1日1日感動したことを書きたい

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「ソロスは警告する」(ジョージ・ソロス)

2009-01-17 17:13:32 | 
 「ソロスは警告する」(ジョージ・ソロス)を読みました。著者のソロスは、伝説の投資家と言われているあのソロスです。この本の原題は、「The New Paradigm for Financial Markets」と言います。「新しいパラダイム(The New Paradigm)」というのは、ソロスが長年あたためてきた「再帰性」という考え方です。この本の半分が、「再帰性」の解説です。
 再帰性というのは、私たちと私たちを取り巻く世界が、相互に影響しあいながらたがいに変化していくという考え方です。私たちが世界を理解しようとし(認知機能)、その理解をもとに世界に働きかけたとたんに(操作機能)、私たちが理解したと思った世界は変化している。したがって私たち人間は、世界を「完全」に理解することができないというのが、ソロスの考えです。

「私は思考と現実との間には双方向のつながりがあり、そのつながりが同時に作用すると、参加者の思考には不確実性が、そして現実の出来事には不確定性が、生じるという話をしてきた。この両方向のつながりを私は『再帰性』と名付けた。」

 この考え方に立ってソロスは、経済を独立自存のものとして扱う「均衡理論」(需要と供給の均衡点に向かって価格は収れんする)と、「市場原理主義」(すべてを市場にゆだねよ)を否定します。

「私の理論が、『金融市場は均衡点に向かって収斂する』という考え方、いわゆる均衡理論と真っ向から対立するからである。均衡理論が正しければ、金融市場に『再帰性』が存在しないことになる。逆に『再帰性』の理論が正しいのであれば、均衡理論は無価値であり、金融市場の動きは一定の法則にしたがうのではなしに、予測不能な"歴史的過程”として解釈される必要があることになる。」

 この本の後半部分は、再帰性に基づくソロスの現状分析です。ソロスは、現在の状況を「信用膨張のあくなき肥大化と、行きすぎた市場原理主義とによって、サブプライム・バブルをはるかにしのぐ規模にまで成長した『超バブル』が弾け、」「ドル国際基軸通貨とした信用膨張の時代が終わりを迎えようとしていると分析しています。この本は、2008年の3月に原稿が書かれたそうですが、アメリカの政策担当者は、この時期、サブプライム問題について、もっと楽観的な見方をしていたように思います。ソロスは鋭かったと思うのですが、そのソロスさえも中国やインドの経済について、とても楽観的な見方をしています。この一年、ソロスの予測さえをも超えて、世界同時不況は深化しているのでしょうね。

 西洋近代の「主体ー客体」の二元論を否定するソロスの「再帰性」については、日本の広松渉が「世界の共同主観的存在構造」や「事的世界観への前哨」で、もっともっと先まで行きついていると思いました。ソロスに広松渉を紹介したくなりました。


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