身近な自然となかよくblog (旧「菊名エコクラブblog」)

自然環境と調和した持続可能な社会を!

by NACS-J認定 自然観察指導員 松田 照之

失われていく種の多様性

2018年04月29日 12時22分19秒 | 6-2.思ったこと・考えたこと
植物や地面の少ないことが原因で起こるヒート・アイランドという都市や市街地特有の環境問題。
その解決策として期待されるのは、やはり緑化なのですけれども、緑化をしたからといって元の緑が戻ってくるわけではないのです。
そこに生育する様々な木々や草花などの植物から緑が構成されているのに、緑化がそれらと同じ植物で行われるわけではないからです。

元の緑を戻す方法が全くないわけではありません。
植物の移植や、植生移植という土ごと移植する方法、土に種子が埋まっていることを見込んで行なう表土移植、そしてその地域に生育している植物の種子を集めて育て植える方法など、いろいろとやり方はあるものなのです。

小さな野の草花を含めて元々あった緑を守るために、そこまで行なうケースは少ないようです。
今回の写真の場所でも、元々生育していた自然の植物たちは守られませんでした。
しかしながら、それをやっていかないと種の多様性が失われ、私たちの身近から次々と生きものたちが絶滅していくということに留意すべきではないでしょうか。


緑はそこに生育する様々な植物たちから構成されています。
・和紙の原料の一つで、初夏に橙色の綺麗な実を成らせるコウゾ
・秋になると青黒い実を成らせるツル性植物のアオツヅラフジ
・マメ科の植物で、赤い鞘から黒い豆が目玉のように飛び出る様子のかわいいトキリマメ
・長いツルを伸ばし秋に赤い実をつけるサルトリイバラ
・日本の美しい果実という意味の学名が付けられているムラサキシキブ


上の写真と同じ場所の現在。
生育地の土手が崩れる恐れがあるということで、土手に生育していた植物は一掃されました。
緑化ブロック工法(緑化用のブロックに植物を植える緑化工法)によって緑化は行われましたが、使用されたのはサツキでした。

以前の記事に書いたことの繰り返しになりますが、自然は元々、小川や池、雑木林や草っぱらなど、町なかの色々なところにもありました。
これらは元々、一まとまりの里山と呼ばれる環境で、人が自然と共存してきた場所でした。
しかし都市化、市街地化がさらに進んで行くにつれて、こうした身近な自然や生きものたちは姿を消していきました。
町に住む私たちがすっかり忘れてしまい、振り返えろうともしなくなってしまったこと。
それは自然の営みに対する畏敬の念と、自然の恵みへの感謝、そして、そこに生きる限りある生命を持った生きものたちへの優しい眼差しです。

私たち一人一人の心にそうしたものを取りもどしていこうとする意志がなければ、温暖化とか緑の減少、生きものたちの絶滅といったことに改善策を立ててもどうにもならない気がします。



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