、ことはできるか。もちろんできる。物理に詳しくない人はそんな馬鹿なと思う人もおられるかもしれない。
答えはいわゆるカルノーのサイクルと言われるもので実現している。物理の教師を長年してきたが、大学を定年退職する前の数年になって5年間ほどようやく熱力学を教えることとなった。
そのときにカルノーのサイクルを教えたのだが、どうもそのへんのことがわかっていたのかどうもあやふやである。1979年には朝永信一郎先生の『物理学とは何だろうか』(岩波新書)上が出版されてそれに「熱を温度差を利用しないで高温の熱源から低温の冷却器に移動させる」ことについて書いてあったのだが、どうもはっきりと認識をしていたとは言えない。
最近、熱力学のテクストを読む機会があり、また、戸田盛和『エントロピーのめがね』(岩波書店)を読んだりしていて、上に述べた『物理学とは何だろうか』を読んでみてようやく認識をした。カルノーのサイクルではピストンを準静的に動かすということで力学的な可逆過程を実現しており、また高温の熱源から低温の冷却器への熱の移動をその熱源と冷却器の温度差を使わないで行っているということが。
これで熱の移動にかんしても可逆過程となるように配慮をしていることがわかった。熱は高温の熱源から低温の冷却器にその温度差を利用して移動させるとこれはもちろん不可逆過程であり、カルノーサイクルが可逆機関であるという前提がくずれるが、このことをうまく回避している(注)。
村上雅人さんの『熱力学』(海鳴社)では、だからカルノーのサイクルをほとんど本の末尾にとりあげるという工夫をしている。
(注)等温過程で熱源から熱量Qをもらい、それを断熱課程で気体の体積を準静的に膨張させることで、力学的な仕事に変える。そしてその気体の温度を冷却器の温度と等しくなると力学的な仕事にならなかった熱Q'を冷却器に移動させる。このときまた準静的に気体の体積は圧縮される。このとき外界から気体に仕事がされる。
こういう風にして。確かに高温の熱源から低温の冷却器へその温度差を利用しないで、Q-Q'だけの熱を移動させることができる。しかし、サイクルにするために、さらに冷却器との接触を断って、断熱的にもとの気体の体積まで断熱圧縮する。ここまでくれば、このあとはサイクルをくりかえせばよい。








