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透析しながら考えた事、感じた事。内部障害者として、色々な障害者,マイノリティの人とお互いに情報発信したい。

読書『僕の妻はエイリアン 「高機能自閉症」との不思議な結婚生活』

2009-09-21 01:01:24 | 障害
僕の妻はエイリアン 「高機能自閉症」との不思議な結婚生活
泉 流星
新潮社

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 高機能自閉症やアスペルガー症候群は、知的障害がないものの、生まれつきの脳の機能障害による発達障害と考えられている。もちろん、個人によって様々なタイプがあり、一つの概念でまとめることは難しい。ただ、社会性の問題(人の気持ちや場の状況を読めず、人とうまく関わることが困難)、コミュニケーションの問題(人と心を通わせ、スムーズに意思疎通することが困難)、こだわりや常動行動の問題(特定の物事に強い執着を示し、常に行動パターンを守った生活を好む)が自閉症の特徴とされている。
 外見からは、「障害」が見えないために、わがままな性格だとか、しつけが悪いなど等の周囲の誤解を招くことが多い。
 技術者のサラリーマンの夫と、大学で言語学を学んだ妻は、結婚当初から、喧嘩が絶えなかった。結婚して妻の尋常ならぬ言動に気付く夫だったが、当初はそれが妻の個性としか理解できなかった。
 妻をエイリアン(異星人)と受け止める地球人の夫も視点から観た夫婦の軌跡が、本書に描かれている。地球人と異星人は、お互いに思考法も感じ方も違う。それぞれが異文化に暮らす。(この概念は、発達障害を理解するうえでは有効かもしれない。お互いに異文化の世界に暮らすのだから、相互の歩み寄りが要求される。異星人は、多数派の地球人の世界に暮らす生きづらさを子供の時から感じているはずだ。だから、自分なりに、周囲に合わせようとする努力や工夫をしてきたが、もともと異世界に生きる者なので、完全に同調することは困難なことである。ただ、その地球人に合わせようとしてきた部分は評価すべきであろう。)
 妻が発達障害と診断されたのは、実に結婚してから8年近く経ってからである。それまでの、夫婦間の葛藤から、妻はアルコール依存症で、肝臓を悪くして危篤状態に陥った。夫は、その時に初めて事の深刻さに気付くのだが、このまま妻が死んでしまえば、楽になるという考えをその時に浮かぶほど、夫婦間の関係は崩壊寸前であった。大人になってから、初めて発達障害の診断を受けた者に対処してくれる医師は少ない。最初に、自閉症ではないかと気が付いたのは妻であり、また、大人の発達障害に対処してくれる医師を探しだしたのも妻である。

 自閉症は、自閉症スペクトラム、あるいは、広汎性発達障害と理解されている。いわば、その程度において連続性のあるものとされている。
 
 異文化衝突から、異文化交流への模索が描かれているが、一つのケースとして参考になる。

 妻の「カイゼン」思考と、夫の困惑と受容の間を揺れ動く微妙な感情を本書から読み取ることが、異文化を生きる者の間の交流のためのヒントとなるだろう。もちろん、「障害」の表われ方は、個人差がある。また、「障害」は改善されることがあっても、治ることはない。

 この本には、後書きで判明する大きな仕掛けがしてあった。

僕の妻はエイリアン―「高機能自閉症」との不思議な結婚生活 (新潮文庫)
泉 流星
新潮社

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