東京駅からもほど近い八重洲の名居酒屋「ふくべ」。創業は昭和14(1939)年とのこと。この店を知ったのは何でだったか思い出せないが、一度行ってみたいと思っていた。今回は少し時間が限られているが、縄のれんがかかったばかりの開店してすぐの時間にお店に行ってみた。店は縄のれんをくぐって引戸を開けると左側がカウンター席、右側がテーブル席。ずらりと並んだ一升瓶と杉樽が目を惹く。店の壁や柱はいい感じに年月を重ねていて、もうその佇まいだけで名店間違いなしという感じ。主人にどちらでもと言われたので迷うことなくこじんまりとしたカウンター席へ。
杉樽に目を奪われていたので、お酒はもちろん樽酒(菊正宗)をぬる燗で注文。ラッキーな事に今日が口開けだという杉樽から升を使って丁寧に計って徳利に移され、燗をつけられる。もうこの主人の手慣れた所作を見ているだけで嬉しくなってしまう。つまみにはぬたを注文。杉の香りが移った樽酒は温度といい、味といい、つまみとの相性といい、文句なしの100点。ここは他にも色々なお酒が揃っていて、純米だとか吟醸だとかっていう今風の選択肢もあるが、本醸造の揃えが多いのが老舗らしい。でもどれを飲んでもこの樽酒と絶妙な燗つけに勝てるとは思えない。次に予定が入っているのが恨めしい。本当はこの店の名物というくさやを食べてみたかったが…残念。
若造の自分にもしっかりとわきまえて丁寧な言葉使いで話をする主人はとても気さくで、店構えから若干緊張していた自分もすぐに居心地が良くなった。老舗の名店と呼ばれる店を若造なりに結構な数体験してきたが、今でも人気が続く店のほとんどは、ここの店のように本当に謙虚で、物腰も丁寧だというのが自分の印象だ(もちろん中には例外もある)。
この日は他の客も交えて、取材を受けたテレビ東京の人気番組「アド街ック天国」(11月9日放送分)の撮影裏話が聞けて楽しかった。なんとほんの数分の出演に対しての取材、撮影時間は5時間以上とか。しかも店に居た客の全てから出演許可をもらうが、許可が貰えない客が1人だけあって、後日もう一度撮影だったんだとか。へぇー。
まだ4時半過ぎというのに次から次へと客が入ってくる。常連らしき人もいれば自分のような一見客もいるが、もちろん主人の対応は変わらない。滞在時間は短かったが、この店の良さの一端を感じられたのは嬉しい。絶対また来るぞ。(勘定は¥1,500程)
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東京都中央区八重洲1-4-5