失われていくこと

鏡をながめてため息ばかりつくのは
あなたが愛したはずのわたしを映し出せないでいるから・・
わたしにとってはいつもと違う自分を演出して
あなたに飽きられないように　本物の自分を隠し通していたあの頃
あの人はいつも　何も言わずに包み込んでくれた
「いつまでも変わらないきみでいて」と言ってくれた
「もし、わたしがホントは悪女だったりして」
そう言ったことがあった
「悪女か」と微笑みながら「じゃあ、ぼくが悪魔だったりして」と言った
「いろいろさ、試して生きる事も楽しもうね」と続けた
あの人の言う変わらない事という言葉の意味を知りたくて
「変わらないって難しいね」とわたしが聞くと
「変わっていくものに気を留めないで　変わらないものを見つめればいいんだよ」と言った
鏡を見つめて　ため息ばかりつくのは
変わらないと決めたじぶんの姿が　映せなくなっていたから・・・

テーブルの上で持たないはずの　携帯が震えながら鳴いていた