担当授業のこととか,なんかそういった話題。

主に自分の身の回りのことと担当講義に関する話題。時々,寒いギャグ。

モジュール。

2014-11-21 23:46:40 | Weblog
Module という英単語がある。

僕の持っているイメージでは,いくつかの部品をあわせて組み立てられた装置やそれらの部品を意味する言葉である。

数学では『加群』と呼ばれる代数構造をモジュールというのだが,そういう,いくつかのものをくっつける「加法」という演算が定義された集合という意味なのかもしれない,とふと気づいた。この名称を導入したのは Dedekind あたりなのかなぁ。

・・・と思ったのだが,的外れだったようだ。例えば整数論では偶数・奇数のように,ある固定された整数で割った余りで整数全体を分類するといった手法が非常によく用いられるが,そうした手法が使えるような代数構造を持った対象のことを Dedekind はモジュールと呼んだらしい。

こういう,数学の用語の起源が気になった時には "Earliest Known Uses of
Some of the Words of Mathematics
" というサイトを参照するに限るが,その module の項目にそんなようなことが書いてあった。ただし,それは Dedekind のフランス語の著作を英語に翻訳した Stillwell 氏の推測であって,真相は不明である。
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連分数展開と電気回路。

2014-11-20 23:54:19 | mathematics
√2 の無理数性の証明に端を発して興味を持ち始めた連分数展開が,よもや電気回路の設計と関係があるとは。

やはり工学ではなんでも利用するんだなぁ。どんな風に利用されているのか,とても気になっている。
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ついに訪れたかもしれぬ。

2014-11-19 23:30:05 | Weblog
十代後半の頃は人出の多い駅などでよく声をかけられたものだが,それから久しく滅多にそういう出来事は体験していなかった。

それがここ最近,立て続けに二度も女性から声を掛けられるという体験をした。

・・・。ついに来たのではないだろうか。人生に数回あると言われる,あのモテ期が。



先週だったか,四十前後とみられる女性から「あの,よろしかったらアンケート・・・」とお声がかかった。

今日はインド系の若い美女に「ちょっとよろしいですか」といった感じのジェスチャーで道を遮られかかった。


非常に残念なことに,どちらも同じ電車の乗り換えルートの途中での出来事だったため,当方は先を急いでおり,彼女たちの誘いに応じる余裕がなく,つれない態度を取ることしかできなかった。


っていうか,人ごみの中でもトップスピードを誇る歩行速度で歩いている,見かけも敬遠されこそすれ,決して親しみやすい風貌とはいえない僕のような怪しい人間に声をかけてくるというのが全く理解できない。これは若かりし頃からの謎である。

否,むしろ怪しそうだからこそ惹きつけてしまうのやもしれぬ。
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わさび。

2014-11-18 23:24:09 | Weblog
とある丼ものを食べたとき,自由に使ってよいらしいわさびのチューブを景気よくひねってわさびをどっぷりかけたのだが,案の定辛すぎて息が止まるかと思った。

鼻の奥につーんと来たのはもちろんだが,そのせいか鼻水が出てきたのには驚いた。鼻の粘膜を刺激しただろうから今にして思えば当たり前のことであるが,辛いカレーなどを食べたときにしか鼻水が出てこないと思っていたのである。

本日学んだ真理:わさびでも辛くて鼻水が出る。
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力学の教科書。

2014-11-17 17:07:06 | Weblog
関数解析や測度論などの業績で広く知られる Banach は線形微分作用素の本だけでなく,力学の教科書も書いている。

非線形性の高い偏微分方程式の解の正則性の研究が専門分野だと思っていた Emmanuele DiBenedetto 氏も最近古典力学の教科書を出していたので驚いた。

一流の数学者ともなると力学の教科書を書くものなのだろうか。そういえば Leray もその手の本を出していたような・・・。
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夕方,鳥が集まるという現象。

2014-11-16 22:07:28 | Weblog
昨日,今日の夕方,近所の電線にムクドリとおぼしき鳥がたくさん集っているのを見た。その数は推定で三百羽ほどである。しかも,少し離れた場所の電線やら鉄塔やらにもとまっていたので,半径500m以内のエリアに千羽はいたかもしれない。

何年か前にとある駅のターミナルにある大きな樹にやはり鳥がたくさん集まって騒いでいるのを見かけたことがある。別の駅でも同じ現象があった。あれは一体何なんだろう。

ちなみに,家の近所で見かけたときは,電線にとまっている集団の周りを,数十羽の集団がぐるぐると飛行していた。集団が自分の頭上を通過するとき,心の底から願ったものだ。

お願いだからフンはひっかけないでくれよ,と。
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詳しくはどうなんだろう。

2014-11-15 13:56:19 | Weblog
卒業アルバムの写真が笑顔でない人の離婚率は笑顔で写っている人に比べて5倍高いそうだが,そもそも笑顔で写っている人とそうでない人との間の結婚率の相違は考慮されているのだろうか。

例えば40人のクラス写真で,笑顔で写っている人のうち10人が結婚し,笑顔でない人は2人しか結婚していないとしよう。

笑顔で結婚した人と笑顔でない結婚した人はどちらも1人が離婚したとする。

そうすると,

笑顔は10人中1人が離婚したから離婚率は 10%。

笑顔でない人は2人のうち1人が離婚したから離婚率は 50%で,笑顔の離婚率に比べて5倍になる。

まあ,笑顔でない人はそもそも結婚できなさそうだし,せっかくできたとしてもすぐに別れてしまいがち,という傾向があるのはもっともらしいところであるが。

ちなみに,笑顔組の中でカップルができて結婚し,その1組が離婚したら離婚者は2名とカウントすべきだろうな。こういうことを考え出すとキリがない・・・。
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やべー,目からウロコが2つほど落ちたわ。

2014-11-15 00:53:52 | Weblog
ニュースサイトに表示されていた広告を何気なくクリックしてみたんだが・・・。

http://www.eqenglish.jp/DVDbook/

なぜ英語がうまくしゃべれないのか,疑問がさっぱり氷解した。

我々は対人恐怖症らしいのである。だから気軽に話しかけられない。逆にいうと,社交性が高くて初対面の人ともすぐに打ち解けられるような人なら英語は簡単に上達するようだ。それは確かにそうだろう。

あと,自信がなくてつい小さい声でごにょごにょ言ってしまうのだが,そのせいで相手に聞こえないから理解もしてもらえない。それで自分は英語ができないとますます自信を無くしてしまうわけである。

この,

対人恐怖症



声が小さくて相手に聞こえない

という指摘は目からウロコであった。これまでの自分の体験を振り返っても,思い当たることが多すぎる。

ちょうどアドラー心理学の解説書(中野明『アドラー 一歩踏み出す勇気』)を読んでから,世界に対する自分の敵意を和らげるべく,自分の心持を変えようと努力しつつあるのだが,それは対人恐怖症を克服しようという試みであるともいえよう。

声が小さくなるというのも「あるある」である。ついいい加減にゴニョゴニョ言ってお茶を濁そうとしてしまう逃避行動は痛いほど心当たりがある。きちんとした文章をしっかりと伝えるのではなく,出だしの数語だけであとは相手の理解力についつい委ねてしまうのである。

そうか。何言っているのか自分でもわからなくて自信がなくても,毅然ときちんとした文章で伝えようとすればうまくいくかもしれないんだな。


ただ,ねぇ,実のところ,声が小さいどころか,無声,つまり何も言葉が発せなくて立ち往生してしまうのが最大の問題なんだけど・・・。それはやはりそれなりの方法でトレーニングして克服すべきところなんだろうなぁ。

今後英会話のスキルを本気で改善しようとする際に留意すべき点についてもっともな視点を得ることができたので,その広告は大変ためになった。


※ 本稿には特定の商品を人に勧めようという意図はありません。純粋に web 上で公開されている情報で衝撃的な事実を知った感動を記念に記しておきたかっただけです。少し前に有名人のステマだのなんだのが話題になったので心配になって断り書きを入れた次第です。
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【高校数学のツボ】 グラフの平行移動と拡大縮小。

2014-11-14 23:43:07 | mathematics
中学生の時,友人の家に遊びに行くと,決まって友人の父親に高校1年の数学のさわりを教わった。そのとき2次関数のグラフの平行移動について習ったのだが,全く理解できなかった。

「なんで x 軸方向に +2 だけ平行移動したのに,x を x-2 に書き換えるの?」

高校に進学した後も,高校三年間の間にその疑問が解消された覚えはない。自分できちんと考え直して納得できた気になったのは大学生活を終えようとしていた頃だったように思う。

(まあ,「x 軸方向に右に 2 だけ平行移動する」というのは -2 で,「左に 2」なら +2,という風に,意味を全く考えずに書き換え規則だけを丸暗記するというので高校数学程度なら十分にやり過ごすことができるが。)

その後,三角関数の単元でグラフの拡大と縮小の知識が必要なことに気が付いた。高校で習った当時はもちろん,その後しばらくの間そのような認識をしていなかったのである。高校時代は学校の授業で真面目に学ばなかったので,数学教師がきちんとそのことを教えてくれていたのかどうか,今となってはわからない。

ある関数のグラフを平行移動したり拡大縮小した後のグラフを表す関数がどうなるかの統一的な解説をここにまとめておく。似たような話題は過去にこのブログで何度か取り上げたことがあり,そのうちのどれかと全くかぶっているかもしれないが。

平行移動



関数 y=f(x) のグラフを x 軸方向に p,y 軸方向に q だけ平行移動したあとの曲線を表す関数はどのような式で表されるだろうか。

関数 y=f(x) のグラフ上の一点 (a,b) は、この平行移動によって点 (x,y) に移ったとしよう。このとき,y が x のどのような式で表されるかが問題であるが,いま手がかりは二つある。


<手がかり壱>
点 (a,b) は曲線 y=f(x) 上にあるから,x 座標 a と y 座標 b との間には b=f(a) の関係がある。

<手がかり弐>
点 (x,y) は点 (a,b) を x 軸方向に p,y 軸方向に q だけ平行移動したものだから,x=a+p,y=b+q の関係がある。


これら二つの手がかりを組み合わせて平行移動後の点 (x,y) の x 座標と y 座標の間に成り立つ関係式を求めたい。

我々があらかじめ知っているのは<手がかり壱>の a と b の関係のみである。

そして<手がかり弐>では x,y と a,b の関係がわかっている。つまり,a と b を仲立ちにして x と y とが結びついているわけである。その仲立ちである a と b を「消去」すれば x と y の関係がはっきりする。

<手がかり弐>から,a=x-p,b=y-q という関係がわかる。これは要するに平行移動後の点 (x,y) を逆に x 軸方向に -p,y 軸方向に -q だけ平行移動すれば元の点 (a,b) に戻るということである。

<手がかり壱>にある b=f(a) という等式に,この a=x-p,b=y-q という関係式を代入すれば

y-q=f(x-p)

という,x と y との間に成り立つ関係式が得られる。これがつまり平行移動後のグラフを表す関数に他ならない。□


拡大縮小



曲線 y=f(x) を x 軸方向に m,y 軸方向に n だけ拡大して得られる曲線の式を求めよう。考え方は平行移動のときとまったく同じである。

曲線 y=f(x) 上の点 (a,b) を移した先の点を (x,y) とおく。このとき,

b=f(a),

x=ma, y=nb

という関係式が成り立つ。二番目と三番目の式から a=x/m,b=y/n という関係が得られるので,これらを一番目の等式に代入すれば

y/n=f(x/m)

となり,拡大後の曲線を表す式が得られる。□


平行移動と拡大縮小の合成

平行移動によって,y=f(x) という式の y は y-q に,x は x-p に置き換わる。

拡大縮小によって,y=f(x) という式の y は y/n に,x は x/m に置き換わる。

上で得られた結果をこのように単なる式の書き換え操作としてとらえれば,平行移動と拡大縮小を合成したようなより複雑な曲線の変換にも容易に対応することができる。

例えば y=sin(2x-π/3) は y=sin(x) のグラフをどう加工したものなのかは,大きく分けて次の二通りの解釈がある。


<解釈その壱>

まず y=sin(x) のグラフを x 軸方向に 1/2 倍すると y=sin(2x) になる。その後,x 軸方向に π/6 だけ平行移動すると,x に x-π/6 を代入して

y=sin(2(x-π/6))=sin(2x-π/3)

のグラフになる。


<解釈その弐>

y=sin(x) のグラフを先に x 軸方向に π/3 だけ平行移動すると y=sin(x-π/3) になる。その後 x 軸方向に 1/2 倍すると,x に x/(1/2)=2x を代入して

y=sin(2x-π/3)

となる。


このように,y=f(ax-p) という形の関数のグラフは,拡大縮小後に平行移動したもの,もしくは平行移動後に拡大縮小をしたものとみなすことができる。ただし,実際問題としてはこのように二つの変換を組み合わせたものとして段階を追ってグラフの概形を突き止めるよりも,x 軸との交点の座標やグラフの頂点の座標を求めてそれらを滑らかな曲線で結ぶ方がよっぽど速く処理できるであろう。

なお,グラフの拡大縮小については高校ではきちんとした取り扱いはしていない。また、拡大縮小の議論がなぜ三角関数の単元でようやく顔を出すのかについてはそれなりの理由がある。三角関数の前に登場する関数は 1 次関数と 2 次関数,反比例の関数だけである。これらのように多項式を用いて表すことができる関数に対してはグラフの拡大縮小をわざわざ持ち出す必要がない。例えば

y=x2/4

という関数のグラフを,プロトタイプ(原型)である y=x2 のグラフを y 軸方向に 1/4 倍したものだなどと思わなくてもグラフの概形はただちに描ける。

また,x や y を定数倍しても,それらの倍率は多項式の各項の係数の中に取り込まれてしまい,x 軸方向や y 軸方向に何倍したのか,解釈が何通りも出てきてしまう。先ほどの例でいえば,

y/(1/4)=x2

とみなせば y 軸方向に 1/4 倍したものと言えるし,

y=(x/2)2

とみなせば x 軸方向に 2 倍したものと言える。さらには

y/(1/2)=(x/√2)2

のように,x 軸方向に √2 倍,y 軸方向に 1/2 倍したものという解釈も可能である。このように考えれば,どのように拡大縮小したかは解釈が無限にあることがわかるであろう。解釈の幅が広すぎるというのもかえって扱いにくいものである。


ここまで考えたので,ぼちぼち高校数学におけるグラフの平行移動と拡大縮小は卒業してもいいかな,と思っている。

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平面図形の等長1次変換:回転と鏡映。

2014-11-13 21:01:54 | mathematics
平面上の2点間の距離を保つ1次変換は,ある点の周りの回転と,ある直線に関する対称移動(鏡映)に限られる。

これは線形代数の教科書に載っているようなことだが,原点を通るどんな直線に関する鏡映変換も,適当な回転変換と x 軸もしくは y 軸に関する鏡映変換との合成で表すことができる。


そのことを理解するには移そうと思っている点の偏角の変化を分解すればよい。

原点と異なる点 P を,原点を通り x 軸とのなす角がθであるような直線 L に関して対称移動すると,点 P の偏角(線分 OP が x 軸の正の部分となす角)α は,

α+2(θ-α)=2θ-α

へと変化する。

偏角の変化が最終的にこうなるような回転と鏡映の組み合わせは,最も簡単なもので次のようなものがある。

まず x 軸に関して対称移動すると移った点の偏角は -α になる。さらに 2θ だけ原点を中心に回転すれば,偏角は -α+2θ=2θ-α になる。

原点を中心とする角 θ だけの回転を Rot(θ),原点を通る角θだけ傾いた直線に関する折り返し(鏡映)を Ref(θ) と書くことにすると,x 軸に関する折り返しは Ref(0) と表せるため,上で述べたことは

Ref(θ)=Rot(2θ)Ref(0)

という等式が成り立つこととなる。


あるいは,

-(α-2θ)=2θ-α

であることに注意すると,原点を中心に -2θ 回転してから x 軸に関して折り返してもよいこと,すなわち等式

Ref(θ)=Ref(0)Rot(-2θ)

が成り立つことがわかる。この関係式を利用すると,同じ直線に関する鏡映を2回繰り返すと元に戻ることが次のようにしてわかる:

Ref(θ)Ref(θ)=Rot(2θ)Ref(0)Ref(0)Rot(-2θ)=Rot(2θ)Rot(-2θ)=Rot(0).

ここで,回転変換の合成について Rot(α)Rot(β)=Rot(α+β) が成り立つことと,Ref(0)Ref(0) が恒等変換になることを用いた。得られた結果の Rot(0) も恒等変換であるから,同じ直線に関する鏡映を2回繰り返すと元に戻ることがわかった。

2本の直線に関する折り返しを続けて行うとどうなるであろうか。それは先ほどと同じように考えればすぐにわかる。

Ref(α)Ref(β)=Rot(2α)Ref(0)Ref(0)Rot(-2β)=Rot(2(α-β))

となり,これは角 2(α-β) の回転を一回行うことに相当する。


【補足】僕が以前自分で考えた分解は,まず -θ 回転して直線を x 軸に一致させてから x 軸に関して折り返し,+θ 回転して戻すといったものであった:

Ref(θ)=Rot(θ)Ref(0)Rot(-θ).

これはいわば

前世に戻って (Rot(-θ))
問題を修正してから (Ref(0))
現世に戻る (Rot(θ))

といったタイプの合成である。それが線形代数のテキストを見るとたった二つの変換の合成で表されていたので大いに驚いた。
後付けになるが,Ref(0)Rot(-θ)=Rot(θ)Ref(0) という交換法則を用いれば,

Rot(θ)Ref(0)Rot(-θ)=Rot(θ)Rot(θ)Ref(0)=Rot(2θ)Ref(0)

のように,3つの変換から2つの変換に減らせたのである。【補足終】


このように,鏡映変換を合成するとどうやら回転変換という別の種類の変換になってしまうようである。このことは,合成という演算について閉じている回転変換とは著しく異なる特徴である。ただしそう断定するためには,一般に回転変換を鏡映変換で表せないことを示す必要がある。それにはどうしたらよいだろうか。実は,すでに用いた Ref(0)Ref(0)=Rot(0) という関係式がここで役に立つ。

背理法で示そう。

もし Ref(0)=Rot(θ) を満たす実数θが存在したとすると,Ref(0)Ref(0)=Rot(2θ) が Rot(0) に等しいことから,2θ は整数 n を用いて 2θ=2nπと表せなければならない。つまりθはπの整数倍である。したがって Rot(θ) は Rot(0) もしくは Rot(π) のいずれかに等しいことになるが,このいずれであっても点 (1,1) は (1,1) もしくは (-1,-1) のいずれかにしか移らず,x 軸に関して折り返した点 (1,-1) には一致しない。これは矛盾である。■

実は x 軸に関する折り返しが回転変換では表せないことは回転変換の行列表示を見ればただちに了解されることであるが,わざわざもってまわった証明を述べてしまった。事のついでに,複素数を利用した証明も紹介しておこう。

x 軸を複素数平面の実軸だと思えば,x 軸に関する折り返しは複素共役を取る操作に対応する。また,原点を中心とする回転は,絶対値が 1 であるような複素数を掛ける操作に対応する。ここでは複素数 z の複素共役を [z] と表すことにする。

もし,ある複素数 w で,どんな複素数 z に対しても [z]=wz を満たすようなものがあったとすると,z として特に [w] を選べば

[[w]]=w[w]

が成り立つことになる。左辺は w に等しく,右辺は w の絶対値の 2 乗に等しいが,つまり実数 1 に等しい。したがって w=1 となるが,これをもともとの式に代入すると任意の複素数 z に対して [z]=z が成り立つこととなり,例えば z を虚数単位の i とすれば -i=i となって i≠0 に矛盾する。■


一般に鏡映変換を回転変換のみで表すことは不可能であることはわかったが,だからといって,逆に回転変換を鏡映変換のみで表すことができないとは結論できない。むしろ事実は逆である。実際,

Ref(θ)=Rot(2θ)Ref(0)

であったから,Ref(0)Ref(0) が恒等変換であることを用いると

Ref(θ)Ref(0)=Rot(2θ)Ref(0)Ref(0)=Rot(2θ)

となり,このことから原点を中心とする角 α の回転が Ref(α/2)Ref(0) という二種類の折り返しの合成で表せることがわかる。

最後に,今回明らかになった事実をまとめておく。

平面において原点を中心とする回転変換と原点を通る直線に関する鏡映変換について,

・鏡映変換を複数の回転変換の合成として表すことは一般にできないが,

・任意の回転変換は二つの鏡映変換の合成で表すことができる。


最近,空間における剛体の運動をきちんと勉強したいと思っている。剛体は伸びも縮みもしないので,剛体が受け付ける変換は等長変換のみである。空間における等長変換が平行移動と回転・鏡映の三種類しかないのかどうか調べていないが,おそらく物理的に受け付けられるのは平行移動と回転のみであり,鏡映は拒絶されるだろうという予想を立てている。このあたりの事情は幾何学の入門書で取り上げられていそうな気がするが,できれば自分の頭できちんと定式化して考えたいものである。上にとんがっている三角コーンがある時刻で急に上下が逆転して逆さまになったら,エネルギー保存則やらなんやらに思いっきり反することになるだろうことは想像に難くない。回転変換と鏡映変換との間に横たわる,上で述べたような本質的な差異が関係あるのか,それとも関係ないのか。気になるところである。
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