荻窪鮫

元ハングマン。下町で隠遁暮らしのオジサンが躁鬱病になりました。
それでも、望みはミニマリストになる事です。

誰も守ってくれないの巻。

2015年02月12日 | 偽りの人生に優れたエンターテイメントを


GYAO!にて【誰も守ってくれない】を観ました。

2009年公開・君塚良一監督・佐藤浩市主演です。

通常、刑事モノは被害者を守るのがセオリーですが、この作品は加害者家族の保護を主題としている、非常に珍しい作品。

18歳の少年が、いたいけな少女をふたり惨殺します。

その少年の妹役を演じるのが志田未来ちゃん。

強い瞳ながら不安定な感情を上手に表現しておりました。

そして、彼女を保護する刑事役に扮するのが佐藤浩市。

過去の、ある事件でミスをして男の子を死なすわ、そのトラウマ抱えて精神科にかかるわ、離婚秒読みだわ、とまぁ、てんやわんやのやさぐれデカを、さすがの安定感で演じます。

その男の子を殺された父親役に柳葉敏郎。

僕はバラエティ番組に出て『オレって面白い事言ってんべ?』って感じのギバが大嫌いなんですが、これまたさすがです。諦観ぶりなどは、実に味わい深い演技でありました。

あと、特筆すべきは佐藤浩市の同僚刑事の松田龍平。

やっぱり、優作さんの長男は良いねぇ。力の抜け加減が作品にドはまりでした。

過去の記事。
三浦しをんの巻。
三浦しをんの巻、ふたたび。




今回もっとも興味深かったのが、加害者少年がパクられた直後から加害者家族がマスコミの追及をかわすための処置を淡々と描いてくトコ。

追及から逃れるため、夫婦は一旦離婚をし、その上で妻側に夫が養子縁組をする形をとる。娘も同様。

こうした処置により名字が変わる、と。

教育委員会や家裁や区役所がやって来るトコなんかは、なかなか過去の刑事モノにないリアリティです。



一方、おや~ってトコを数点。

さすがに未成年の容疑者宅前から逮捕のニュース生中継はしねぇだろ。

シーン転換ごとに入る時刻表示は、あんま意味がない様な気がしました。

ネット住民なんかにデカを襲う度胸はないでしょ。



あと、未来ちゃんは非常に良かったのですが、実際、アニキが少女ふたりぶっ殺しといて

『お兄ちゃんだけ名字が変わらないのは嫌』とか『わたしが何でこんな目に遭うの』とかは言えないんじゃないかなぁ。

まぁそんな中、敢えて被害者側を描かなかったのは、良かった。

二律背反に陥っちゃいますもんね。



ハンディカメラをメインに使用したドキュメンタリータッチの映像は、不安定さを感じながらもリアルな情景を切り取ったと思います。



最後に。

東MAXって結構演技上手いんだなぁ、と思いました。