サッカー狂映画監督 中村和彦のブログ

電動車椅子サッカーのドキュメンタリー映画「蹴る」が6年半の撮影期間を経て完成。現在、全国で公開中。

なでしこ銀メダル そして女子サッカーは続く

2012年08月10日 | サッカー

決定機は日本の方が多かった。

早い時間帯にモーガンの折り返しをボランチのロイドが頭で押し込む。
1点を先制された日本は、左サイドの川澄が何度も左サイドの深い位置に侵入しチャンスを作る。
しかしアメリカも必死に守る。
川澄のシュートはセンターバックに跳ね返され、川澄のクロスからの大儀見のヘディングシュートはソロの好守とクロスバーに阻まれる。
ペナルティエリア内のハンドを見逃される不運もあった。
大野が粘って宮間が飛び込んで放ったシュートはクロスバー。

後半、ロイドの見事なミドルシュートを決められ2対0とリードを広げられ、疲れの見える阪口にかえ代え田中明日菜が投入される。
以後、澤の攻め上がりも目立つようになる。
そして後半18分、宮間からのスルーパスに大野、大野が折り返し、走り込んできた澤へ、澤のシュートは一度は弾かれるが、澤がさらに粘って大儀見へ魂のパス、大儀見がきっちり決め1点差に迫る。
アメリカは準決勝での延長戦の疲れが出てくる。ワンバックはもうふらふらだ。
しかし日本を相手に懸命に守る。
日本は左サイドバックの鮫島を下げ、FWの岩渕を投入。何がなんでも点を奪いに行く。
その岩渕がボールを奪取し、GKソロと1対1に。
しかし、ソロがきっちりニアのシュートコースを消しファーに誘ったかのような絶妙なポジショニングで、素晴らしいセーブ弾き出す。
終了間際には大野に代え、丸山が入る。
とにかく1点。
同点に追いつき、延長に入れば動けている日本が勝つ。そう思えた。
しかし…。


宮間が号泣していた。
 「サッカーは喜怒哀楽が全て詰まった人生そのもの」
金メダルをとれなかった悔しさ、キャプテンとしての責任感、そしてワールドカップの時ほどは輝けなかった自分に対する悔しさもあったのだろう。
人間らしくありたい宮間は泣いた。

なでしこジャパンは決勝で素晴らしいサッカーを見せてくれた。
スタッフの緻密なコンディショニングの成果でもあるだろうし、控え選手の支えもあったからだろう。バックアップメンバーの上尾野辺めぐみ、有吉佐織、大滝麻未、山根恵理菜の献身もあったであろう。

福元は声を出し続け、好守を連発した。
近賀は全試合フルタイム出場を果たし、上下動を繰り返した。
岩清水は進化した“読み”でディフェンスラインを落ち着かせた。
熊谷も体を張り続けた。
鮫島は慣れない川澄との左サイドのコンビでなかなか持ち味を発揮できないこともあったが、決勝後半気迫のこもった上がりを見せてくれた。
阪口は澤が不調の間も中盤の底を支え続けた。きっとさらに進化していってくれることだろう。
そうしてくれないと困る選手でもある。
そして澤は最後はきちんと合わせてきてくれた。体調不良の時期があったことを忘れそうになるくらいだった。
川澄は守備に攻撃にと走り回った。決勝では再三左サイドをえぐってくれた。
宮間も慣れない右サイドでのやりにくさもあったと思う。ひょっとしたらどこかを痛めていた可能性もあるのかもしれない。しかし新キャプテンとして充分チームを引っ張ってくれた。
大野は前線でチャンスを作り続けてくれた。決勝でも走りきった。
大儀見のこの1年の進化は素晴らしかった。そしてさらにスケールの大きいフォワードへと進化していってくれるだろう。
 
田中明日菜は、悔しさとともにある種の達成感も得たはずだ。ポスト澤としてもさらに進化していってほしい。
丸山は目に見える結果は出すことはできなかったが、南アフリカ戦での慣れないポストプレーも献身的にこなした。決勝で交代出場した瞬間、ワールドカップのドイツ戦での決勝ゴールが頭をよぎった方も多いはずだ。そういう期待を抱かせる選手だった。
安藤には何とかゴールを決めてほしかったが、地味な役回りをこなしてくれた。
矢野は南アフリカ戦で存在感を見せつけ、チームを支え続けてくれたようだ。
チームメイトを和ませピッチに送り出す、そんなこともあったようだ。
海堀は悔しい思いをしただろう。しかし今後、福元にあって自分にないものを貪欲に吸収しスケールアップしていってくれることだろう。
高瀬や岩渕にとって、悔しさしか残らない大会となったのかもしれない。しかし悔しさを晴らす場所はこれからいくらでもある。
 そして怪我で代表メンバーに選ばれなかった宇津木瑠美、あなたなくしてリオデジェネイロの金メダルはありえません。

今大会、もっとも悔しい思いをしたチームはおそらくフランスだろう。
内容的にはすばらしいパスサッカーを展開、日本を追い詰め、3位決定戦では怒涛の攻撃でカナダゴールに迫った。
しかし結果は4位。
日本が北京五輪の4位の悔しさが、ワールドカップの世界一、ロンドンでの銀メダルとつながったように、フランスはどんどん強くなるだろう。
次回ワールドカップ開催地のカナダの躍進も目覚しい。
ブラジルだってそろそろディフェンスを強化してくるだろう。
ドイツも戻ってくるし、アメリカだって歩みを止めないだろう。
世界の女子サッカーはさらなる進化を見せそうだ。
火をつけたのはニッポンだ。なでしこジャパンだ。
カナダワールドカップの世界一、そしてリオデジャネイロオリンピックの金メダルはこれまで以上に大変な道のりになるだろう。
その道のりをこれからも見続けたい。
だって、こんな面白いもの、なかなかないんだから。
でも中2日で6試合という、狂気じみた日程はなんとかならないものだろうか。


さあ次はUー23日本代表の出番だ。
客観的に見れば、地力、コンディションともに韓国の方が勝っているだろう。
だがおそらく、メキシコ戦の敗戦から選手達がさらに覚醒していることだと思う。
五輪予選でシリアに敗れた後、選手間でも徹底的に話し合いマレーシア戦での快勝につなげた。そういったことも経験している選手達だ。しかも吉田麻也だっている。
たった2日間しかないけれど、きっと立て直してきてくれるだろう。
どういった先発メンバーでくるのか、関塚監督の采配も楽しみだ。

正直、男子がここまでくるとは思っていなかった。
グループリーグを2位抜けして準々決勝でブラジルといい内容の試合をしてくれるば良いと思っていた。
ここまできただけでも賞賛に値するが、メダルを取る、取れるチャンスはそう簡単にめぐってくるものではない(わかりませんが)。
とにかくUー23日本代表の最後の試合、悔いのない戦いをしてほしい。
そして見ている人にも納得のいく試合をしてほしい。

悔しさだけを持ち帰るのではなく、銅メダルと悔しさの両方を持ち帰ってきてほしい。