流れ来て氷を砕く氷かな (吉川五明)
春、大きな河の岸などに流水が流れ寄る。氷と氷が相打ち相砕けつつ、流れに乗ってまた遠ざかってゆく。その力強い光景はいよいよ春が到来したと告げる呼び声なのだ。(大岡信訳)
セントローレンス河に流氷が見られるようになった。氷と氷が相ぶつかる音が聴こえそうな句。
今週10日金曜日のジャンロンドーのコンサートに間に合わないかもと思っていた演奏プログラムCDが今日届いた。新発売ほやほや、特別前売り期間に注文しておいた。ケベックの音楽批評家で、「こいつ演奏家に恨みでもあるのかい」と思うほど厳しく残酷な批評で知られるChristophe HussがこのCDに最高5つ星を与え「偉大な音楽家の貴重なCD」との賛を寄せた。
ジャンロンドーの音楽観を聞きながら、芭蕉の素晴らしさについて書いた大岡信の解説とだぶった。二人に共通するのは開かれた精神というもの。
「つまり芭蕉は自分だけの世界を形づくって、俺は偉い俳人である、俺は偉い詩人であるといって超然としているというような人では毛頭なかった。むしろ絶えず、弟子たちに向かって今君は何をしているの、僕はこういう気持ちだよということを言っている、そこのところですばらしく高い世界ができたんですね。」
去年のコンサートでジャンロンドーが聴衆に「皆さんにとって音楽とは何ですか」と質問したことを思い出した。
私達凡人は自分の世界観すら形づくることなく終わる。でも素晴らしい芸術家たちのおかげで、時に苦い味であろうと人生は味わい深くなり、ちまちまであろうと生きる喜びが湧いてくる。
新発売CD曲の一番目をYou Tube Jean Rondeau Dynastieで聴けます。Dynastieとはバッハの家族のことで息子さんの曲もあります。
ジャンロンドー、髪の毛もお髭も伸び放題、野獣みたい。