収穫祭という文字をよく目にするようになった。収穫の秋で、野菜も果物も味わいが深くなり、食卓がにぎやかだ。
この収穫祭と言う言葉に少し苦い思い出がある。もう15年も前の、ニューヨークの個展。!0回以上続けた海外個展のなかで、ただ一つ、後味の悪い個展だった。振り
返ってみると、周囲でなく、私自身の気持ちの迷いが原因だったと思う。ヨーロッパと、ニューヨーク、どちらで個展をし続けたいのか、揺れ動いていた。そこしかない
という切実感無かったと思う。いろいろな理由はあったけれど、オープニングに行かなかった。国内でも、個展をしていて、そちらを優先した形にしたけれど、そこに、
是が非でもニューヨークのギャラリーのオープニングに出るという、確固たる決意が欠けていたのだろう。
オープニングを放棄した作家ということで、反感を買い、個展最終に行ったニューヨークでは、オーナーに会うことはできなかった。宿泊していた大きな教会で、リスと
遊び(目だけで)、教会での収穫感謝祭の行事に参列させてもらい、異国の温かい人間愛にふれ、救われた思いだった。ほとんど誰も知らないニューヨーク、誰にも必要
とされない10日間を、日本から持っていった『中村天風』の本を繰り返し読んで過ごした。活字が頭の中をぼおっと通り過ぎていくばかりだった。
自分が何をしたいのか、を決められなかった日々、今は、あの頃に比べると、その答えが明確になっている。その分、年はとったけれど、気力というプレゼントがある。
あのニューヨーク行き、行きの飛行機に乗り遅れるという、ハプニングまであり、けっこう辛い思い出かもしれない。
BLUE IN BLUE '99-10(海) 38.0×45.5cm アクリル キャンバス 1999