サッカー狂映画監督 中村和彦のブログ

電動車椅子サッカーのドキュメンタリー映画「蹴る」が6年半の撮影期間を経て完成。現在、全国で公開中。

韓国映画「トガニ」 

2012年08月21日 | 映画

トガニを観ました。
以前、韓国のろう学校で実際起きた性的虐待事件を元にした韓国映画です。
事件は2005年に明るみに出たそうです。

事件に興味を持った作家のコン・ジヨンさんが取材し小説にし、小説を読んだ主演男優のコン・ユが映画化したいと切望したそうです。
コン・ジヨンさんによると実際の事件は原作よりももっとひどかったようです。

詳しくはわかりませんが日本でも同様の事件が過去あったようですし、世界の各地でも、過去には似たような事件があったのではないかと思われます。

聴覚障害のみならず他の障害まで範囲を広げれば、世界各地で相当な数の痛ましい事件が起きたのではないでしょうか。
小説、映画の中では被害者の一人は、聴覚障害・知的障害を併せ持つ重複障害児でもあります。

小説化、映画化されたことで関連する法律が改正されるまでに至ったそうで、重いテーマながら、映画はかなり見やすい作りになっています。
劇的な構成というか感情移入しやすい作りというか。
お金を払って充分見る価値のある映画に仕上がっていますが、一方かなりの単純化も図られています。
悪人は悪人らしく描かれていて、一歩間違うと自らもそうなってしまうこともあるかもしれないといった心理的な恐怖としてはあまり描かれていません。
むしろそうなることは避けた方が良いと判断したことで、見やすい映画になっています。
描写は内面よりも社会の矛盾を描き出します。ですからある意味社会派エンターテインメント映画にもなっていますし、そこがヒットした理由でもあるのでしょう(主演俳優とともに)。

とてもいいシーンもありました。
法廷で被害者の子供の“聞こえ”のテストをやる場面。
聴覚障害者もいろいろであることを雄弁に語ったシーンです。
そして被告人をとある理由で指差す場面です。

また手話の撮り方もなかなかうまくやっている印象でした。
例えば顔も手も入るサイズではなくフレームの中に手が入ってくる、それでも意味はわかるように時には手にパンダウン(カメラを振り下ろすこと)したりするなど工夫していました。
子供達の手話は、手話を完璧にマスターして切り取るという方式ではなく、
必要な時のみ手話単語を出すというか、写っているところだけやらせている感じもありました。
ある意味、うまく撮っているということですね。

最初の方では無感動無表情という演出で、わざと表情をなくした手話として描いていたようです。
おそらく何も考えないで手だけで手話をやってくれというふうな演出だったのだと思います。聴者の子供がショッキングなことを体験すると無表情なしゃべり方になりますが、その応用でしょう。
実際のろう者の子供がこういった局面でどういう手話になるのかはわかりませんが。
ネイティブサイナーであれば、文法的な要素としての顔の動きはあるのではないかと思われますが??

後半では、ほぼ表情だけを見せるといった場面もありました。
手話表現の顔の部分だけを覚えさせて演出したのではないかと思われます。そのシーンは手は適当に動かしていればいいという演出だったのでしょう。

ところで韓国手話は、日本の手話との共通の手話単語がかなりありました。
ですから字幕を読まなくてもかなりわかる箇所もありました。

しかし何故、主人公は手話が出来るのでしょう?
理由は想像するに、手話ができる設定の方が撮るのも楽だし、主演俳優も格好良く見えるからでしょう。
手話学習者でもある私としてはとても気になる点でもありました。


その他にも映画を観て疑問点もあったので、原作を買って読んでみました。 
何が疑問かいくつか列挙すると、
A どこまで事実なのか?
  この点は脚色だろうという点が多々あった
B ろう学校の描写があまりにも単純化されている。
  生徒一人一人の聴覚障害の側面がよくわからないし、他の教師もあまり描かれていない。   
C 主演女優の設定
   あまりにも単純化した設定なのでおそらく、映画化するにあたっての改変?
D 主人公の設定
  小説で創作された人物を、映画化するにあたってさらに改変?

小説からの改変は、乱暴に言えば、説明がむずかしいものは極力単純化するかカット、主役が格好悪くみえる点はカットされている印象でした。
一つずつ見ていくと、
A 詳しくは書きませんが、映画を観た印象のままでした。
B 小説には、ろう者の教師も出てきて、解雇され抗議するという描写もあります。
  おそらく実際にも、ろう者の教師が何名かいたのだと思います。
  牧師としての校長など、キリスト教的な側面もかなり映画化されるにあたり簡略化されていました。
  また、生徒達の一人は中途失聴者でした。なるほど。
C 小説では、主人公の大学の先輩で運動(スポーツじゃありません)をやっていた女性でした。
  その後、結婚離婚し、子供を育てつつ人権活動をやっているといった設定です。
D 映画と違い妻は健在。映画より、かなり負の側面を持った人物として描かれています。
  大学卒業後、高校の臨時教師を1年だけ経験。その後卒業した教え子と性的関係を持ち、 
   彼女はその後自殺。
 彼はその後、他の仕事につくも失業し、妻の知人の斡旋で聾学校へくる。

C・Dは、労働運動をやっていたという作家コン・ジヨンさんの側面が、かなり反映している部分なのだと思われます。
そういった意味では、大幅に簡略化して映画としては正解だったのでしょう。

原作では手話が出来ない設定になっていました。
ですから当然、手話通訳者も登場します。
何も知らずに来た通釈者が、驚愕の事実に読み取り通訳不能になる場面などもあります。
しかし彼は、その後、能動的にその事件に関わっていく事になります。

確かに手話通訳を排除した方が映画としては楽ですが…。

「それでええんかい?」

なんだか、だらだらと書き連ねてしまいました。

こういった実際に起きた事件を元にした映画の場合、事件と映画がごちゃ混ぜに語られることが多いですが、(もちろんそれはそれでいいんですが)、切り離して語ることも必要かと思います。

また映画の感想をいつくか読んだのですが、こういった題材の映画が撮れる韓国の映画人に比べ日本の映画人は情けないといったような感想も複数見受けられました。
おそらく日本の映画人のなかでもやりたい人は多くいると思います。しかし資金がない、資金を出す人がいないという現状はあります。
要するに「暗い映画に客は入らない」という理屈ですね。
観る側の方も“感動”だけを追い求め過ぎなのではないかと思うこともあります。
ただ、そういった中でも知恵を絞って撮っている人たちもいるでしょう。
私も見習わなければなりません。
ちなみに「トガニ」は、主演俳優のコン・ユがやりたいということで成立した企画なのだと思います。

映画を観に行ったのは平日の昼間ですが、「立ち見です」と言われて驚きました。
さすがに立ち見はいやだったので、次の回にしましたが。
時間には余裕を持って映画館に行きましょう。 


この間もサッカー

2012年08月21日 | サッカー

オリンピック疲れで更新をさぼっている間に、日本代表のテストマッチがあり、Uー20女子ワールドカップが開幕、猶本の鮮やかなミドルシュートなどでメキシコに快勝。
ヤングなでしこはガンガンシュート打ってきて見ていてすがすがしい感じです。

そしてマンチェスターユナイテッドの初戦も間もなく(何時間後)キックオフ。
マンUにはなんと昨シーズンのプレミアリーグ得点王、ファン・ペルシが加入。
「サッカー選手で誰が好きですか?」と質問されて、その時の気分で変わることが多いのだが、「ファン・ペルシが好きなんです」と答えたこともあるくらい好きな選手でもあります。

しかし、そうなると香川はどう使われていくのであろうか?
ルーニーを含めた3人の共存はあるのか、ないのか? 
あるとすれば香川のポジションは?
興味はつきません。


Jリーグの試合をTVで見ていたら、大宮の東選手が金髪にしてました。
メダル持って帰って来れなかった代わりに金髪にしたのかなあ。
(すいません。適当なことを書いてるだけです)

ちなみに私はデフリンピックの撮影に行った際にド金髪にしました。
もちろん女子サッカーチームの金メダル祈願のためです。
映画「アイ・コンタクト」にも自分自身結構出演してるんですが、金髪ということもあり、あまり気付いてもらえません。


先日、本当に久しぶりにサッカーやりました。
走れない、ボールは足につかないで、一緒にプレーした人に申し訳なかったです。
絶好のシュートチャンスも外すし。
一応、最近は縄跳びをしたりなど体を動かすようにはしていたんですどね。

でも楽しかったです。サッカーは見るのもいいけど、やるのも楽しい。
またやりたいなあ。


U-20女子日本代表のテストマッチ

2012年08月14日 | サッカー

オリンピックが終わったと思ったら、Uー20女子ワールドカップが今週末開幕。
日本開催です。
今日(正確には昨日)は福島でカナダとのテストマッチ。

TV観戦していましたが、ちょんまげ隊長のツンさんがここにも出没。
いつも、ちょんまげに甲冑の格好をして応援している人です。
ロンドンでは男女サッカー会場のみならず女子バレーの3位決定戦にも応援にかけつけ、もう福島!
とんでもない行動力!

ツンさんは以前、映画「アイ・コンタクト」の上映会にも来てくれました。
もちろんその時は、チョンマゲ無しですけどね。

試合は2対2。終始ボールを支配していましたが、カウンターで追いつかれてしまいました。
でもまあ課題は早く出たほうがいいし。

大会初戦は19日(日)メキシコ戦。
なでしこジャパンに続き、ヤングなでしこが盛り上げてくれそうで楽しみです。


パラリンピックのサッカー

2012年08月13日 | CPサッカー

オリンピックもあとわずか。
今月末にはパラリンピックが開幕します。
パラリンピックのサッカー競技は脳性麻痺7人制サッカーとブラインドサッカー、いずれも男子のみです。

各日本代表チームは予選を戦いましたが、残念ながら出場件を得ることが出来ませんでした。
ブラインドサッカー日本代表の最終戦は、そのまま行けば出場決定!という段階までいきましたが、イランが出場権を得ました。
その試合は昨年12月に生観戦し、ブログでも紹介しました。

ご存知の方も多いとは思いますが、その後こんなことがおきました。
アフリカには1枠の出場権が与えられていたのですが、アフリカ選手権が開催されず代表国を決めることができませんでした。その代わりにトルコが出場することになりました。トルコも日本同様「次点」で出場権を逃した国です。
しかし何故、アフリカの代わりがヨーロッパだったのでしょう。本来なら、ヨーロッパ、パンアメリカ、アジアの次点の国々(トルコ、コロンビア、日本)のプレーオフで決めるのが筋ではないかと日本ブラインドサッカー協会は考え、国際視覚障害者スポーツ連盟(IBS)や国際パラリンピック委員会(IPC)に対し、問い合わせや抗議を行ってきました。
しかし、事態が好転することはなく開催も迫ってきていることから、日本ブラインドサッカー協会はスポーツ仲裁裁判所(CAS)への申し立てを実施、6月25日にCASに受理されました。

現時点ではまだ結論が出ていないようですが、パラリンピックに出場する可能性もあることから、11(土)~12(日)の2日間、日本代表の合宿が行なわれました。
私自身は他の用件があったために合宿に顔を出すことはできなかったのですが。

詳しくは、日本ブラインドサッカー協会のHPを参照してください。
http://www.b-soccer.jp/4102/news/%e3%80%90%e3%83%a1%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a2%e3%83%aa%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%82%b9%e3%80%91%e3%83%ad%e3%83%b3%e3%83%89%e3%83%b3%e3%83%91%e3%83%a9%e3%83%aa%e3%83%b3%e3%83%94%e3%83%83%e3%82%af%e5%87%ba.html

過去、日本からスポーツ仲裁裁判所(CAS)に申し立てをしたのは、水泳選手だった千葉すずさんと当時川崎フロンターレ所属の我那覇和樹選手の2人。
我那覇選手はドーピングの冤罪を晴らすためにCASに申し立て、ドーピングとは何の関係もなかったことが立証されました。
ドーピング冤罪を晴らした我那覇選手の一連の流れは、木村元彦さんの著書「争うは本意ならねど」(集英社インターナショナル)に詳しく書かれています。
サッカーに興味にある方は、絶対に知っておかなくてはならない事件です。


いずれにせよ、大会も迫っていますし、近日中に何らかの結論が出るのではないかと思われます。
注視していきたいと思ってます。


関塚ジャパンの最終戦

2012年08月11日 | サッカー

韓国に敗れたという結果は仕方がないとしても、「もう少しやりようがあったのではないか」という思いはぬぐいきれない。
先発メンバーの人選、交代後の意思統一の不徹底(に見えた)。
うーん。

五輪の戦いで得たものをブラジルワールドカップへとつなげてほしい。

来週15日はサムライブルーのテストマッチ。
酒井高徳にも出場機会を!