日本戦略研究所

日本再興の砦

東京裁判、許せない朝日新聞の世論誤導

2005-06-18 14:42:50 | Weblog
渡部昇一先生の朝日新聞批判。
朝日新聞は「日本の不利になり、コリアやチャイナに有利なことならウソでも書くという方針で世論を誤導しようとしている」
そして、中国共産党政府についても、日本の左翼すなわち朝日新聞に振り回されているピエロであると断じている。


 「諸判決」と訳すべき平和条約11条  許せない朝日新聞の世論誤導 上智大学名誉教授 渡部昇一  【産経新聞正論2005/06/18】
 《有罪にしたいが為の誤訳》

 ロッキード裁判では英語の訳し方について鑑定証人として出たことがある。法廷というところは証拠文書を厳密に扱うところだと思っていたのであるが、あきれ返るほど杜撰(ずさん)なのに驚いた。

 たとえば「小佐野被告がコーチャン証人と出会ったのが、ある日のmiddayであった」というコーチャン証言の中で、検察側はこのmiddayを「日中」と訳した。裁判官は「日中」という単語を日本語の辞典で確かめた。そこには「日のある間」という解釈があった。それで午前七時ごろから夕方六時ごろまでなら「日中」すなわちmiddayであるとした。小佐野被告の到着する飛行機の時間は時刻表では昼の十二時、つまりmid-dayであった。しかし、その日は飛行機が遅れて午後四時ごろ着いた。コーチャンの証言は時刻表に基づくものでウソ、少なくとも誤りであった。

 しかし、日本の裁判官は、middayを「日中」と訳した検察側の誤訳の、そのまた日本語の辞典の説明に基づき、「午後四時ごろでもmiddayである」としたのである。もちろんmiddayは「正午」の意味で、逆立ちしても午後四時ごろは含まれない。「昼の十二時ごろの十五分前か十五分後」とも言っているのに、裁判官の目はこれを無視した。強引に被告を有罪にしたかったからとしか思えない。

 ところで今、大きな話題になっているのはサンフランシスコ平和条約第一一条の「戦争裁判の受諾」という部分である。英語ではaccepts the judgmentsとなっている。このjudgmentsは「裁判」と訳してよいのか、「判決」ではないのか、という議論である。


 《正当な手続きだった釈放》

 もちろんjudgmentsを「裁判」と訳したのは悪訳、否、誤訳と言ってもいい。しかし、厳密に言えば「判決」でもない。複数になっているから「諸判決」とすべきである。諸判決とは絞首刑・東条英機他六名、終身禁固刑・賀屋興宣他十五名、禁固7年・重光葵などといった極めて具体的な個々のものである。日本が受諾したのは、この諸判決であり、さらにこの第一一条には平たく言えば次のような内容のことを付け加えられている。

 「日本はこの禁固刑に処せられたものを勝手に赦免、減刑、仮出獄させてはならない。ただしこの判決に関係ある一または二以上の国の決定や日本の勧告があればよい」

 日本が独立回復したころの日本の政府や日本の議会は、この条文を正しく解釈していた。したがってA級戦犯といわれた人々も、正当な国際的、国内的手続きを経て釈放されたのである。

 かくして終身禁固刑を宣告された賀屋興宣氏は第三次池田内閣の法相になり、禁固7年を宣告された重光葵氏は、出所後は改進党総裁、鳩山内閣では副総理・外相となり、日本が国連に加盟を承認された第11回国連総会には日本代表として出席しているのだ。死刑になった人々がもし終身刑であったら出所して活躍できたであろうが、殺されてしまったので生き返らすわけにいかなかった。

 サンフランシスコ平和条約第一一条の諸判決を受けた人たちは、このように国際舞台にすら復帰しているのである。そして日本を裁いた国から諸判決を受けた人たちの釈放や活躍に、いっさい異議が出されなかった。

 ということは、東京裁判の関係諸国も当時の日本政府や、今の私と同じ解釈を第一一条について持っていたことを、明々白々に、しかも動かしがたく立証している。日本と戦った蒋介石政権もそういう解釈をしていたのである。

 日本と正式の交戦相手でもなく、しかも平和条約締結にも参加しなかった中国共産党政権が今ごろ何を言っているのか。頭がおかしいのじゃないか、とさえ言いたくなる。


 《許せない朝日の世論誤導》

 しかし今の北京政府は、日本の左翼に振り回されているピエロなのだ。いつごろからか、日本の左翼は第一一条のjudgmentsを「裁判」と誤訳したのを、そこだけ悪用して、「日本は東京裁判を受諾したのだ」と宣伝した。朝日新聞はそれを徹底的に利用して日本人を脅迫している。「日本は東京裁判を受諾したのに、それに逆(そむ)くつもりか」

 朝日新聞の論説を書く人が第一一条を読んでいないとは思われない。日本の不利になり、コリアやチャイナに有利なことならウソでも書くという方針で世論を誤導しようとしているとしか思えない。

 つまりはmiddayを午後四時まで引き延ばしたロッキード裁判の判事のごときものなのだ。(わたなべ しょういち)