サッカー狂映画監督 中村和彦のブログ

電動車椅子サッカーのドキュメンタリー映画「蹴る」が6年半の撮影期間を経て完成。現在、全国で公開中。

勝つしかないでしょ、ブラインドサッカー日本代表!

2015年09月04日 | ブラインドサッカー

 ブラインドサッカー日本代表はイランと0-0で引き分け、自力でのリオパラリンピック出場権獲得の可能性が消滅した。
 なんだかあの時と似てきた。そう、フランスワールドカップアジア地区最終予選だ。ブラインドサッカー版ドーハの悲劇が4年前の宮城でのイラン戦だとすれば、今予選は自力突破の可能性がなくなりながらもワールドカップ初出場を決めたあのフランスワールドカップアジア地区最終予選。サッカーの神様がA代表と同じようにブラインドサッカー日本代表にも試練を与えたということなのだろうか?
 その後の歓喜をより大きなものとするために。

 例え話はともかく現実に話を戻すと、今後日本は韓国・インド・マレーシア戦に全勝し勝ち点を10に伸ばすことが最低条件となる。そしてイランが日本同様中国に敗れると勝ち点で日本に並ぶことになる。そうなれば得失点差で上回ったほうがパラリンピック出場権獲得である。そう考えるとインド、マレーシア相手への大量得点が求められる。ちなみにイランはマレーシアに5-0で勝っている。

具体的なスケジュールにそって考えると以下のような感じ。
4日(金)
17:30 イランvsインド がんばれインド! 負けるにしても0-1とか0-2くらいでなんとか踏ん張って!
19:30  韓国VS日本  日本の勝利あるのみ!
5日(土)
14:30      イランvs中国 中国勝てよ。引き分けもダメよ。
17:30    日本vsインド 日本の大量得点差勝利あるのみ!
6日(日)
17:30   韓国vsイラン この日ばかりは韓国を応援。引き分けでいいから頑張って。
    (もしイランが中国に勝利していた場合は)韓国お願いします。勝ってください。
     心の底から応援します。ホントです。
19:30 日本vsマレーシア 得失点差をにらみながらの勝負。消化試合となっていないことを祈る!

 つまり1試合たりとも楽な試合はないわけだ。
 
 
 イラン戦をごく簡単に振り返っておく。
 まず練習で注目していたのはイランのGKメイサム・ショジョイヤン。細身なんだけどとにかくでかい!しかし無駄な動きがなく足元にも強くゴールを奪うのはかなり難しそう。4年前のイランのGKはパワフル系でエネルギッシュな選手だった記憶があるが、なんだか全然違うタイプである。ブラインドサッカーは、晴眼者であるGKが勝敗に直結する要素がかなり大きい。
 
 日本の先発メンバーは、初戦の中国戦でスターティングメンバーだった黒田智成(クロ)に代わり加藤健二(カトケン)が入った。
 試合が始まり日本、イラン両チームを見てまず思ったのは、やはり中国は一つ格上だったのかなということ。それはともかく日本の守備力は4年前に比べると格段に進化し安定しているので、あまりイランにゴールを奪われそうな感じはない。最終ラインに立ちはだかるアキ(田中章仁)の守備は相変わらず素晴らしいし、体を張ったロベルト(佐々木ロベルト泉)の守備も心強い。ファーストディフェンダーとしてのリョウ(河村玲)の進化も目覚ましい。もちろん偶発的な一発は怖いのだが。
 そうなると日本がどうやってイランゴールをこじ開けるか?
 この試合で可能性を感じさせたのはトモのドリブルシュート、そしてコーナーキック(CK)である。前半終了間際の右CKではトモ、カトケン、ロベルトの3人があがる。屈強なロベルトが相手選手をガードし空けたスペースをトモが中央へドリブル、ゴール左隅に強烈なシュートを放つ! しかしイランGKショジョイヤンが弾き出す。実に惜しい場面だった。試合前の練習で難なく弾き出していたコース、スピードであったこともまた確かである。
 後半に入り日本は何度かシュートまでは持ち込むものの、GKショジョイヤンの牙城を崩すこととはできずスコアレスドローに終わった。

 アジアの2強との連戦、連勝できれば一番よかったのだろうが絶対に避けなければならなかったのが2連敗。一敗一分けはおそらく想定内だと思う。もちろん想定したなかでは最悪パターンではあると思うが。
 観る側からするともっと攻撃的にいく時間があってもいいのではないか、不満の残る2連戦でもあったかとは思う。今後は勝つしかない試合が続く。歓喜のゴールも何度か見れるだろう。いや何度かでは足りないはずだ、幾度ものゴールが必要だ。もっともっと・・。

 ところでイラン戦はサムライブルーと同日開催、しかも雨。前日の中国戦のように満員にはならなかったのは致したかたのないところだった。しかし前日満員で入れなかった人も応援にかけつけた。前日入れなかったろう者サッカー・フットサルの女子選手はブラインドサッカー初観戦だったそうだ。中途難聴で車いす利用者の知人は初めてサッカーを生で見たそうだ。初めて生観戦したサッカーがブラインドサッカーだったというわけだ。
 
 ブラインドサッカー協会のビジョンは、「ブラインドサッカーを通じて、視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会を実現すること」である。
 大会1日目、2日目と観客席では視覚障害者、各障害者サッカー関係者、サッカーバカ、たまたま興味を持った人、その他いろいろな人々が混ざり合い始めている。そういった貴重な空間になりつつある。
 その場に一度も来ないのはもったいなさ過ぎる。


パラリンピック出場権をかけたブラインドサッカーアジア選手権開幕!

2015年09月03日 | ブラインドサッカー

 リオ・パラリンピック出場権をかけたIBSAブラインドサッカーアジア選手権2015が開幕。大会には日本、中国、イラン、韓国、インド、マレーシアが参加、上位2か国がパラリンピック出場権を得る。ブラインドサッカー日本代表にとって、初戦の中国戦、第2戦のイラン戦をどう乗り切るかがポイント。必見の初戦中国戦に行って来た。

 中国に勝ち点3を渡したくない日本は、まずは守備から試合に入っていく。
 フィールドプレーヤーがコンパクトにダイヤモンド型に並び、相手ボールフォルダーの動きに合わせ等間隔でスライド。ドリブルするスペース、シュートコースを相手に与えない。
 
 日本の先発は、GK佐藤大介(ゴリ)、フィールドプレーヤーは最後尾が田中章仁(アキ)、中盤が佐々木ロベルト泉(ロべㇽト)、黒田智成(トモ)、トップが川村怜(リョウ)。攻撃の際はリョウが単独でドリブル、他の3人は自陣で守備に備える。チャンスがあればトモがカウンターから仕掛ける。
 少なくとも前半は0-0でOKという戦い方のように見えた。ランキングが日本より上、一度も勝ったことがない中国相手に予想された試合の入り方だった。
 一方の中国は、例えばワン・ヤーフォンがドリブルで持ち込み日本の選手を引きつけ、逆サイドでフリーのユー・ユータンにパスを送るなど日本のコンパクトな守備を逆手にとった戦術で日本陣内に攻め込む。当初はなかなか通らなかった中国のパスは徐々に通るようになり日本のゴールを脅かす。フリーの選手へパスが出ると日本の選手は全員が横にスライドしなくてはならない。また中国は交代で入ったワン・チョウビンが何度も切り返して日本をゆさぶり選手を疲れさせる。
 日本の選手たちは運動量が持つのか心配になったが、そこは魚住監督の想定内だったようで、前半の半ばでトモ、リョウに代わり、加藤健人(カトケン)、落合啓士(オッチー)が投入される。
 だが中国は徐々にシュートまで持ち込めるようになり、日本は再三GKゴリの好守に助けられる。この4年間で日本代表はかなり進化した印象だが、GKゴリの進化も目覚ましい!
 危ない場面はあったものの日本はなんとか中国の攻撃をしのぎ、0-0で前半を折り返した。日本にはチャンスらしいチャンスはなかった。

 ハーフタイムには観客全員が立ち上がり、ニッポンコールとバモニッポン! これはなかなか鳥肌ものだった。プレー中は声を出して応援できないため、試合の前後、ハーフタイム、ちょっとした合間に(声を出しての)応援は限られる。ちなみにチケットは完売、当日入れなかった方々もいたようだ。

 後半のメンバーは前半の先発と同じ、日本は前半と同じような戦い方でゲームに入っていったように見えた。0-0で最後までいけるのか?正直、日本にはゴールの気配は漂わない。しかし中国に点が入りそうな悪い予感はかなりあった。
 そして後半7分、中国のコーナーキック。中国は4人全員が上がり、ワン・ヤーフォンのゴールが決まりとうとう先制! 

 まだ時間はある、まずは落ち着こうということだろうか、日本はすぐには戦い方を変えない。
 しばらくたつと攻撃時にはリョウのみならず、トモも上がるようになる。しかし中国は無理に攻めあがらずボールキープを優先する戦い方にシフト。日本はなかなかボールが奪えない。時間は刻々と過ぎていく。日本ももっと明らかな攻撃モードに変えた方がいいのではないか、例えば世界選手権の時は、ロベルトが出場している時は守備的に戦う時だった。ロベルトに代えてカトケンを入れた方が良いのではないか?
しかし世界選手権でほぼフル出場(だったと思う)していたカトケンがこれだけ出ないということは、ケガなどの影響で万全のコンディションではないのだろうか。
 そしていよいよ残り7分半のところでロベルトに代わりカトケンが投入される。しかし日本は前がかりにはなるが、なかなか中国ゴールを脅かすほどのシュートまではもっていけない。また中国にボールがいったん渡るとなかなかボール奪取ができない。2回ほどゴールスローになる場面があったが、ボールがつながらずチャンスを作り出せない。
 そして試合終了の笛。日本は残念ながら勝ち点を得ることができなかった。

 正直、惜敗というよりしてやられたという感じの敗戦だった。
しかしグループリーグで2位に入ればパラリンピック出場権を得ることが出来る。今後の試合に全勝すればいいわけで、充分実現可能だ。
そうすれば最終日の決勝で中国相手に雪辱する機会を得ることもできる。

 今後対戦する相手は、ランキング的には日本より下のチームばかりだ。しかしイランはここ最近国際大会の場にあまり姿を現していなかったようで、そういった意味でランキングが下になっているのだろう。イランは4年前の予選でパラリンピック出場を目の前にしながら敗れた相手。その時は自力もイランの方が上のような印象だった。私も宮城まで観戦に行ったが、あの時の悔しさは忘れられない。
 しかし現在のイランの攻撃力と日本の守備力を比べると日本のほうが上だと思う。しかし日本は勝ち点3が絶対に必要だ。どうやって点を取るのか。トモが世界大会に続いてのゴールを見せてくれるだろうか。
 とにもかくにも今夜のイラン戦がパラリンピック予選の最大のヤマ場となる。今夜はサムライブルーより、ブラインドサッカー日本代表!
必ずや歴史的な一戦になるはずだ。


 会場に行くと目にとまるのは「サッカーなら、どんな障害も超えられる。」という文字。
 大会会場のサイドフェンスに書き込まれている。その下には各障がい者サッカー7団体と日本サッカー協会のエンブレム。障害はそれぞれの選手たちの障害という意味合いよりも、社会にある“障害”といった意味合いで使われているようだ。
 今年の4月より障がい者サッカー協議会が発足。障がい者サッカー7団体の横のつながりも広がってきている。実際観客席にも各障がい者サッカーの関係者、選手の姿が見受けられた。 各障がい者サッカーに関わってきた身としてはとても感慨深い。
 会場で配布されるパンフレットの裏表紙にも各障がい者サッカーの簡単な紹介と決意が書き込まれている。


(特に取材はしていませんので、あくまで観客席から観た私見です)