無知は残酷だ

日本の二重被爆者で昨年の1月に93歳でお亡くなりになった山口彊（つとむ）さんを「世界で最も運の悪い男」として笑いの種にした番組を、BBCが昨年暮れに放送していたことがわかった。英国在住の邦人から指摘を受けたBBCは、「欧米人の悲惨な経験もとりあげてきた（笑い物にしているってことか？）」と回答してきたという。人種差別というレッテルを貼られたくなかったと見えるが、そういう問題ではないことを認識してない制作会社の浅はかさが恐ろしい。

日本大使館がBBCに対して行った書面の抗議に対しては、いまだ回答がないそうで、今日現在BBCのホームページにはこの問題に関する記事は掲載されていない。人の不幸を笑いものにすることだけでも、人間としての品格が問われると思うけど、非戦闘員として戦争に巻き込まれた人を笑いものにするなど、サル以下。核保有国が被爆者を笑いものにするようになったら、この世界は怖くて住めない。

ブラックジョークの国イギリスなんだから目くじら立てなくても、という人もいるかもしれない。または、公共放送でこんなことを平気で流す程度の国（そういう意味では日本も同じだけどさ）なんだから、何を言っても意味ないじゃんっていう考え方もあると思う。ただ、それは英国の側のお気の毒さまな問題なのであってあたしが関知しないところ。こういうことが起こっていると知った上で、看過するか声を上げるか、はあたしの問題だ。あたしは人の不幸をこういう形で取り上げることに激しく怒りを感じる。その激しさの半分は、なんかかんかあっても英国のことが好きだからかもしれない。「あなたがこんなことするなんて、どうしちゃったの！」みたいな。

ってわけで・・・、BBCに苦情メールを送った。自分の英語（当然英語のほうがきついのよ、くふふ）を日本語訳するのって変な感じだけど、、、

東京在住の40代日本人女性。昨年12月18日のQIをYouTubeと報道で部分的にしか見てないため、全体を把握できてないかもしれないのでご容赦を。とはいえ、山口さんを笑いものにするなど、恐ろしく不愉快で実に嫌な感じである。貴番組は世界で最も不幸な人をさらに不幸な人にしてしまった。貴殿には他人の痛みを感じる能力すらないのか？被爆者を笑いものに選んだこと自体が劣悪である。非戦闘員にして出張先の広島と長崎という両非戦闘地域で二重被爆した人を笑うなど、救いようのない鈍感な人の仕業。

ハーグ陸戦条約（ハーグIV)の付属文書第25条を参照されたし。読めば米国民が世界で最も不幸な国民と思えるようになるであろう。なぜなら、この条約に調印したものの米国政府はいまだこれを批准して拘束力ある文書にはしておらず、よってベトナム・アフガニスタン・イラクで何百万人という民間人を殺しても国際法・国内法に基づいた非難を浴びないでいられるからである。この第25条は「防守されていない都市、集落、住宅、建物はいかなる手段をもってしても、これを攻撃、砲撃することを禁じる」としている。もしもアメリカがこの文書を批准していたらば、山口さんのような人は一人も出なかったかもしれないのである。

しっかり返事も要求した。こうやって訳しながら「出演者のいでたちが超ダサかったって書きゃよかった」と反省中（苦笑）。それにしても、なんか最近あたしクレーマーみたいになってないか？いかん、いかん。