月村了衛著【土漠の花】を読了しました。
行きつけのバーのマスターから借りっ放しになっていたヤツ
この月村了衛のヒトが書いた作品というのを読んだ事が一度もない上に、弁当箱サイズなんですね。
それで、なんとなく読むのを躊躇してしまったのです。
このヒト、2010年デビューで、既に“吉川英治”や“大藪春彦”なんかを受賞しています。
さて、この【土漠の花】ですが、2015年本屋大賞候補だそうで、はたまた“文春ミステリー“や“このミス”にもランクインしているとの事。
作品の感想。
■感動と興奮。いま最も評判の号泣小説!
■こんな物語を待っていた!
■自分の生き方を問われた気がした。
■こんな男たちに守られたい!!
どうやら絶賛の嵐です……………が。
う~~~~~ん……………。
そんなに良いすか?
ゾンビみたいにワラワラ出現するソマリアのテロ武装集団を、洞窟・川・村・ゴーストタウンといった各ステージで、バンバン撃ち殺すというゲームを観させられている感じなんすよ。
新開や梶谷や由利の自己犠牲は『オレの事は放っといて、先に行けぇ~!』みたいな事を言ってる映画版のジャイアンみたいで、既視感あり過ぎです。
また、由利の回想シーンがいきなりインサートされたり、それまで決断力はあるけど非情だった新開が、いきなり良いヒトになっちゃったり、全体的にストーリー展開が唐突なんです。
新開なんか『アスキラを見殺しにしよう』とか言ってたのにね。
おまけにガキと戯れるのに、竹とんぼ……………って仕置屋の市松かいっ!
あと、三人称一視点だと思ってたら、三人称多視点だったりするのも、いささか読みづらかった。
クルマの達人・泳ぎの達人・バイクの達人・合気道の達人・射撃の達人……………って【ザ・ハングマン】とか【サイボーグ009】かよ
とくに射撃の達人は凄すぎます。実戦経験皆無なクセに一発必中、デューク東郷をやすやすと超える手練。
しっかし刑事ドラマでも射撃の達人って、過去にトラウマがあって撃てなくなっちゃった、っていうプロット多いすよね。
それにしても頭にお花畑が咲いてた、たった7人の自衛隊員が、何十人いや何百人を殺しまくるってぇのはあまりにもリアリティなさ過ぎ。
銃ってホント当たんないっすよん。
一方の、ソマリアのテロ武装集団は上述した様に、ゾンビ扱い以外の表現なし。
いっさいのイデオロギーをもオミットされた、悪の組織としか描かれていません。
ラスボスを倒すシーンも、これまた既視感バリバリでした。
ラストのラブラブ・ハッピーエンドもなんだかなぁ!
この作品は、自衛隊の海外派遣の是非といった政治的・外交的内容では断じてありません。
あくまで7人のオトコたちがそれぞれの得意技を駆使し、次々襲来する強敵をなぎ倒して、お姫様を目的地まで送り届ける、というエンターテイメント。
これが現実なら、24ページ目で全員ブッ殺されてます。
その辺、間違っちゃいけないぜっ!
つまんなくはないんですが、う~~~~~ん……………。評価に困る迷作って事にしときましょう。