脱いでそこら辺に投げ、シャツの袖をまくる。右腕の力こぶを出し、パワーを溜め込んだポーズを見せると、かわいいガキたちが歓声をあげた。そのまま、つかさに手を伸ばして抱きかかえる。

「つかさも踊るだろ?」

「うん! ボク、ママにらいじんさん、おしえてもらったもん!」

「Rising Sunな。じゃ、つかさ、お前をアシスタントに任命する!」

「あしすたんと?」

「あぁ、俺のお手伝い。みんなにそれ、教えてやろーぜ」

「うん!」

 目の前には、ひまわりのようなつかさの笑顔。ぽかぽかしてあったけぇ。由宇が一人で守り抜いた笑顔。

「あのぉ。よろしいんでしょうか」

 声のする方に顔を向けると、心配そうに、それでいて期待も混じった瞳で俺を見つめる千春先生がいた。

「あぁ、もちろんですよ! 本物が教える、らいじんさん特別講座、先生もぜひ!」

 つかさを下ろしながら、とびっきりの笑顔とガッツポーズで応えてやる。

「ありがとうございます!」

甘ったるい声でお辞儀をするかわいい先生。先生が顔をあげる寸前に、その耳元で囁いた。

「後で、LINE交換してくれたらね。千春ちゃん♥️」

 顔をあげた千春ちゃん。まんまるいお月様の目に、ほっぺがりんごのようだよ、ひひひっ。


「「「「ねーぇ、けいじくん、おどろうよー」」」」

 ガキたちが俺を急かす。わかったわかった。

「おう、みんなやるぞー、広がってー」

「「「「はーーい! 」」」」

 つかさとお友だちの声が重なる。

――これが、俺とつかさの楽しい幼稚園ライフの、はじめの第一歩。


*****



「かなちゃん、ただいまー」

「つかさくん、おかえりー。初めての幼稚園、どうだった?」

「たのしかった! お友だちもたくさんできたし。それにね、それにね、けいじくんが、みんなにらいじんさんをおしえてくれたんだよー。けいじくん、かっこよかったんだぁ」

「え? 啓司、踊ってあげたの?へぇ、たまにはいいことするじゃん」

「ねぇ、かなちゃん、らいんってなーに?」

「LINE?」

「あのね、けいじくんとちはる先生が、おでんわフリフリしてたの」

「……へぇ 」

「ちはる先生、お顔がまっかだったから、どうしたの?ってきいたら、らいんだよって。ねぇ、かなちゃん? らいんっておねつが出ちゃうの?」

「……ふーん、なるほどねぇ。けーいーじーーー!?」

「つーかーさーー!!?? 」


――これが、俺が佳那にお説教される、いつものヒトコマ。そして、それにつかさが加わった、はじめの第一歩。

Continue



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2 コメント

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けいじ・・・ (SONO)
2018-04-27 10:23:48
待ってました~
幼稚園につかさ連れて行ってまさか子供たちとRising Sun踊るとわ・・・なんかやられたような啓司くんらしいような・・・
かなちゃんに送って行かすのかと思ったけどな・・・一応つかさのパパなんだね!!由宇さんの事本気だったんだーって思った
Re:けいじ・・・ (keijyu0121)
2018-04-30 10:58:41
sonoさんこんにちは!いつもコメントありがとうございます。
子どもとたわむれるけいたん、かわいく描けてるといいんですけども。
けいたん、若い先生にデレデレしそうですよねぇ。めっちゃ想像できた😀 また、次ができましたらよろしくお願いします。

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