牧師の読書日記 

読んだ本の感想を中心に書いています。

12月10日(火) 「インフェルノ 下」 ダン・ブラウン著

2013-12-10 08:54:50 | 日記
 
 一気に「インフェルノ 下」を読んでしまった。フィレンチェからヴェネツィアに場所を移して話が進んでいく。イタリア旅行の時にローマとフィレンチェ、アッシジに行ったのだが、ヴェネツィアには行かなかったので光景が浮かんでこない。

 天才的な科学者が「インフェルノ(地獄という意味がある)」と名づけられたウィルスによって人々から生殖機能を奪い、世界人口の三分の一を減らそうとする。これが進化論的思想に支えられている。それが人類が滅びず、進化していくためであると。それを食い止めるべき主人公ラングドンが謎を解きながら奔走する。

 聖書は「生めよ。ふえよ。地を満たせ。(創世記1:28)」と人類に勧めている。人類には十分な資源があると思う。しかし、それが平等に(平等といかないまでも最低限でも)世界に行き届かないことに問題がある。それは人間の罪による。すなわち自分さえよければよいという精神、または自分の国さえよければよいという精神である。少しは仕方がないと思うが、この世界は弱い者や貧しい者を切り捨てる精神に満ちている。それは進化論的思想による。日本も結局のところはそうである。

 しかし聖書のメッセージは違う。一人ひとりが神から創造されたかけがえのない大切なユニークな存在である。滅びてもいい人は一人もいないという精神で満ちている。何という違いか。

 あとダンテの「地獄篇」「煉獄篇」「天国篇」だが、これは非常にカトリック的である。文学的には優れているが、神学的には優れていない。聖書に地獄と天国のことは書かれているが、煉獄の記述はない。ダンテの『神曲』には人間は地獄へ行っても、煉獄での苦しみや修行を通って天国へ行けるという思想があるが、これはプロテスタントの思想ではない。人間は死んだ後、地獄か天国へ行き、そのままいる場所を永遠に変えることはできないし移動することもできないというのが聖書の思想である。