台湾生活-日々のともしび-

台湾と日本を行き来する日本人の目から見た、日本や台湾の日常的できごとへの個人的感想

親子-自然公園にて-

2004-08-18 14:51:24 | 台湾生活のひとこま
 夏休みは、よく子供を連れて近くの公園や大学のキャンパスなどを散策している。
 16日だったか、芝生が広いそうした公園の一つに出かけたところ、先に来ていた親子が何か騒いでいた。覗いてみると、道の上にある黒いものを囲んで、食べ物をあげたり、水を飲まそうとしたりしていた。雛が、木の上から落ちてしまったらしい。
 緑の多いところでは、人家に相当近いところでも何種類かの小鳥やリスなどの姿をよく見かける。夏だと、朝は五時前が夜明けだが、陽光がさすといっせいに小鳥たちのさえずりがはじまり、集団で餌をとりに塒から飛び立っていく。羽を休めるためか、住んでいるマンションの手摺りに止まって、啼いている様子もよく見かけた。雀はおなじみだが、椋鳥の仲間の八哥、燕、鷺など、日本より種類も多いようだ。有難くないところでは、一度、竹薮のそばを夜、歩いていて、地面に落ちていた太い竹がいきなりズズズと動き出したことがあった。青大将だったらしい。
 台湾では、野生動物もかなり身近だが、犬や猫たちの距離も近い。飼い犬、飼い猫を、放し飼いにしている家は少なくない。あちこちの大学に行くと、かならず、学生達が飼っている「野良犬」や「野良猫」がのんびりキャンパスを歩いている。ときどき野犬狩りなどで一掃されてしまうこともあるが、そうした試練に耐えて親子で住み着いている一族に出会ったこともある。ただ、犬や猫の場合は、夏の暑さで皮膚病になりやすく、見ているだけで気の毒なありさまの場合も少なくない。学生のクラブが、そうした隣人を風呂に入れて介護していることもある。
 公園に来ていた親子は、っぽい雛を世話していたが、そのうちに遊び疲れて、雛を木陰に移し、家路についた。遠慮して近づかなかった長男が、こわごわ雛に近づいて、そっと手を伸ばした。餌をやりたいと言う。少し離れて見ていたわたしもそばに行ってみた。親はどの鳥なのか分からないが、黒い羽毛に黒い嘴の雛が、じっと、していた。いつから下にいるのか分からないが、さほどの親子があげたご飯や野菜にはまったく嘴をつけていないようだ。たぶん、餌の種類が違うのだろう。
 このままだと餌がなくて死んでしまうよと息子が言う。飼ってみたい様子だった。しかし、生きた昆虫を餌にしているらしい雛を、素人が飼うのは無理だ。
 かわいそうだけど、虫を餌にあげるのは無理だよ。そばに親が居るかもしれないから、離れて見ていようと言い聞かせて、躊躇う長男を連れ、次男の乳母車を押しながら10メートルほど離れて、暫く、見ていた。あたりにはさっきから何種類かの鳴き声がしていた。親かもしれない。
 すると一羽の鳥が、雛のいる木の根元から斜め前の木の股にさっと下りてきた。そして、あたりを見回すと、わき目もふらずに、雛の居る根元へ飛び込んだ。やはり親鳥だった。間もなく、もう一羽同じ種類の鳥が、近くにとまった。
 もう一度雛をさわりたいという長男を「親子がやっと会えたんだから」と説得して、なるべく音を立てないように、車のほうへ急いだ。
 蝉の声と、他の鳥の声に混じって親子の鳥が鳴き交わすらしい鋭い声が聞こえていた。夏の午後の日差しは、辺りが暗く感じられるほど、深かった。

 長男は、黒い羽で、両側に白い羽のある鳥だと言っていた。インターネットで調べてみると、どうやら八哥の一種だったらしい。

 台北市の近くでは、大きな道観で有名な關渡に干潟があり、台北市民の野鳥観察の場になっている。が、台北市内の公園でも、緑のあるところなら、台湾に住む、かなりの野生動物を見るチャンスがある。士林にある芝山巌公園や台北市動物園付近など、台北市を囲む丘陵地帯には、木々が多く、野生動物もまだかなり残っている。
 
 關渡自然公園

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