カズさんの旅たび

 ~歴史、文化、芸術、美食紀行。。

スペイン・ラ リオハ

2013-03-01 | スペイン(バスク)
ラ リオハ州(La Rioja)の「サント ドミンゴ デ ラ カルサーダ」(Santo Domingo de la Calzada)にやってきた。この地は、サンティアゴ デ コンポステーラの巡礼路の途上にあり、ブルゴスからは70キロメートル東側に位置している。そして、更に50キロメートル東側は、ラ リオハ州の県都ログローニョで、こちらを見学後に向かうことにしている。


サント ドミンゴ デ ラ カルサーダとは「道路(カルサーダ)を造る聖ドミンゴ」の意味を表している。聖ドミンゴは、1019年に羊飼いの息子として生まれている。彼は、この地に流れるオハ川に橋を架け、森を切り開き、敷石を敷き巡礼者のために30キロメートルもの道を一人で造り上げ、巡礼者のために施療院を建てたと言われている。

東西に伸びる「マヨール通り」を東へ向かうと「サント ドミンゴ デ ラ カルサーダ聖堂」と鐘楼前に到着する。右側の建物が聖ドミンゴにより造られた救護院で、現在はパラドール(国営ホテル)になっている。
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建物を右に回り込むと広場があり、その広場に面して「パラドール」の入口がある。


パラドールとは、スペイン、プエルトリコなどスペイン語圏にある、美術的価値のある古城、宮殿、修道院などを改装した比較的高級なホテル チェーンを指している。

マヨール広場からの聖堂は、工事中だった。1106年にドン ペドロ ナザール司教によって奉献され、参事会教会となった1158年頃に現在の教会の姿となり、1232年に大聖堂となっている。広場の正面は南翼廊のポータルになる。マヨール通りはポータル前を通って東方向に延びている。マヨール通りの南沿いに鐘楼が単体として建っている。
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鐘楼は1767年から1769年にかけバロック様式で建てられた。現在の鐘楼は、三代目の塔で、初代はロマネスク様式で建てられ、1450年に火事で焼失し、二代目はゴシック様式で建てられたが崩壊の危機に瀕し解体されている。鐘楼に上ろうと意気込んだが、シエスタで午後4時までは休みだった。

この日の大聖堂は工事中だったことから、ウィキメディアの画像を貼り付けた。2連アーチのあるポーチ上のリンテルに建つ3聖人像の内、中央が聖ドミンゴである。入口となる南翼廊の左側が幅広いのは、室内に無原罪の礼拝堂があることによる。
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画像出典:ウィキメディア・コモンズ (Wikimedia Commons)

鐘塔のそばには「顔出し看板」が置かれている。鶏を抱えているが、これは、無実により死刑になった息子を残して巡礼を達成した父が再びこの地に戻った際、その息子が蘇えるきっかけとなったと言う聖ドミンゴの「鶏の奇跡」を表わしている。この地では、鶏が幸運のシンボルとなっている。


鐘楼の右隣で、サント ドミンゴ デ ラ カルサーダ聖堂と広場を挟んで向かい合う様に、小さな教会「ビルヘン デ ラ プラサ教会」(Ermita de la Virgen de la Plaza)が建っている。聖ドミンゴが作った古くて質素な礼拝堂の上に15世紀に建てられ、シトー修道会の僧院として使用された。聖母マリアに捧げられ、1710年に改装され現在の姿となっている。
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鐘楼が開館するまで、時間をつぶそうと教会右側にある路地を南に向かう。
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50メートルほど先の左側に営業しているベーカリーショップ(El Buen Gusto)があった。
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小腹が空いたので、店内で、巡礼者のシンボル帆立貝をあしらったパイ生地のコンフィチュールを食べながらコーヒーを飲んだ。


食後、再び広場に戻ると、開館していたので階段を上り鐘室まで上った。最上部の尖塔を支える8本のアーチの間に、1メートルほどの高さの鐘がそれぞれ、計8基取り付けられており、その周囲の欄干を取り付けた狭い通路から360度の眺望を楽しむことができる。
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鐘楼は、高さ70メートル、底辺9メートルで、ラ リオハでは最も高い塔である。ところで、聖堂の本体から分離され独立した塔は、スペインでも数少ない例の一つとのこと、単体設計の理由は、砂質の土壌で、教会と直結する場所に堅固な基礎を作ることができなかったためと言われている。

こちらは東側の眺めで、これから向かうログローニョ方面になる。街並みはすぐ先で途切れ、平原が続いている。ピレネー山脈までは150キロメートル以上あるので、この場所からは山並みを確認することはできないようだ。
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こちらは西側で、ブルゴス方面の南西側にイベリコ山系の山並みが見える。イベリコ山系とはイベリア半島北東部の山系で、南東側から北西側のブルゴス手前まで連なっている。
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マヨール通り沿いにホタテ貝の東への矢印案内があったので、向かってみる。ホタテ貝は、サンティアゴ デ コンポステーラの巡礼路を歩く巡礼者のシンボルを示すもの。聖ヤコブ(サンティアゴ)が持つ杖にホタテ貝が付いていたことや、聖ヤコブの生家が漁師でホタテ貝を家紋としていたなどを由来としている。


ホタテ貝を掲げている建物は、巡礼者に一夜の宿を提供してくれる「アルベルゲ」(巡礼宿)であることを示している。こちらは、 巡礼者のための無料宿泊所「聖ドミンゴ信徒協会」(Casa de la Cofradia del Santo)」で、先には観光案内所もある。


時刻はまもなく午後6時になるのでログローニョに向け出発した。途中、サント ドミンゴ デ ラ カルサーダから北東に25キロメートルほど行ったエブロ川沿いのブリオネス(Briones)村の外れに、リオハ ワインのディナスティア ヴィヴァンコ (Dinastia Vivanco)のワイナリーとワイン博物館がある。スペインワインで高級ワインの代名詞といえばリオハ ワイン。こちらのワイナリーは2004年完成の近代的な施設だがワインは伝統的な製法で作られており近年人気が高いという。
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ホテルは、街の中心部から北側のエブロ川沿いの「ホテルF&G ログローニョ」にチェックインをした。その後、歩いて旧市街を散策し、午後10時過ぎ、ホテル近くのリストランテ(Tapelia)で遅めの食事を頂く。


店内は、時間が遅いこともあるのか、大変空いていた。
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少し不安があったが、サラダ、クロケータ(コロッケ)、魚介のパエリアを頼んだが、パエリアは、旨味が良く出ており大変美味しかった。


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朝8時、ホテルF&G ログローニョ(Logrono)の部屋から外を眺める。ホテルは、五差路のラウンドアバウトの角地にあり、北向きの道路がピエドラ橋となる。ホテルは、エブロ川沿いから離れているが、部屋から向かい側の建物を見ない様にすると、なかなかの眺望だった。
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半円形アーチが並ぶ石造りのピエドラ橋は、19世紀に建造されたものでログローニョの観光名所の一つである。初代の橋は11世紀に建設され4連アーチに3つの防御タワーがあった。エブロ川は、カンタブリア州フォンティブレを水源とし、カタルーニャ州のエブロ デルタで地中海に注いでおり、全長は930キロメートル、イベリア半島ではタホ川に次いで2番目に長い川である。

最初に、街のランドマーク、「サンタ マリア デ ラ レドンダ準司教座聖堂」(Concatedral de Santa Maria de la Redonda)に歩いて向かう。ホテルからは南西方向に直線距離で500メートルの距離にあり、東西に伸びるポルタレス通り(Portales)沿いにある。この通りは、旧市街中心の華やかなメインストリートで、サンティアゴ デ コンポステーラの巡礼路でもある(ログローニョ~サンティアゴ デ コンポステーラ間は、約600キロメートル)。通りを歩くと、すぐに前方右側に巨大な尖塔が見えてきた。
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前身の教会は12世紀に建てられたが、その後何度か改装が行なわれた。外観はバロック様式をもつ15世紀末のゴシック建築である。ポルタレス通り沿いにある聖堂側面に、入口があり、その上部には、聖母像が飾られている。
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聖堂内の主祭壇は17世紀のもので、中央に聖母子像が、上部には磔刑像が祀られてる。
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聖堂内を見学後、ポルタレス通りを西に歩き、すぐ右手のメルカド広場から振り返ると、


バロック様式のツイン タワーが空高く聳えている。この聖堂の2つの塔は18世紀に建造された。1610年には、この聖堂前の広場で、6人の魔女達が火炙りにされたと言う記録が残っている。
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ここログローニョでは、ラ リオハ州の守護聖人であるサン マテオ(聖マタイ)の日(9月21日)の前後がブドウの収穫期にあたることから、毎年、収穫を祝う祭りが1週間、盛大に催されている。祭りは、旧市街のポルタレス通りを中心に民族舞踊、パレード、各種コンサート、花火大会など様々なイベントが行われる。サン マテオ祭の初日には、豊かな恵みに感謝をして、男性が裸足。。で行う「ブドウ踏み(El pisado de la uva)」が行われ、その最初の果汁を守護神バルバネラ女神(Virgen de Valvanera)にささげる行事が行われる。
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画像出典:ウィキメディア・コモンズ (Wikimedia Commons)

聖堂前のメルカド広場では、リオハ ワインのフリーサービス(試飲)があり、多くの人が群がっていた。世界第3位のワイン生産量を誇るスペインだが、中でも特に上質のワインを提供するリオハ ワインは世界的にも評価が高い。
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こちらでは大ガマでパエリアを作って提供してくれるようだ。
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パエリアが炊き上がりスタッフが合図をかけると、おもむろに観光客が群がってくる。いただいてみたが、昨夜リストランテで食べたパエリアがあまりに美味しかっただけに、申し訳ないが、評価がやや下がる。


しばらくすると軽快な音楽が聞こえ、4メートルほどの背丈のあるヒガンテス(巨人)人形のパレードが始まった。
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バスクの民族衣装に身を包んだ独特な表情をしたおじさんヒガンテスが回転しながら現れたのには、多少引いた。。
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ヒガンテスの周りには、カベスドス(大頭の小人)(こちらも多少引き気味になる。)が自由に歩きまわり愛想を振りまいている。


子供向けに、かなりグロいデザインのアトラクション(滑り台)なども設置されているが、子供たちには抵抗がないようだ。


ホテルまで戻り、こんどはピエドラ橋の手前をエブロ川に沿って東方面に歩き、闘牛場に向かう。
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500メートル歩いた所に「ラ リベーラ闘牛場(Plaza de Toros de La Ribera)」がある。この闘牛場は開閉式のドームもあり2001年オープンの新しい施設とのこと。
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それでは闘牛ショーの一連の流れを見ていく。最初に羽根を付けた主催者がサン マテオ祭を祝って挨拶し、その後、闘牛士を先頭に、本日の出演者が入場し、観客の声援を受けながら行進する。その後ショーがスタートする。3人の闘牛士が2回づつ、計6頭の牛を相手にする。まず、見習い闘牛士の「スバルテルノ」がピンクの布(カポーテ)を持って登場する。
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次に、ロデオスタイルの「ピカドール」が馬上から長槍を投げて牛に刺す。この槍で刺されると血が大量に出るので残酷な印象を感じる。。
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その次に、「バンデリジェーロス(銛打ち)」が2人登場して、短い槍を計6本、牛の背中に刺す。
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最後に、拍手喝采を受け、真打「マタドール」が赤い布(ムレータ)を携えてさっそうと登場する。マタドールは技を駆使し突撃して来る牛の角を紙一重でかわすと、観客は一斉に「オレ」の掛け声を上げる。そして剣を急所に刺してとどめを刺すと、観客は総立ちになり白いハンカチを振ってマタドールの技に拍手喝采する。
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マタドールは観客の拍手喝采に手を上げ答え闘牛ショーは終了する。
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隣に座っていた常連客っぽいお兄さんは、「ボタ デ ヴィーノ(Botas de Vino)」を勧めてくれた。山羊の皮袋の水筒に入ったワインで、飲む際は、出来るだけ顔から離して口に流し込むのが流儀とのこと。下手な手つきに見かねてか、何度もご教示してくれた。その後は、旧市街のバルを梯子してタパスをつまみにリオハ ワインを満喫し、一日を終えた。
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こちらは、ピエドラ橋を渡ったエブロ川左岸から、南側の旧市街を眺めた様子で、橋の袂に建つ4階建てが、2泊した「ホテルF&G ログローニョ」になる。その右隣に見える塔は、12世紀にまで遡るログローニョで最も歴史ある「サン バルトロメ教会」で、右端の尖塔は1130年にカスティーリャ王アルフォンソ7世が自らの宮殿として建てた「サンタ マリア デ パラシオ教会」(Iglesia Santa Maria del Palacio)になる。今朝のエブロ川は穏やかに流れており、見ていて癒される。
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これで、ログローニョとはお別れになる。エブロ川の左岸に沿って延びる国道を西方面に進むと、まもなくブドウ畑の広がる田園地帯が現れる。
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リオハ ワインの産地はラ リオハ州、バスク州アラバ県、ナバーラ州の3つの行政地区にまたがっており、ブドウ栽培地としては、リオハ アルタ、リオハ アラベサ、リオハ バハの3地区に分かれている。
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ここは、リオハ アラベサ地区の「エル シエゴ村(Eltziego)」にあるリオハ最古のワイナリーとされる「マルケス デ リスカル」になる。酸味がしっかりした、エレガントな味わいが特徴のワインで、中でもスペイン王室御用達の長期熟成を得た赤ワインが有名とのこと。敷地内には1858年創業のワイン醸造所と、グッゲンハイム美術館(ビルバオ)を設計したアメリカ人建築家フランク ゲイリーによる銀色に輝き波打つ屋根が印象的なホテルがある。ミシュラン星付きのレストラン、スパ、ホールなどの施設も完備されており、多くの有名人も訪れる。
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次に、ログローニョから東に40キロメートル行った、サンティアゴ デ コンポステーラ巡礼路沿いの「イラチェ村(irache)」に寄った。巡礼路が通る村には、巡礼者に一杯のワインを提供する「ワインの泉」がある。ここは「イラーチェ酒造」(bodegas irache)による奉仕事業で、工場の壁面を利用し、巡礼者に無料でワインと水を提供している。
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ワインの泉は、サンティアゴ通りと名付けられた通り沿いの開錠された鉄柵の奥にあり、誰でも気軽に入ることができる。壁面には、帆立貝のデザインがあしらわれた蛇口が2つある。向かって左がワインで、右がアクア(水)と表示されている。コップは置かれていないため、コップは持参する必要がある。


味はヌーヴォーを思わせる出来立てワインで、やや酸味が前面にでている印象だった。有難く頂戴したが、利用する人が多かったことから、この善意の奉仕がいつまで続けられるのだろうかと少し心配になった。。イラチェだけでなく、巡礼路が通る町や村には巡礼事務所や、食事等も提供される無料の宿泊所があるが、実際のところ、地元の多くの人々の奉仕で成り立っているのが実情と言われている。
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(2008.9.22~24)

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