泉を聴く

徹底的に、個性にこだわります。銘々の個が、普遍に至ることを信じて。

逓(てい)―昨日・今日・明日―

2017-10-02 10:10:59 | 
今年二度目の仙台へ。
 駅からぶらぶら大学まで歩く。
 母校の東北大学は、開学110周年記念のホームカミングデーでした。
 付属図書館でお宝を披露していたので卒業以来でしょうか、図書館に入る。
 その土地はかつて青葉城の二の丸。掘ればいろんなものが出てくる。
 青葉城の後は、日本軍の第二師団司令部が置かれた。戦後はアメリカ軍に占領された。
 そんな激変の土地の上で勉強していたんですね。当時はまったく無知でしたが。
 で、ピストルとか薬瓶とか、お歯黒壺とか皿とか櫛とか。
 もう一つの宝は古文書。「史記」や「類聚国史(るいじゅこくし)」は国宝。土井晩翠宛てのアインシュタインの手紙や伊達政宗の文もあり興奮する。
 政宗は筆まめでもあったのですね。和歌にも通じていたようです。
 金銀泥で濃紺の和紙に書かれた仏教書(今回は「大智度論」)は、確か山寺でも見ましたが、何度見ても感動します。
 当たり前のことですが、書き損じなどないのです。一字一字、渾身の力で書いているのがよくわかる。
 やはり、基本は手書きだなと納得。
 次に、二の丸の下の三の丸跡にある仙台市博物館に行く。
 出迎えてくれたのが、写真の「逓」です。藤原吉志子作。
 面白かった。「逓」という字は中学校で習うらしいのですが知らなかった。
 たがいに、かわるがわる、次々に伝え、めぐる、という意味。
 郵便配達人が手紙をらせん状に上へ上へ届ける様。搭は扉付きの箱になっている。
 こうやって今、生きているんだと実感できた。
 博物館の中で印象に残ったのは二人の人物。
 一人は支倉常長。政宗の命を受け、太平洋を渡ってローマまで航海した人。
 常長は異国の地で洗礼を受ける。しかし母国では、江戸政府によってキリスト教が発禁されてしまう。
 帰国後、キリスト教禁止の嵐は強まるばかりで、常長は不遇のままどこで亡くなったのもわからない。
 支倉家から邪宗門(いやな言葉ですね。豊臣秀吉が作った)が出たということで、一家が断絶する。
 それでも異国から持ち帰って大事に保管され続けた宝は、今では国宝になり、仙台市博物館にある。
 ちなみに、私が一人暮らしをした場所は「支倉町」でした。そこは、島崎藤村が詩作を始めた地であり、北杜夫が住んでいた地でもあるとか。
 このお二人の作品は、まさにこれから読もうとしていました(「破戒」「楡家の人びと」)。
 もう一人は菊田伊州という仙台藩の絵師。絵を観てびっくり。
 仙台藩の絵師を菊田家が勤めていたとは。
 やはり、深い縁があるようです。だから何度でも行きたくなるのでしょう。

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