見積に伺い玄関に入ってご挨拶をしたのですが・・
5分間、私は玄関で立ったままご長男が振り向いてくれるのを待っていました。
その間、何度か私のほうを見ようとしてくださったのですが、ため息をついて呆然としながら室内から目を離せなかったようでした。
突然の出来事で気が動転していただけではなかったのでしょう、何か独り言を言って顔つきは怒っているようでした。
そばにいた、妹様は私に気を使ってご長男に話かけようとしてくれたのですが、兄の殺気立ったような雰囲気にただ黙っているしかなかったのでした。
お部屋は8帖ほどの和室と台所、お風呂とトイレが付いている古いアパートでしたが、床は殆ど見えず衣類や生活用品などが散乱していました。
なぜか斜めに倒れている整理ダンスが部屋の入り口を塞ぎ、ガラス戸との隙間からベットの上を踏まないと和室には入れません。
ご長男はそのベットの上に仁王立ちをして部屋を見つめていたのです。
しばらくして、ご長男が私に話しかけてくれました。
「すみません・・ふぅー・・これ全部捨てて下さいいくらくらいかかりますか?」
「はい、では今からお見積書を書かせてもらいますが、形見分けなどでお持ちになる物は御座いませんか?」
「いや、こんなものいらないよな」 そう言って妹様に言われました。
「そうね、でも何があるのか分らないから一度確認してみないと・・」
「どうせたいした物なんかないよ」
「あの・・貴重品などは作業前に私どもでもチェックしますので、もしその様な物が見つかりましたら保管してお渡ししますが、特に大きな家財や電化製品などはお使いにならないのですか?」
「お前使うか?」
「私は要らないけれど」
「俺も要らないよ、すみませんが全部要りませんので捨てて下さい」
「そうですか・・分りました」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
私は、なぜこんなにご長男がイラついているのかが不思議でしたが、少し気になっていた写真があったので妹様に話しかけたのです。
その壁に貼ってある写真は、サングラスをかけたダンディな中年男性でした。どうかすると俳優に見間違えるほどかっこよく、ベンツのような外車と一緒に写っているのです。
「この写真の方がお父様ですか?かっこいいですね!」
「はい、昔は・・・・」
そこでご長男が話しに割って入ってきました。
「親父とは、私が15歳のとき以来会ってなかったんです」
「当時、親父は会社を経営していて羽振りも良く、高級外車を乗り回していて外に女性を作って母親と離婚したんです、それから僕たち兄妹は母親と暮していたんです」
「だから今まで、父親のことはずっと憎んで・・」
「そうだったんですか」
「でも何なんでしょうかね、警察から親父の死を聞かされた時は無意識に早く行かなければという気持ちになったんですよ・・」
「しかし、この部屋を見たとたん何というか無性に腹が立ってきて」
「情けないというか・・・」
お兄様は、そう言って先にアパートを出られました。
「でも、こうやって兄妹が2人来てくれた事をお父さんは喜んでいるんじゃないかと思いますよ」
「そうですね、兄も内心は辛いんだ思います」
「当日は、立ち会ってくださいね」
「はい、兄も来ると思います」
そう言って微笑んでくれました。
少しおせっかいな事を言ってしまったような気がしたのですが、最後の妹様の笑顔を見る事が出来たのでほっとしました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
しかし、故人は天国からちゃんと見ていてくれているんでしょうかね?
いや、きっと見ていてくれているはずです。
私はこの仕事をしてそう思うようになりました。
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あの世のお父様、喜んでいるといいですね。
どんなに憎んでらしたお父上でも、せめてキチンと暮していらしたなら…。
好き勝手した父の人生の後始末をなぜ?と言う理不尽さに対する怒りや、第三者にはうかがい知れない感情があったのでしょうか。
でも、そんなお父様への気持はどうあれ、キーパーズさんの助けを得て後始末なさる依頼者の御兄妹さまは偉いですよね。
大家さんが連絡しても「そんな人とは関係ありません!」と拒絶されるケースもあったように思います。
家族崩壊が進んで、独居の個室住まいが当たり前になって行ったら、利己主義が当然の社会になったら。
孤独死して腐乱死体の散在する廃墟。
誰も片付けることなく、死人の出た家を使い捨てて、残るのは死と伝染病の蔓延する暗い未来。
三流SFのような嫌な未来にしない為にも、人と人の絆を大切にして、今をより良く暮して生きたいと思っています。
でも実際には若者も老人も一人暮らしの増えてきた昨今です。独りで解決するには手強いケースが身近にも一杯。キーパーズさんのような会社があることはとても頼もしいです。
身内の家(半壊認定の空き家)の場合、子供たちは取り壊し希望なのですが、さくさくとは進みません。
故人のお姉さまが御健在で
『弟が苦労して建てた家を壊さないで欲しい。少なくとも自分の目の黒い内は…』とおっしゃるので。
子供たちも伯母さまの言葉に逆らえず、最後に
『無期限に立ち腐れていくにまかせる事にします…』と引き下がりました。
家の中身は、一通りの家電製品や家具、病人用のベッド、そして山ほどの衣類とゴミ、ガラクタなどです。
唯、その中にその伯母さまが法事の引き出物として贈った輪島塗りのお盆や茶器セット、50枚揃えの法事用座布団セット、50客ずつの湯のみなどが混じっているはずだ、と伯母様は主張していらっしゃいます。
『高価なものがいっぱいあるはずだ、もったいない、おまえたちが(子供たちが)使えば良いのになぜ全部捨てようとするのか!』
と叱責を。
実態は雨漏りと虫食いで全部ぼろぼろになっています。
故人はご病気で防虫剤などのメンテナンスどころではなく,ゴミ屋敷状態に押し込んでいらしたので。
子供たちはそれぞれ都会暮らしなので
『そのようなものを置くスペースは無いので、全部処分させて欲しい。』
『いや、おまえたちには情がないのか!』
と話し合いは平行線でした。
自分も人生の折り返し地点を回って随分たちますので、体力、気力のあるうちにしか手伝えません。
自分の目の黒いうちには、って言われたら…。
田舎の廃屋には壊せないこんなわけもある、と言うわけで…。ためいきです。
衝撃的な内容に、わが身にも必ず来る「死」のことと、まわりの人間とのつながりについて考えさせられました。
こちらのブログも読ませていただこうと思うのですが、文字の色が薄いので読みづらいですね。
内容が内容だけに黒々とした文字にしない配慮だとは思いますが、たぶん私のような年齢の者も多く拝読しているはず、文字の大きさや濃さをご検討願えませんか?
初めての訪問で勝手なお願いを申しました。
御社の真心ある方針に感心しているひとりです。
これからも頑張ってください。
読みたい年齢の人が、読めないのは残念です。
障害のある友人のブログを見た時に文字が大きくて、ビックリしましたが「なるほど・・・・」と思い、私のブログも文字を大きくしました。
私たちが感じるのはほんの僅かですが、考えさせられる事が沢山ありますね。
人間にとって何が一番大切なのか・・・
まとめる事は、出来そうに有りません・・
なるほど・・
そんなご希望もあるでしょうね。
私もそのようなお話は、よくお聞きします。
現実を受け入れたくない方や現実が見えていない方・・
物に対する価値観の考え方はさまざまですね。
大変でしょが、そのままにしておけるのであればそうするしかなさそうですね。
いつも有難う御座います。
ご意見を参考にさせてもらいました。
少し、ブログの入力方法を勉強まして文字の色を黒にして太字に変えてみたのですがいかがでしょうか?
これからも宜しくお願いいたします
管理人様、グッジョブ!
父は本州で暮らしているようなので、なかなか会う機会もないのですが・・・。
そんな中、このようなことになった場合、私はどう思うのだろう・・・と、人事ではない気持ちで読ませていただきました。
怒りというより、情けなく、寂しい・・・という気持ちになるのかな・・・。
あ、2月になりましたが(笑)本年もどうぞよろしくお願いします。
御社の事をNHKのドキュメンタリーで知って以来、いつも来させていただいております。
先日同じようなことが身内でありました。
もう50年も前に亡き祖父と喧嘩して家を飛び出した祖父の弟が名古屋で孤独死して見つかったのです。
おじは私の家(本家)の住所をメモした紙を財布の中に入れており、連絡が来たのです。
きょうだいであるおば2人と遺骸を引き取りに行った時、簡素なアパートの部屋は小奇麗ではありましたが、おば2人は怒ったような表情をしており、特に同じ名古屋に住んでいた一番下のおばはヒステリックを起こしていました。
遺品は全て処分してもらいました。
孤独死や老夫婦揃っての病死などのニュースを耳にすることが多くなりましたが、おじいさんおばあさん子である私は辛くて悲しくてなりません。
私の住む福井県は祖父母が子供を見て両親は働きにでます。祖父母から古くからの伝承や常識を学び、年長者を敬うのが当たり前です。
都市部でもかつてはそれがありましたが、まちが都会化、アメリカナイズされるにつれて、心まで廃れているようでなりません。それが核家族化、独居老人を生んでいるのでしょう。
これから超高齢化社会に突入し、御社の仕事も増えることとなります。
管理人様が様々な困難を乗り越えて、御社が益々の発展をされることを祈ります。
ブログの更新が、遅くなってすみませんでした。。
今年も張り切って行きますので、見守っていて下さいね。。
コメント有難う御座います。
核家族化、独居老人の増加は悲しい事ですね。
ブログを通じて、悲しい最期を迎えてしまう方が少しでも減ってくれればと言う思いで書いております。
当社の発展を素直に喜べないのが現実なのです。
でも、存在を喜んで下さっている方のために頑張っていきますのでこれからもどうぞ宜しくお願いいたします。
御社の事をNHKのドキュメンタリーで知って以来、いつも来させていただいております。
先日同じようなことが身内でありました。
もう50年も前に亡き祖父と喧嘩して家を飛び出した祖父の弟が名古屋で孤独死して見つかったのです。
おじは私の家(本家)の住所をメモした紙を財布の中に入れており、連絡が来たのです。
きょうだいであるおば2人と遺骸を引き取りに行った時、簡素なアパートの部屋は小奇麗ではありましたが、おば2人は怒ったような表情をしており、特に同じ名古屋に住んでいた一番下のおばはヒステリックを起こしていました。
遺品は全て処分してもらいました。
孤独死や老夫婦揃っての病死などのニュースを耳にすることが多くなりましたが、おじいさんおばあさん子である私は辛くて悲しくてなりません。
私の住む福井県は祖父母が子供を見て両親は働きにでます。祖父母から古くからの伝承や常識を学び、年長者を敬うのが当たり前です。
都市部でもかつてはそれがありましたが、まちが都会化、アメリカナイズされるにつれて、心まで廃れているようでなりません。それが核家族化、独居老人を生んでいるのでしょう。
これから超高齢化社会に突入し、御社の仕事も増えることとなります。
管理人様が様々な困難を乗り越えて、御社が益々の発展をされることを祈ります。